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「愛してる、そばにいて」
第2章 罪②

愛してる、そばにいて0098

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 たしかにつくしはその内面だけではなく、見た目…容姿的にもかなり変わった。
 病的に痩せていた時期もあったし、今もまだ完全には回復していないようだったが、そうした意味合いだけではなく、磨かれて美しくもなった。
 派手になったわけではない。
 むしろ、司というパトロンがついたにしては、質素なくらいだっただろう。
 だが、道明寺邸の一流のケアも受け、それなりのものを与えられ身につけて、まるで見違えたように垢抜けて可愛らしくなっていた。
 まるで蛹が蝶に羽化するように…という言葉が相応しく、本人は自覚していなかったかもしれないが、おそらく司が執心を顕に周囲のものたちを牽制していなかったら、彼女に群がる男たちもいただろう。
 あるいはどのみち、彼女が成長すれば、いずれ見せただろう本当の姿だったのかもしれない。
 しかし、それらはあくまでも表面的なもので、かつて彼らF4に立ち向かってきたつくしの真実の魅力…強さがどこか失われてしまった、いや手折られてしまったことにも総二郎とあきらは気がついていた。
 司が奪ってしまった。
 つくしが司と一緒にいるのも、おそらく彼女自身の意思ではないこともわかっていながら…目を瞑っていたのだ。
 彼らは司の親友であって、つくしの友人ではなかったから。
 そして、これまでも…つくし以外の人間に対するスタンスもそうだったのだ。
 その最たるものが赤札による学園あげての集団イジメ。
 だが…。
 「牧野」
 「……」
 つくしの苦しそうな表情は、そんな彼らでさえ某かを感じさせずにはいられないものを含んでいた。
 苦しくて、苦しくて、苦しくて仕方がない、そんな顔。
 これまで彼らが見ないフリをしていた、彼らによって虐げられた者たちの哀しみと苦しみそのもの。
 顔もロクに憶えていない相手のことではない。
 今まで、司のやるイジメを高みの見物をしていても、それはどこかテレビや映画を観ているのに近くて、どこか遠かった。
 実際に泣いて苦しんでいる人間が、現実の存在だとわかっていても、あっという間に逃げ去る被害者たちは日替わりにも近く、それだけに罪悪感を感じる間も無い出来事に過ぎなかった。
 ゲームの世界の殺人に近いものがあったかもしれない。
 つくしという人間と身近に接して、突きつけられて、無視することができなくなってしまった他人の痛み。
 「あんたらだけが人間じゃないっていうのにね。道明寺があたしのことをペット扱いしてるのと同じで、あんたらも、仲間内以外は人間だとも思ってないんじゃないの?あたしなんて道端の雑草?小石?目障りだったら蹴り散らせばいい?あたしにも感情があるなんて、思いもしないんでしょ?」
 「………」
 違う…と言えただろうか。
 つくしは突っ込んでは糾弾してはいなかったが、その表情が十分にこう言っていた。
 『あんたたちこそ、人間じゃない。この人でなし』
 つくしの苦しそうな顔をあえて無視して、そして気が付けば慣れていたように思う。
 最初、違和感を感じた彼女の苦悩を見て見ぬフリをしているうちに、それが普通になっていたのかもしれない。
 ――雑草のような逞しい女だった彼女を忘れて、元々が、まるで月の光の下でしか花開くことがないという儚い性質を持った花であったのだと勘違いしてしまった。
 「あたしはもうギリギリなの。もうこれ以上、あたしに何も望まないで。望まれても何もできないし、あんたたちの勘違いに付き合うギリもなければ、余裕もない。それともあんたたちも、道明寺みたいにあたしで遊びたいって、そういうことなの?」
 「牧野ッ」
 「…っ!?」
 そんなつもりのなかった総二郎とあきらが声を上げる。
 「あたしはもう十分ボロボロ。どこまですれば、あんたらは満足してくれるわけ?あいつの靴でも舐めるようになればいいってこと?」
 「何やってんだ?お前ら…」
 ハッと三人三様、背後からの司の声に同時に振り返る。
 「「司」」
 「…道明寺」
 怪訝に自分たちを交互に見ている…わずかに青ざめているようにも見える男の顔を一べつして、つくしがその横を通り抜けようとした。
 しかし…、
 「待てよ」
 二の腕を掴まれ、行く手を妨げられる。
 「痛いっ」
 実はそれほど痛かったわけではない。
 それでも、つくしのその声に、司がわずかに掴んだ手の力を緩めた。
 「お、俺らは、もう行くわ」
 「先行くぞ、司」
 そそくさと、総二郎とあきらが逃亡を謀る。
 険を含んだ目で見やったものの、司もそれを特には引き止めず、ただつくしの腕は掴んだまま、その場を立ち去らせてはくれない。
 「車止めんとこで待ってるから、司、お前も早く来いよ」
 「ま、またな、牧野」
 どうやら待ち合わせていたらしく、またこれからどこか皆で行くつもりなのだろう。
 司の顔を見る気もせずに、つくしはそっぽを向いたままだったが、特に咎められもしないので無言を貫く。
 何も会話を交わさないまま、司がゆっくりと掴んでいた手を彼女の腕から離す。
 そのままその場を立ち去ろうとしたつくしを、司があらためて呼び止めた。
 「なあ!」
 「………」
 「待てよ」
 いやいや振り返れば、意外なことに、司はつくしから顔を俯け視線を落としていた。
 「…なに?」
 「さっき、お前、あいつらと何を話してたんだ?」
 いつも傲慢に強い語調で命令してくる声音が、どこか弱々しくも感じる。
 だが、それよりも別の意味でつくしが眉根を寄せた。
 …今度はなんなの?
 どんな難癖をつけるつもりだと、うんざりしてしまう。
 「別に大したことは…」
 なにも、そう言おうとした。
 「……だ」
 「は?」
 それなのに、顔を真っ直ぐに上げた司の顔があまりに真剣だったから…だから、聞き間違いをしてしまったのだろうか。
 一瞬、つくしは司の言った言葉が理解できなかった。
 「好きだ」
 「………」
 「お前が好きだ」
 「…え?」
 ポカンの司の顔を見上げたまま固まってしまっているつくしを、司が抱き寄せる。
 つくしの顔を胸元に押し付け懇願する声音は、この傲岸不遜な男に似つかわしくなく、小さくわずかに震えていた。
 …うそ。今、こいつなんて言ったの?
 「な、何言ってんのよ、あんた」
 「お前が好きなんだ。だから…お前も、俺を、好きにな…ってくれ」




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