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「愛してる、そばにいて」
第2章 罪②

愛してる、そばにいて0099

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 『好きになれ』、ではなく、『好きになってくれ』。
 思わぬ言葉に、つくしは二の句が継げずに絶句した。
 …今、あたし、なんか聞き間違いしたの?
 そんなはずはない。
 わかっていた。
 だが、それだけつくしにとって青天の霹靂であり、衝撃的な司の告白だった。
 それでいてどこかでそんな彼の気持ちを知っていた気もする。
 柔らかく彼女の髪や背を撫でる大きな手の優しさや、彼女の憎しみを受けて苦しそうな顔の昏さがそう訴え続けていたのかもしれない。
 お前が好きだ、と。
 しかし―――。
 …何言っちゃってんのよ。
 この卑劣な男が自分をどう思っていたか、それがどうしたというのだろう。
 走馬灯のように頭を駆け巡ってゆく、この数ヶ月のさまざまな苦しみの記憶がつくしの涙腺を緩ませ、憤りに体を小刻みに震わせる。
 …赦せるはずがない。
 赦せないのに、好きになんてなれるはずがないではないか。
 『好き』…その言葉のなんとキラキラしく、美しも、今のつくしにとってなんて遠い言葉であることか。
 かつて、好きな人がいた。
 淡い想いだったけれど、今思えばたしかにあれは初恋だった。
 あの非常階段のドアを開ける時、いつもドキドキして、まるで唯一の宝物を見に行くみたいだった。
 つくしのことなどこれっぽちも気にかけてくれなかったけれど、それでも彼の顔を見ることができただけで、本当に幸せだったあの日々…。
 それを壊し、そしてつくしの人生そのものを一変させてしまった男。
 そして今も理不尽にも彼女を縛り付け、苦しめ続けているのだ。
 「…離して」
 涙声だったかもしれない。
 つくしの声は囁くように小さなものだったけれど、存外に司はそんな彼女の言葉に素直に従って腕の力を緩めた。
 その胸を押して司の腕の中から抜け出したつくしが、ゆっくりと校舎へと向かって歩き出す。
 司をもう振り返ることはしない。
 ただもう、一刻も、早くこの場を立ち去りたかった。
 腹が立って、腹が立って…苦しくて、辛くて、さまざまな負の感情に押し潰されそうだ。
 「今日は、…奴らと飲んで帰る。だから、お前は車で先に屋敷へ帰れ。間違っても朝みたいに、歩いて帰ったりするんじゃねぇぞ?」
 「…………」
 後ろから司の声が追いかけてくる。
 「今、俺が言ったことは嘘じゃねぇ。俺の気持ちは本当の本当だ。お前が好きだ。好きだから…お前を離してやれねぇ。だけど、俺はお前に好かれたい。愛されたい」
 …うるさいっ!うるさい、うるさいっ!!

 つくしは耳を塞いでしまいたかった。
 実際に、気が付けば耳を両手で塞いで、駆け出してしまっていた。
 司を好きになんてなれるはずがない。
 司を愛することなんてありえない。
 それだけを心に念じて、ただただ、つくしはその場を逃げ出した。




*****




 気がついたら、この場に来ていた、そんな感じ。
 つくしは当初、教室に戻るつもりだった。
 しかし、あきらかに泣き濡れた顔で戻ることができなかったから、ちょうど良かったかもしれない。
 久しぶりに訪れた非常階段は、あいかわらずひっそりと全く人気がなくって、静かで、落ち着くことができた。
 今のつくしにはぴったりの場所。
 誰に思い煩わされることもなく、一人ひっそりと隠れていられる。
 …あいつがどういうつもりだったにしろ、結局は何も変わらないんだよね。
 司のつくしへの気持ちが恋心であろうとそうではなかろうと、彼女を自由にする意思が彼にないのなら、今のつくしの状態が変わることなど何一つないのだ。
 …あたしが好き?なにがって感じ。
 これまで司との認識の大きな違いを思い知らされ続けてきたように、『恋』や『愛』の認識についても、たぶんつくしの常識と司の常識では激しく違うのだろう。
 …あいつにとっての好きっていうのが、あたしを閉じ込めて好き勝手するのがそうなんだって言うなら、やっぱりそれは『恋』なんかじゃない。
 そう思い至れば、動揺してしまったのがあまりにバカバカしかった。
 …なんにせよ、あたしのスタンスはこれまでと変わらない。
 できうるかぎり、司に逆らわず、彼を怒らせずに、なんとか最低限の自分の尊厳を守ること。
 まさに最低限には違いなかったけれど、最悪の事態を招くことはなんとしても避けたかった。
 そして、司の恋だかなんだか知らないが、つくしへの異常な執着が薄れるか、あるいは彼の家族に会うことができて解放されるその日まで耐える、それだけ。
 「あ~あ、驚いて損したぁ」
 声に出してしまえば、なおさら大したことではなかったのに、と思うことができた。
 「…なにを驚いたの?」
 …え?まさか。
 自分ひとりだと思っていたのに、背後から突然かけられた聞き覚えのある声に驚愕する。
 しかも、その声は――、いるはずがない、いや、つい2ヶ月ほど前までは期待していた声。
 どこか平坦な…けれど美しい声音に、つくしがおそるおそる背後を振り返る。
 「よう」
 「…花沢、類」
 …これは、夢?




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