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「愛してる、そばにいて」
第2章 罪②

愛してる、そばにいて0091

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 「犬」 
 そのまま寝入りかけたつくしの耳に届いた司の声。
 「…名前、考えたのか?」
 眠ってしまいたかったけれど、問いかけられたからには答えないわけにはいかず、仕方なしに重い口を開く。
 「まだ」 
 「ちゃんと考えておけよ」
 「……」
 今度はあえて返事を返さなかった。
 つくしは邸には連れ帰ってしまったけれど、犬に名前を付けるつもりがなかったのだ。
 …あたしも、もうすぐここを出てゆく。
 もしかしたら、それは希望的観測だったかもしれない。
 だが、やがて出ていくことになるはずなのだ。
 そして、それをつくし自身が何よりも望んでいる。 
 ここを出ることが叶って家へと帰れることになったとして、果たしてつくしがそのまま犬を飼い続けることなどできるだろうか。
 つくしの家は社宅で、とてもではないが犬など飼うことはできなし、その余裕もない。
 そして、もちろん道明寺邸に残してゆくことなど論外のことだった。
 自分がいなくなったあと、司の玩具が連れてきた犬など誰も面倒を見てくれないだろう。
 それどころか、また野良になるより、保健所に引き渡される可能性の方が高い。
 …早く、貰い手探さなきゃ。
 司の気まぐれに甘んじて、無責任なマネをするつもりはなかった。
 どうせずっと一緒にいられないのなら、少しでも情など沸かないほうがいい。
 すでにもうあの愛らしい生き物を愛し始めている自覚があるだけに、名前などつけて、つくしはもうこれ以上執着したくなかったのだ。
 「それと、なるべくこの部屋から出すな」
 「………」
 想定内の言葉。
 使用人たちの軽蔑するような目を思い起こせば、つくしもとっくに肝に銘じてしまっている。
 が、続く司の言葉は、意外なもので…。
 「リードつけて、お前が目を離さなけりゃいいけど、部屋はともかく建物から出したらヤベェぞ」 
 「え?」
 つい振り返って、思いの他、真面目な顔に出くわした。
 「昼間は繋いであっけど、うちには訓練した警備犬がわんさといる。夜間はどうしても人間の警備も手薄になるから、そいつらを敷地内に放しているし、人間の方は最悪殺されるまではねぇけど、奴ら縄張り意識の塊だからな」 
 「………」
 「仲間じゃない犬が紛れ込んでみろ。あんな小さい犬、簡単に殺されるぞ」
 『殺される』、その恐ろしい言葉につくしもゾッと体を震わせる。
 司の真剣な声音が真に迫っていた。
 小さく震えたつくしの体を柔らかく抱き抱え直して、安心させるようにか優しく肩や背中を撫でられる。
 「屋敷から出さなきゃ、問題ねぇから」 
 「…うん」
 「けど、お前も夜は外、ウロウロすんなよ?危ねぇからな」
 「わかった」
 素直に頷くつくしに柔らかく微笑んで、司がチュッ、チュッと、羽が掠めるような軽いキスを耳の下や頬に落としてくる。
 だからだろうか。
 唇へとキスをされそうになった時、気が付けばつくしも自然に目を閉じてしまっていた。
 いつもはやりたければヤればいいと目を開けたままで好きにさせるか、そのイヤな顔を見たくないからとギュッと目を瞑るだけなのに。
 ちゅっ。
 不思議に穏やかで…くすぐったいような時間。
 おそらくホンのわずかな時間に過ぎなかったはずなのに、なぜかそんな気がしない。
 それでいて、一瞬だったような気さえもした。
 司がゴソゴソと体を動かして、それで腰に触れる彼の股間の昂ぶりにつくしも気がついたけれど、それ以上、彼女に何かを強いるつもりはないらしく、特に司がセクシャルな行動へと移行する気配はない。
 思い起こしてみれば、それは珍しいことでなく、ここのところずっとそうだったのだ。
 性的交渉が途絶えることはさすがになかったけれど、司の体力の続く限りにと挑まれるようなことはなくなって、最初の頃のがっつきようが嘘のように、彼が無理を強いてくることはなくなっていた。
 もしかしたら、司自身はまだ物足りないくらいなのかもしれなかったけれど。
 男の機微になど通じていないつくしだったが、なんとなくそんな気配を感じることはあった。
 それでもどうしても…と、一度終わってから手を出されることもなくはなかったが、つくしの疲労度やダメージを伺いながらで、触れるだけで最後までしないこともある。
 もしかしたら、司は温もりを感じたいだけなのかもしれない。
 そんなふうに、思う時もある。
 そんな時、奇妙な情じみたものを司に感じることがあって、しかしつくしは自分のそんか心の揺らぎを、深く追求したくはなかった。
 とにかく司のことを毛嫌いして、彼の某かを顧みるようなマネは避けたかったのだ。
 …同情なんてしたくない。赦すなんて…ありえないでしょ。
 あれこれとつくしが考えているうちに、自分とつくしが寝やすいようにと司が姿勢を変えて、そのまま彼女の体を抱き抱えたままで、いつものように眠る態勢になった。
 「もう寝るぞ」
 「………うん」
 つくしにも、もちろん否やはない。
 やがては緩やかな疲労に眠りが訪れて、二人から小さな寝息が溢れだした。




******




 ここのところ、つくしにいくつか新しい習慣が増えた。
 とはいえ、ほとんどが大したことではなかったけれど、その一つが…。
 「わぁ、今日も美味しそう」
 学校から帰ると、つくしの部屋のコービーテーブルの上に、フルーツや小さなケーキなどの洋菓子と、お茶のセットが置かれていて、その他にもちょっとした茶菓子がいつでもつまめるようにと用意されるようになったのだ。
 「……これは、ちょっと太っちゃうかも」
 そんな風なことが心配になりそうだ。
 それが誰による仕業かわからないわけもない。
 正直、最初の日は喜びより戸惑いが大きかった。
 たしかに司には空腹のことは話していたし、どうやら彼もつくしの食欲には気が付いていたようではあったのだが、別にねだったつもりではなかったのだ。
 ただちょっとした雑談で、問いかけられた問いにおざなりに答えた…その程度のことだったのに。
 見るともなしに、つくしの部屋の居間の入口付近にあるペットベッドに目を向ける。
 見るからにフカフカで寝心地の良さそうなそれは、彼女の拾ってきた雑種犬のためにと、犬を連れて来た翌日にはもうわざわざ用意されていた。
 犬が嫌いだというわりに、司はつくしが犬を連れ歩くのにも寛容だった。
 最初の日以外は、さすがに食堂にまで犬を同伴するつもりはなかったつくしだったが、なぜかそれさえも許されて、彼女の足元で犬が食事をする風景も今では普通のことになっている。
 …何を考えてるのよ。
 そうは思うものの、本当は心のどこかでわかっていたのかもしれない。
 「あら、いやだっ!」
 坂城の疎ましげな小さな悲鳴が耳元に届いて、つくしもハッと物思いから覚める。




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