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「愛してる、そばにいて」
第2章 罪②

愛してる、そばにいて0105

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 …なんで、あんたなんかを。
 そう思うのに、そう突っぱねれられないのは、きっと司が怖いからなのだ。
 けっして彼が言うように、司が好きだからなんかじゃないのはわかりきったことだった。
 そして、自分のことを好きだと言えと強要してくる司も、きっとわかっていただろう。
 それなのに…その司の顔があまりに真摯で、『お前が欲しいんだ』と一途に彼女を見つめていたから、だからつくしは戸惑ってしまっただけなのに違いなかった。
 「あたしは…」
 「………」
 「あたしは…」
 …あたしはなにを言おうとしているのだろう。
 あんたが大っ嫌い?
 それともたとえ一時しのぎでも、この窮地を逃れるためだけに、この男が好きだと、そう言おうとしているのだろうか。
 「あたしは、あんたのこと――」
 トントン。 
 つくしの言葉の間を縫って、廊下のドアが叩かれる。
 「………」
 「無視しろ。俺のこと、の後を続けろよ」
 だが、司の命令を遂行することがかなわない事態が、すぐにもたらされた。
 『お取り込み中のところを申し訳ございません』
 それはつくし付きの小川や坂城らのメイドではなく、邸の統括を任されている家令の使いである執事の声だった。
 …お取り込み中って。
 些細なことだが、執事の言葉尻で、自分たちの言い争いが外にまで洩れていたことに、つくしはあらためて気がつかされた。
 普段、この執事が使いで直接訪れることなど滅多にない。
 メイドごときでは司を御することができなかったから、重要な役割や伝達を携えている場合がほとんどだった。
 だが、司はつくしを優先して、執事を遠ざける。
 「お前の言うとおり取り込み中だ。後にしろ」
 『それが…実は、奥様が先ほど到着されまして』
 「ババアが?」
 つくしが息を飲む。
 『今、こちらへ向かわれていらっしゃいます』
 「こちら…って、まさか、ここにかよ」
 『はい、司様にお話したいことがおありになるそうですから、自室で待機なさるようにと』
 司がその言葉に舌打ちをする。
 「チッ、さんざんネグってやったから、痺れを切らして自らお出ましかよ」
 「…………」
 …道明寺の母親が、もうすぐここに来る。
 にわかに沸き起こった、恐ろしい程の期待と不安。
 まるでジェットコースターのように目まぐるしく急展開している現在の状況に、つくしはまだやや混乱気味だった。
 「今、こいつに会わせるのも厄介だよな」
 呟く言葉に、つくしもハッとするが、無造作に手首を掴まれ、今度は室外へと連れ出される。
 …まさか。
 部屋を出ると執事の他にも数人の見知ったメイドたちの顔があって、その中には当然、坂城の姿もあった。
 司の前では従順に頭を垂れ、つくしへの反感は息を潜めている。
 「お前ら、わかってると思ってっけどよ。こいつのことでよけいなこと、ババアに言うんじゃねぇぞ」
 「……は」
 一応は司の言うままに頷く執事だったが、おそらくその内心では忸怩たるものがあるだろう。
 だが、意外なことに意外なところから抗議の声があがる。
 「でも…」
 坂城だった。
 つくしのことはあからさまに冷遇してきた坂城だったが、その反感をあからさまに司に悟られるマネはしてこなかったというのに、司の母親が帰宅しているという心強さからか、その目につくしへのあきらかな反感を宿していた。
 「奥様は、その方の…牧野様のご存在をお許しにならないと思います」
 「…何言ってんだよ、てめぇ」
 司の威圧にたじろいで坂城が顔色を青ざめさせ、もうそれだけで何も口答えができない。
 「ふざけんなっ。ババアがどうだって、俺には関係ねぇんだよ。お前らの雇い主はたしかにババアかもしれねぇけどよ。普段この屋敷にいるのは、誰だ?ババアじゃなくって、この俺だろ。お前らわかってんだろうな?妙な忠義心に駆られて、よけいなこと口走んじゃねぇぞ」 
 その言葉の中には恫喝が含まれている。
 「もちろん、承知しております」
 さすがに執事の方は、内心何を思っているにしろ、如才なく振舞っている。
 だが、つくしにしてみれば、ありがたくない話なのは当然だ。
 …どうしよう、坂城さん、あたしのこと、道明寺のお母さんに話してくれたりしないよね?
 敵の敵は味方、ではないが、むしろつくしに反感を持っていて、この屋敷から追い出したいと思っているだろう坂城は、ある意味つくしの味方のようなものだった。
 しかし、司の威圧に萎縮しているくらいだ。
 とてもじゃないが、その意に逆らってまで告げ口できようはずもない。
 となれば、執事や家令が頼りの綱ではあるが、もしかしたら、あえて問いかけられるようなことでもなければ、司の意のとおり、つくしのことを報告しないかもしれなかった。
 …この人たちも自分のことが可愛いものね。
 どうやら一年のうちの大半を日本にいない司の保護者よりも、司自身を優先することもありえなくはなさそうだ。
 そうこうしているうちに、一行がやってきたのか、廊下の角の遥か向こう…エントランスからの道筋のあたりから、何人もの人間たちの気配が近づいてくるの感じられた。
 …英語?
 もしかしたら複数の言語なのかも知れない。
 日本語以外の言葉も飛び交いながら、こちらへと移動してきている。
 「…ええ、…じゃ……、…調…し…………う……い」
 落ち着いた中年くらいの女性の怜悧な声が、つくしの耳にも届く。
 「チッ、もうババアのヤツ、来やがったのかよ」
 小声でボヤいて、司がもう一度使用人たちへと厳命する。 
 「俺はこいつとしばらく雲隠れするから、お前ら適当に誤魔化しておけ」
 「しかし、…それは」
 「邸からは出ねぇよ。それに、どのみち今の時間からだと、いつもどおり明日の早朝にはあっちに戻るんだろ。それまでには、俺の方から顔を出すって言っておけ」
 「……かしこまりまして」
 さすがに司を引き止められるものなど、この場にはいない。
 「牧野、行くぞ」 
 「え?」 
 司に半ば無理矢理に手首を引っ張られ、こちらへと向かってくる一行とは真逆の方向へと引きずられる。
 …いやだ。
 当然のごとく沸き起こった感情。
 今、この場を離れたなら、もはや司の母親に会うことはできないかもしれない。 
 もちろん、永遠ということはないだろう。
 けれど、つくしにとっては今、彼女に会うことが叶わないのなら、それこそ永遠に等しいように感じられた。 
 …逃げられなくなる。
 …また、この悪夢の中に閉じ込められたまま、いつかあたしの方が壊されてしまう。
 そんなの…、
 「いやっ!!」
 バッ!!
 司の手を、渾身の力で振り払った。




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