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「愛してる、そばにいて」
第2章 罪②

愛してる、そばにいて0102

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 司の指示通りにつくしが道明寺家の車で帰宅すると、どこか邸内は浮き足立っているように彼女の目にも見えた。
 通り過ぎる使用人たちがキビキビと働いているのはいつものことだが、それでもどこか忙しなくいつも以上に気合が入っているようだ。
 …誰か、お客さんかな?
 この2ヶ月弱の間にはなかったことだが、これだけ大きなお屋敷なのだ。
 重要な来客の一人や二人、あってもおかしくはないだろう。
 とはいえ、現在、主人一家のうち、この家に住んでいるのは未成年の司だけ。
 …まさか、F3が遊びに来るからってことはないよね?
 第一、彼らはよそに飲みに出かけてしまったはずだ。
 少なくても、つくしがこの邸に滞在するようになってから、彼らがここをたまり場にすることはなかった。
 …まあ、友達のウチなんだから、遊びに来たっておかしくはないだろうけどさ。
 それにしてもおかしい気がする。
 いつものように、小川がさっそくつくしを出迎えに出てきてくれていた。
 「おかえりなさいませ、牧野さま」
 「ただいまです、いつもすみません」
 「いえ、私の役目ですから」
 つくしにしてみれば、この家の人間ではないというのにと申し訳なくて、一向に馴染めない話だ。
 とりあえず、今はそんなことより、小川に尋ねたいことがある。
 「今日も、おやつのご用意はできてますよ。召し上がられますか?」
 「ああ…ありがとうございます」
 すでにコーヒーテーブルには色とりどりのケーキやらフルーツが並べられ、すぐにでもお茶が出来そうな状態に用意されている。
 「えっと、その…」
 「はい?」
 ソファに座るでもなく、言葉を選んで言いあぐねるつくしに、小川が不審そうに首を傾げる。
 「あの、何かお屋敷がいつもより賑やかな気がするんですけど、どなたかいらっしゃってるんですか?」
 「…ああ、いえ、まだ到着されてはいないのですが」
 言葉を濁した小川の顔が、わずかに疚しくつくしから視線を反らした気がした。
 …もしかして。
 期待に胸が動悸打って、喉が渇く。
 そんなことがありえるだろうか?
 あっても当たり前のことなのに、いや、ずっとその時を待ち望んできたはずなのに、あまりに長い期間の失望が続いて、つくしはにわかにには信じられなかった。
 …道明寺の家族が帰ってくるのかもしれない。
 一度胸に湧いてしまっては、もはや消すことが難しい大きすぎる期待。
 その期待が裏切られたら、どれだけ辛いだろうと思うのに、それでもやはり期待することがもうすでにやめられなくなってしまっていた。
 「あ、あの小川さん」
 「…はい」
 「その…」
 つくしに希望を与えてくれた小川。
 果たして尋ねて、その問いに素直に答えてくれるだろうか。
 …でも、道明寺があたしに言っちゃダメって口止めする理由はないよね?今のところ。
 つくしの思案が司にバレていればどうかわからなかったが、現在、特に彼に逆らわないつくしに対して、自分の親に彼女が助けを求めるなどとは、司は夢にも思っていないだろう。
 司はけっしてバカなわけではなかった。
 身近にいればそれくらいわかる。
 だが、傲慢さ故に人の心を慮ることがない。
 …あたしが裏切るなんて思ってない。きっと。
 だからこそ、慎重を帰さなければならない。
 もしかしたらチャンスは一度っきりなのかもしれないのだから。
 もし、助けを求めようとして、その前に司にその思案がバレてしまったらと思うとゾッとする。
 司のことだ、どんな目に合わされるかわかったものではなかった。
 …今度は、地下牢みたいなところに押し込められて、出してもらえなくなるとかあるかも。
 この道明寺邸ならそんな場所もありえそうだし、司のつくしへの今の執着度からすれば、ありえないことでもなさそうな気がした。
 特に…あのプライドの塊のような男が、ペット扱いして好き勝手にしている女に、わざわざ好きだと告白したのも、自分の優位を確信しているからに違いない。
 …あたしが逃げられないと思ってる。
 逃げないとすら思っているのかもしれない。
 ドキドキと胸がさらに動悸打って、今にも貧血を起こしてしまいそうだった。
 「牧野さま?お顔の色が…」
 一時期のつくしの衰弱した姿を目の当たりにしている小川が、心配そうに覗き込んでくる。
 「あ、いえ…大丈夫です。その、そうじゃなくって…」
 ゴクリと唾を飲み込み、心で祈る。
 …ああ、神様。小川さん、お願いだから、答えてください。
 「もしかして、これからお屋敷にいらっしゃるのって、…道明寺の、道明寺の家族なんですか?」
 「…っ」
 動揺が見えた。
 つくしが小川の両腕に縋りつく。
 「そうなんですよね?!そうだって、言ってください。教えて、お願いっ、小川さん!?」
 小川が逡巡して、視線を左右へと動かす。
 だが…、やがて思い決めたように、小川がハッキリと肯定してくれた。
 「はい、そうです。司坊ちゃんのお母様の…楓様が、奥様がお戻りになるんです」
 「…っ!?」
 …ああ。




*****




 興奮する気持ちを堪え、つくしはとりあえずは落ち着こうとソファへと腰を下ろした。
 そろそろ小川も坂城との交代の時間だから、その前にあれこれ片付ける仕事もあるのだろう。
 つくしのことを気にしつつも、退室して行った。
 帰宅する前にもう一度、つくしのもとへと顔を出すと言ってくれていたが、むしろ小川はいてくれない方がよかったから、つくしの方がそれを断った。
 万が一にも、小川に迷惑はかけられない。
 折も良いことに、今、この屋敷には司がいない。
 …チャンスだよね。
 それも、これ以上はないというほどの。
 司の母親がどんな女性かはわからなかったが、彼女の目から見ればおそらく、つくしなど息子に寄生する寄生虫にも相応しい女だろう。
 つくしにしてみれば噴飯物の話だし、もしかしたら被害妄想も良いところかも知れなかったが、それがここ2ヶ月弱のこの屋敷での生活で得たつくしの冷静な認識だった。
 司の母親に罵倒されたり、侮辱されることもありえる。
 英徳学園の生徒たちがそうしたように、あるいは司自身が彼女を蔑視していたように。
 …そりゃ、そうだよ。
 つくしが司に執着する理由はあっても、普通に考えれば、司がつくしに執着する理由など何もありはしないのだ。
 それでも、良かった。
 司の母親にどう思われようとも、とにかく今の状況を打破するには、その母親に縋るしかないのだから。
 むしろ寄生虫上等。
 そう思ってくれれば、つくしを容易に司から引き剥がしてくれるだろう。
 …やっと、帰れるんだ。
 元の生活に戻れる。
 その喜びと期待…そしてわずかな不安に浸りすぎて、だからすぐに気がつけなかった。
 いつものごとく先に気がついたのは、つくしの足元に伏せていたシャッツの方だった。
 「…シャッツ?」
 ビクビクッと耳を動かし、サッと機敏に立ち上がった犬が出入り口に向かうのと、ドアが勢いよく開いたのとはどちらが先だったのか。
 バンッ!
 「きゃっ」




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