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「愛してる、そばにいて」
第2章 罪②

愛してる、そばにいて0094

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 「ぷっ!クスクスクス」
 いつの間にか、つくしは笑い出してしまっていた。
 「な、なに笑ってんだよッ」
 怒りと羞恥に顔を真っ赤に染めて、抗議する司の声さえもが上擦っている気がする。
 「もしかして、あんたって犬が嫌いって言うより、怖いの?」
 「こ、怖かねぇよっ!そんなもんっ。俺はこんなちびっちぇ犬なん…か、うおっ、飛びついてくんじゃねぇッ」
 言葉では否定していても、すでにその態度がすべてを物語っていた。
 くすくす笑いながら、つくしが犬のリードを引っ張る。
 だが、犬は司の怯える様子に興に乗ってしまったらしく、ますます興奮して司へと飛びつこうとかジャンプし出す。
 「わんわんわんわん、わんっ!」
 「だめだよ、わんちゃん、こっち来て」
 噛み付く感じではなかったが、あからさまに怖がっている相手を脅しつけるのも悪趣味だと、つくしがベンチに前足を乗り上げさせていた犬の体を抱き上げた。 
 「ふふふ、おっかしいのっ」
 「…笑うな」
 長い両足をベンチで抱えたままの滑稽な姿で、憮然としている司の顔にまた笑いがこみあげる。
 嘲っているわけではなかった。
 けれど、なぜかおかしさが止まらない。
 もともと司といて楽しかったことなど、こんな関係に陥る以前もほとんどなかったが、おそらくこの屋敷に囚われるようになって初めてのことなのではないだろうか。
 「天下の道明寺が、お前みたいな小さな犬が怖いなんてねぇ。不思議だねぇ、わんちゃん」
 「………だから、怖いんじゃねぇって」
 すでに弱々しい声音は、つくしの認識の訂正を諦めている。
 「なあ」
 「……?」
 「お前さ」
 司の真面目な声に、つくしも笑いを収めて顔を向ける。
 声音そのままに真面目な顔をして、ゴクリと唾を飲み込み、司らしくもなく緊張を滲ませた。
 「お前…俺のことゆ…………いや、いい。なんでもない」
 「…………」
 沈黙が続いた。
 楽しい気持ちはもうなくなっていたけれど、不思議に和やかな時間は続いている。
 「それより、お前、まだその犬に名前つけてねぇのかよ」
 「ああ」
 司に指摘され、つくしが小さく息をつく。
 つくしは犬に名前をつけるつもりがない。
 だが、それを司に告げるのを躊躇する。
 そのことを告げれば、当然、なぜつけないのかと聞かれるだろう。
 つくしにしてみればわかりきった理由ではあっても、司がどう捉えるだろうか。
 …逃げようとしているとか思われて、怒り出すかも。
 怒るくらいならいいが、締めつけがキツくなるのは勘弁して欲しい。
 
 ‘Du bist mein Schatz. ’
 ふいに司がつくしを見て、何か外国語を呟いた。
 そして、その視線を今度は彼女が抱いている犬へと向ける。
 ‘Du bist ihr Schatz.’
 「は?なに?」
 つくしの問い返しに、司が照れたように顔を赤らめソッポを向いた。
 「今のって何語?」
 「…ドイツ語」
 「え、道明寺。ドイツ語しゃべれるの?!」
 「あ?んなもんあたりめーだろ。道明寺財閥の跡取りが、外国語の一つや二つしゃべれなくてどーすんだよ」
 司は当然だろうというドヤ顔だが、目をパチクリさせたつくしが、あまりの意外さに、思わず素直な感嘆を口から溢す。
 「凄い」
 「ま、まあな。ガキの頃からえいせい教育受けてたからな」
 「………英才でしょ」
 一瞬感心してしまった自分を後悔する。
 「で?なんて言ったの?」
 「は?」
 「ほら、いま、あたしとこの子を見て、あんた、なんか言ったでしょ?」
 「なんだよ?お前、ドイツ語くらいわからねぇの?」
 しまいには照れ隠しにか、調子に乗ってつくしを馬鹿にする始末で、つくしをムッとさせた。
 …ま、元からこんなヤツだし。
 大してつくしの怒りも持続しない。
 「あっと…、そ、その…ま、まあ、なんだ。パンピーはドイツ語なんて習わねぇもんな」
 「そうだよ。習ったことがないから、ドイツ語なんてあたしはわからないの」
 どこか和やかだった空気が気まずいものに変わってしまっていた。
 「その、よ」
 司が言葉を探しては口を噤んで、取り繕うとまた口を開くが、言葉が続かない。
 しかし、つくしの方はそれほど機嫌を損ねたわけではなかった。
 もともと司に対しての認識は最低ラインからのスタートだったし、いまやこれ以下はないというほどに地の底を這っている。
 いまさら司相手に憤るほどのものなど、何もない。
 動揺している司をよそに、つくしの方はあっさり気持ちを切り替えていた。
 「さて、そろそろもう帰ろうかな。日もほとんど落ちちゃったし」
 独り言のように呟き、抱き上げていた犬を足元に下ろして東屋を立ち去りかける。
 もちろん、特に司に声をかけることもない。
 「おいっ!」
 「………なに?」
 それでも呼び止められれば、一応は振り返る。
 「名前、決めたぞ」
 「は?」
 何を言い出すのだ、この男は。
 「そいつ…犬の名前。シャッツにしろよ」
 「はあ?」
 「決まり」
 しかも勝手に決めて、もう話を終わらせてしまっている。
 「じゃあ、さっさと帰るぞ」 
 立ち止まってしまっているつくしの手を取り、今度は引きずる勢いだ。
 「…決まりって、あたし、承知してないんだけど」
 「けっこう歩いたから、さすがに腹減ったな。夕飯、急がせるか?」
 憮然としているつくしをよそに、司の方は上機嫌だ。
 時々足元に来る犬にビビッて、立ち位置を変えるのはお笑い種だが、つくしの手を離すつもりはないらしい。
 つくしにしてみても慣れたもので、ありがたくもないが、あえて拒絶するほどではない。
 それに…。
 …なによ、『シャッツ』て。勝手に決めて、洋服かっつーのっ!?
 「変な名前!」




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