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「愛してる、そばにいて」
第2章 罪②

愛してる、そばにいて0089

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 …美味しい。
 我ながら逞しいと思う。
 一時期は、ほとんど食欲もなかったのに、ここのところ以前以上に食欲が増して、今日は特に食事も美味しい気がする。
 …ていうか、本当にここのお屋敷の食事は美味しいんだけどさ。
 しかし、そんなことにも気が付いていなかった気がする。
 お腹が空くから食べる。
 ただそれだけだったのだ。
 もともと好き嫌いもなく、食べることも大好きなタチだ。
 まるで失ってしまった脂肪分を取り戻そうとするかのように、ここ数日、食事の時間が待ち遠しいことも少なくない。
 「美味いか?」
 「………うん」
 ジッと食べているところを観察されるのもいつものことだから、気にしても仕方がない。
 開き直ってしまえば、目の前の食事に集中することができる。
 つくしの足元でガツガツと餌を貪り食らっている犬も嬉しそうだと、つくしの口元がいつの間にか緩んで、薄らと微笑んでしまっていた。
 「お前、飯だけは嬉しそうに食うよな」
 だから言われても不思議ではないだろう。
 「まあね」
 けれど、この唯一の味方である小さな生き物がそばにいてくれるせいか、気持ちが凪いでいるのはたしかだった。
 「そんな細せぇ体のどこに、入るわけ?」
 むしろ体格のいい司が、少食な事の方がつくし的には不思議なくらい。
 …こいつ、こんなデカイ体、どうやって維持してるんだろう
 いまさらながらに思う。
 これまで司のことにまったく興味がなかったから、彼の少食にも気がつかなったし、彼自身のことを知りたいと思ったこともない。
 今も興味があるとは言えなかったけれど、それでも以前には知らなかったことも今は知らぬうちに知ってしまっていた。
 司が一年の大半、この広い屋敷で、使用人はいるとはいえほとんど一人で暮らしているということとか、また、自由気儘好き勝手に生きているように見えて、実はそれほどその生活に満足を持っていないらしいということを。
 しかし、そんなことを知ったからといってどうだというのだろう。
 司に虐げられ苦しめられているつくしが同情する筋合いもなければ、憐れむ立場でもない。
 だから、司に対しては淡々と接するだけ。
 彼に求められたことの最低限を返し、司の奇妙な執着を煽らないように、逆鱗に触れないようにできるかぎり息を潜める。
 「朝も、けっこう腹の虫をぐーぐー、鳴らしてもんな」
 「………」
 「おかげで、ここのところ、俺の目覚めの第一声?がお前の腹の虫だぜ」
 怒っているようではなかったけれど、叱咤なのだろうかとチラッと視線を上げれば、存外に柔らかな表情の司の顔に出くわす。
 この男でもこんな顔をすることができるのかと、驚いてしまいそうに優しい顔。
 「もしかして、飯、足りてねぇのか?」
 声音までもが優しげに聞こえるのは、気のせいだろうか。
 とてもつくしを軟禁して、玩具にしている男には見えない。
 「おい?」
 思わず見入ってしまっていた。
 が、司に怪訝に問い返されて、つくしは再び食事の皿へと視線を戻し、司から目を反らす。
 「……足りてるけど」 
 「本当か?」 
 しつこい。
 この男は、蛇顔にたがわず粘着質で、こだわり出すと中々諦めない。
 そんなことも今ではわかってしまっていた。
 だから、仕方なく、小さく息をついて正直に答える。
 「食事は十分すぎるほどだし、食べきれないくらいだけど…食間にちょっと摘みたい時とかあるかな」
 「適当に、フルーツでも菓子でも持ってこさせればいいじゃん?」
 「………」
 家人ではないのだ。
 司がどういうふうにつくしの立場を使用人たちに話しているか知らなかったが、小川の丁重な態度から望むことはできただろう。
 けれど、つくしにはとても図々しく何かを要求することなどできなかったし、ましてや空腹が辛い夕方に担当なのは、つくしに好意的ではない坂城の方で、とても頼むことなどできるはずもなかった。
 「別に、我慢できないってほどじゃないから」
 「………ふ、ん」
 つくしの食事風景を眺めながら、何かと話しかけてくる司とは違って、ほとんど黙々と食べていたつくしの方は、最後の一口を口に入れて食事を終えてしまった。
 「ごちそうさま。あたしは食べ終わったから、部屋に戻っていい?」
 「デザートは?」
 「今日はお腹空いてて、食事の方をたくさん食べちゃったし、今はもうお腹一杯で食べれないからいいや」
 道明寺邸のパティシエが作ったデザートは本当に美味しいので、別腹といきたいところだったけれど、今すぐに食べたいというほどにはお腹に余裕がない。
 それに司と一緒にタラタラとお茶をしたいわけもなかった。
 どのみち、後で部屋に来られてしまうのだろうけれど、司が食事を終えるまでのわずかな時間でも一人になりたい。
 「じゃ」
 「……ああ」
 「わんちゃん、行こ」




*****




 ギシッ。
 トサッ。
 「………ん」
 ベッドに下ろされるわずかな衝撃に、沈み込んでいた意識が急浮上する。
 ぼんやりと目を開けると、見慣れた司の顔が超至近距離の目の前。
 最初の頃はつくしも一々驚いてビクついていたものだが、今はもう慣れたもので、どうやら自分が居間のソファでいつの間にか寝込んいたのだろうと憶測する。
 放置しておいてくれて全然かまわないのに、以前にもそういうことがあって、何度か司に抱いてベッドへと運ばれていた。
 …あたしったら。
 もちろんつくしもそんなことをされたいわけではないので、めったにないことだったが、特に今日は、慣れぬ犬の世話で眠ってしまいそうな予感があったのに、その犬と離れたくなくって、ついソファの上で犬を撫でながら和んでいて眠ってしまったのだろう。
 「目、…覚めたのか」
 囁きかけられる声音にハッキリと目が覚める。
 …起きなきゃよかった。
 しかし、いまさら寝たふりをしたところで空々しいことだろうと諦めた。
 案の定のしかかられて、首筋に唇を埋めた司の手が、体中を這い回る。
 少なくても寝ている時には、襲われない。
 真夜中に寝苦しくて目が覚めたら、寝ている司に抱きつかれた状態だったというのはよくあることだけれど、意外なことにこのケダモノのような男でも、寝入っているつくしを起こしてまで性欲処理に付き合わせることはなかった。
 だからといって、さっさと眠ってしまおうにも、ここのところ食事が終わればすぐに押しかけられるのだから、そう上手くいくはずもない。 
 「もうシャワー浴びてんのかよ?」
 「ぁ…ぅっ……わん、ちゃん、洗ったから…ゃあっ」
 ワンピースの布地の上から、キュッと胸の頂きを抓られて、つくしの体が仰け反った。




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