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「愛してる、そばにいて」
第2章 罪③

愛してる、そばにいて0106

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 「牧野っ?!」
 逃げようと司の手を振り払ったつくしの肩を、司が掴んだのは条件反射だった。
 しかし行動を制限されてしまったことで、つくしの恐怖が増長する。
 …助けて、助けて、助けてっ!
 とっさにつくしを拘束したももの、すぐには状況を把握できていなかった司も、つくしの意図をすぐに悟って叫ぼうとする口を手で塞ぐ。
 「助…っ、ふぐっ!?」
 上げかけた悲鳴がくぐもって、喉の奥に篭った。
 「ん―――ッ!んん―――ッ!!」
 抵抗する体を羽交い締め引きずりながら、近づいて来る一行とは真逆の方向へと足早に立ち去る。
 角を曲がってすぐに、暴れるつくしの耳元で司が恫喝した。
 「静かにしろっ」
 「ぅ―――ッ」
 強められた手の力に、つくしの息が詰まった。
 「…ここが今の司の私室ですか」
 「はい。ですが、邸内にはいらっしゃるようですが、どちらにいらっしゃるのかは…」
 …ああ。
 すぐ間近に助け手がいるというのに、手が届かない。
 その助け手に自分の存在を知らせるすべがなかった。
 「間一髪だな」
 つくしにとっては、蜘蛛の糸に等しくても、唯一の希望が失われようとしている瞬間だった。
 「…っ」 
 自分の口を押さえる大きな手を引き剥がそうと、つくしが爪を立てる。
 死に物狂いで抵抗し続けるつくしを見る司の顔が自嘲に歪んだ。
 「…っ!!………っ!!ぅっ」
 「ふっ…なるほどな。イヤに従順にしてると思ったら、お前、これを狙ってたってわけだ」
 母親の目を慮ってだろう。
 囁くような小さな声だというのに、つくしを萎縮させるだけの陰惨さを含んだ声音。
 一時、司への恐怖を忘れ、楓へと気持ちが集中していたつくしの沸騰していた頭を一気に冷えさせた。
 「ババアに助けてくれってか?」
 「…………」
 その声音の冷酷さに、ガタガタと体が揺れ始める。
 「ババアのことだ。お前のことも、金で片つけて俺からお前を引き剥がそうとするだろうな」
 つくしの目論見そのもの。
 金などどうでもいい。
 ただこの男から逃れられるなら。
 「そうはさせるかよ」
 …な、なにするつもり?

 再び引きずられて、近場の…それでも一行からは十二分に離れた部屋へと引きずり込まれる。
 …やだ、やだ、やだあああっ!!
 「んんんっ!!!んんっ―――ッ!!!」
 司の手を引き剥がそうとする代わりに、とっさに振り回した手が触れたドアノブにしがみつく。
 それでも司が無理矢理にドアノブから引き剥がそうとするが、つくしも死に物狂いだ。
 部屋になど連れ込まれたら、何をされるかわからない。
 所在が知れているつくしや司の私室などとは違うのだ。
 何十、何百あるかわからない道明寺邸内の膨大な部屋の一つになど、一日に一度の清掃のおりくらいにしか人は訪れない。
 ましてや鍵を閉められてしまえば、ここに人がいることさえ、おそらく誰も気がつきもしないだろう。
 いや、そもそも助けを求めたところで、誰が助けてくれるというのか。
 唯一その可能性がある人物ーーーそれが、いますぐそこにいる司の母親なのだ。
 「手を離せ。怪我をする」
 口を抑えられたまま、懸命に首を横に振って、なおいっそうドアノブにしがみついた手に力を込める。
 引っ張られる力としがみつく力に、ギシギシと腕が軋んで痛んだ。
 …腕が折れたっていい。
 …手が砕けてしまったってかまわない。
 この男にいいように甚振られるくらいなら、手足の一本や二本、引き千切られるくらいどうってこなかった。
 「殺すぞ」
 「…っ」
 あまりにショッキングな言葉に、一瞬、彼が何を言っているのか理解できない。
 「お前の犬、ブチ殺すぞ」
 つくしの目が衝撃に見開かれる。
 ドアノブにしがみつくのも忘れて、呆然と司の顔を見上げる。
 皮肉に笑んだその顔は、残酷さも顕につくしを睥睨していた。
 あれほど力を込めて抵抗しても引き剥がせなかった手の力が緩んで、つくしの口が解放される。
 「いいぜ、叫べよ。ババアに助けを求めたければ、求めればいい」
 けれど、つくしはその場から一歩も動くことができなかった。
 いますぐにでも叫び声をあげて、彼から逃げてしまいたいのに、それができないのだ。
 それどころか、司の顔から視線を外せないでいた。
 獰猛な猛獣は視線を外した瞬間に、襲いかかってくるという。
 今、まさに、彼が放射する怒りは、今にもつくしに襲い掛かり引き裂かんしているかのようだ。
 「けど、お前の犬は死ぬ事になるかもな」
 ハッキリとした恫喝。
 思えばこれまでの司は、暗黙の了解だったにせよ、口に出してはつくしを脅迫したことがなかったことに、いまさらながらに気が付いた。
 ただ逆らえばひどいことをされる。
 あるいは家族や友人たちに被害が及ぶことになるだろうという、つくしの推測に過ぎなかった。
 それなのに、今、司が口にしたのは。
 「警備犬どものいる柵にでも放り込んでやれば一発だ。それでもいいなら、叫べ。俺から逃げてみろよ」 
 「あ、あんた、それ…本気でっ」
 司の顔が一瞬陰ってつくしから視線を反らせたが、次の瞬間に悪ズレた笑みを浮かべ肩を竦めた。
 「さあな、どうとでもとればいい。お前の好きにしろよ。まあ、今たとえ俺から逃げて、ババアに縋り付いたにせよ、俺がそうしたいって思えば、誰にも邪魔させたりしねぇし、お前を諦めたりしねぇ。それでも試してみたいなら、試してみろよ」
 「…………」
 震えるつくしをそのままに、司が背を向け部屋の奥へと歩き出す。
 …逃げられる。今、走って戻れば。
 そこには司の母親がまだいるはずなのだ。
 そう思う裏側で、司から受けた脅迫に体が動かない。
 『シャッツ』などという洋服みたいな変な名前を、思いつきで適当につけるくらいなのだ。
 司にとっての、あの小さな雑種犬の価値など、まさに彼が今身につけているシャツほどの価値もないのだろう。
 …シャッツが殺されちゃう。
 逃げることも…司を追うこともできずに、ただ呆然とその場に立ち尽くすつくしへと、寝室に消える直前、司がただ一度だけ振り返って命じる。
 「来いよ」




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