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「愛してる、そばにいて」
第2章 罪②

愛してる、そばにいて0104

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 つくしの脳裏に、あの日の司が彷彿と蘇った。
 「な…に、なに言ってるのよ」
 …どうして、そんなこと言われなくっちゃいけないの?
 あの日はただ呆然とするだけで、そんなことを思う余裕もなかった。
 けれど、あの日も突然にいわれない言いがかりをつけてきた挙句の、あの司の暴挙だったのだ。
 気が付けば、震える唇に手をあて、滂沱の涙が流れて…堪えようとさえ思うことなく嗚咽が溢れ、気がついたらしゃくりあげていた。
 あの時のことを思い出せばもうそれだけで、簡単に恐怖と屈辱が限界に達して堰が崩れてしまう。
 「尻軽…ってなに?…どうして…よ。あの時もい、淫売とか、そんな、わけのわからないこと言って…あたしが何をしたって言うのよ」
 泣きじゃくるつくしに、司の顔が苦しげに歪む。
 殴られるのかと、つくしは思った。
 けれど、司はつくしを殴ることはせずに、彼女の両肩を掴んでその抵抗を強引にねじ伏せ、引き歪んだ顔をつくしの胸へと埋めてしまった。
 「どうして…は俺のセリフだ。どうしてなんだよ。どうしてだ。好きだって言ったじゃねぇか、なんだって買ってやる。なんだってしてやる。なんだってお前の望むものは叶えてやるっ。それなのに…どうして、俺じゃないんだよ。お前が笑うのも、好きなのも…類、なんだよ」
 まるで司までもが泣いているような、どこか弱々しくも自嘲的な声音。
 「赦さねぇ…絶対に、渡さねぇ」
 「……っ」
 つくしの両肩を掴んでいた司の手の片方が上がって、つくしの頬へと押し当てられる。
 睨むような鋭い眼差し。
 顔を上げた司の顔は、もちろん泣いてなどいるわけもない。
 「お前は俺のもんなんだよ。この目も唇も肌も、カラダも、髪の毛一本だって、俺のものなんだ。類にだって渡さねぇよッ」
 「花沢類は、あの人は、あたしのことなんて…」
 「…ああ、お前のことなんてあいつは好きでもなんでもねぇよな」
 わかっていることなのに、けれど自分以外の人間の口から伝えられるその真実は、つくしの胸を真実、突き刺す刃となった。
 「あいつが好きなのは静だけだ。お前みたいな貧相で何の取り柄もねぇような女なんかに、あいつはなんの興味もねぇんだよ。なに自惚れてるんだ。ちょっと話かけられたり、かまわれたからって、いい気になってんじゃねぇよ」
 ニヤリと笑ってつくしを嘲る司の顔が、ひどく引き歪んで邪悪で醜かった。
 造形はこの上なく整っているはずなのに、つくしには少しも美しいとは思えない。
 こんな男になんて何を言われても、傷つく必要などないはずなのに、その司の嘲りが、今たしかにつくしの胸を激しく抉った。
 …あんたなんて、嫌い。嫌い。
 「大っ嫌いッ」
 「…なんだと?」
 口から溢れた言葉が、司の憤怒を再び呼び覚ます。
 けれど、つくしももう止められなかった。
 自分でも愚かな行為だとわかっていても、目の前の男が何よりも憎くて仕方が無かったのだ。
 「…もう一度、言ってみろよ?」
 「あんたなんて、大っ嫌いっ!触られるだけで虫唾が走る」
 涙と嗚咽と、恐怖といろいろなものでグチャグチャになって語尾を震わせながらも、司を激昂させるだろうその言葉をつくしは止められなかった。
 無表情になってしまった司の顔に芯から怯えていたというのに、それでも自暴自棄に叫び続ける。
 司が嫌いだと。
 「そうかよ…」
 …後悔なんてしない。
 たとえ殺されたって、構わない。
 一過性の無謀な蛮勇にすぎなかったかもしれないが、それが今のつくしの真実だった。
 「だったら、その虫唾が走るほどお前が嫌いな男が触りまくってやる。ぐちゃぐちゃに抱き潰して、もうそんな口きけなくしてやるから、せいぜい今のうちに息巻いておけよっ」
 「ぁ…やあああっ!!」




*****




 追いかけっこが始まっていた。
 とっさに蹴り上げた膝が上手いところへ入ったのか、司が怯んだ隙にその腕の射程内から急いで転げ逃げる。
 だが…、
 「俺から逃げられると思ってんのかよっ!」
 逃げられると思っているわけではなくても、逃げずにはいられない。 
 ソファを挟んでグルグルと周囲を回り、なんとかその長い腕のリーチに捕まらないようにと死に物狂いで逃げ回る。
 だが、業を煮やした司がいつまでも、そんなまどろっこしい追いかけっこに付き合い続けるはずもない。
 つくしの隙をついて、ソファの上へと飛び乗って、一気に跳躍してくる。
 トッ、ダァンッ!
 「やあああっ!!!」
 慌てて司から背を向け、つくしが部屋の出口へと殺到する。
 なんとかドアを出て、すぐにドアを閉めることができれば…そんなありえない夢想を頼みにつくしは必死にドアノブへと手を伸ばした。
 「ああっ」
 あっさりと腰に巻き付いた腕に後ろ向きに引き戻され、まるで荷物よろしく背の高い司の肩の上に担ぎ上げられる。
 「やだっ!やだやだやだっ!!離してッ!離せぇっ!!」
 懸命に司の背中や腰を叩いたり、引っかいたりするがビクともしない。
 しかも、ほとんど逆さ吊りにされている状態に、上手く力が込められないのだ。
 ロクな抵抗などできるはずもなかった。
 …ああ、今度こそ、壊される。
 司の言葉通り抱き潰されて…それこそめちゃくちゃにされてしまうのだろう。
 後悔しないと思った心が、すでに挫けて砕けそうだ。
 つくしを抱え上げたまま、司が向かっている先…ベッドルームがまるで地獄の入口のようにさえ思える。
 「ギャンギャンギャンギャンッ!!うううう―――ッ!!ギャワワワワンッ」
 つくしの危機にシャッツが懸命に吠えている声が聞こえる。
 吠え声に混じって、金具がぶつかる音や引きずられる家具の音がするから、暴れてもいるのだろう。
 つくしを守るために。
 …あんなに道明寺に怯えてたのに。
 それでも、つくしを守りたいという小さな犬の大きな愛情。
 …でも、ダメだよ。あんたまでひどい目に合わされちゃう。
 また司のカンに触って、シャッツに注意が向けられてしまう前に止めたいのに、声が詰まって言葉が出ない。
 馬鹿みたいに緩んで壊れてしまったような涙腺から、涙を流すことくらいしかできない愚かな自分。
 この結末は自分が招いたのだ。
 これまで、出来るだけ司の逆鱗に触れないように縮こまって生きてきたというのに。
 ガチャッ。
 寝室のドアノブに司の手がかかった音が、つくしを更なる絶望へと突き落とす。
 だが、司はドアを開け放たず、寝室へと踏み入る前にその足が止まった。
 「お前が」
 「…………」 
 「お前が、類のことなんかもう好きじゃねぇ。俺のものになる…俺を好きだと一言言えば、許してやる」
 その言葉に、つくしがハッととっさに顔を仰向け、司を振り返る。
 無理な姿勢で自分を担ぐ男を見上げたのだが、しかし司自身も首を捻るようにしてつくしを見下ろしていたから、視線が合わさった。
 司の顔はさっきのように揶揄るようなものではなく、またお前など類の相手になるはずもないとバカにした時の顔とも違う。
 その顔は、まるで司の方がつくしへと懇願しているかのようだった。
 「そうすれば、…もうひどいことはしねぇ。本当にお前のことを…お前のことだけを大事にするし、どんなことだってしてやる。だから…」
 「どう…みょうじ」
 担がれていた肩から、ゆっくりと床へ下ろされる。
 言葉のとおり、けっして乱暴ではなく…優しく大切に。
 「だから、類じゃなく…俺のことが好きだと言えよ」




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