FC2ブログ

「愛してる、そばにいて」
第2章 罪②

愛してる、そばにいて0086

 ←愛してる、そばにいて0085 →愛してる、そばにいて0087
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ
【君を愛するために】オススメ作品!?
ランキングもよろ(・ω-人)
ブログランキング・にほんブログ村へ
いつも応援ありがとう♪
**************************************

 「…どうして」
 「飼ってやりてぇんだろ?」
 その通りだが、司からそんな申し出をされるとは、つくしは夢にも思っていなかったのだ。
 わずかな頬の赤みや緩んだ口元は、司の心情を表していたのだろうか。
 照れ臭そうだと思うのはつくしの思い過ごしだったのか。
 …まさかね。
 「どうすんだよ」
 「……いいの?」
 「だから、いいって言ってるだろ?好きにしろよ」
 肩を竦めて、司が踵を返す。
 校舎の方向ではなく、非常階段を下ってゆく方向へ。
 ジッと自分を見ている犬の横を通る時だけ、妙に端に寄ったのをなんとなく奇妙に思う。
 ボウッと司の背を見送り、催促されてしまった。
 「おい、早く連れて来い」
 「え、あ…うん」
 「やっぱ、そんな汚ねぇ犬、連れて帰るのやめとくか?」
 「や!やだ。連れく!!」
 慌てて犬を呼び寄せ、司の背中を追い掛ける。
 そんなつくしの気配に、司が小さく笑みを零した。




*****




 司に許可をもらって捨て犬を連れてきてしまったものの、すでにつくしは不安に苛まれて、半ば後悔してしまっていた。
 …大丈夫なのかな。
 かとって、他に貰い手の心当たりがあるわけでもない。
 幸いまだメイドの交代時間ではなかったために、つくしの自室にいたのは小川の方だったが、あれこれ事情を説明している間に、つくしを疎んじている坂城がやってきてしまった。
 「え?な、なんですか、このこ汚い犬はっ!?」
 まんまではあったけれど、司の場合以上にその言葉や表情には嫌悪感があって、一瞬つくしへと流した視線にはたしかな叱責があった。
 「…あの、すみません」
 「まさかとは思いますが、牧野様がお連れになったわけはありませんよね?」
 まさか、と言いつつ、そこには確信がある。
 もちろん、つくしの部屋に連れ込んでいるのだからそれ以外の誰ができることでもなかった。
 「…坂城さん」
 さすがに温厚な小川の叱咤が飛ぶ。
 けれど、なおも坂城の言葉が止まらない。
 「こんな汚い犬をこのお屋敷に連れてきてしまうなんて、なんて非常識なんですっ。これだから、外の方は困るんですよ」
 言葉尻がキツい。
 「すみません」
 だが、本来この屋敷とはなんの縁もゆかりもないつくしにしてみれば、立場が弱い。
 理不尽に詰る言動にも否やは言えなかった。
 また坂城だけではなく、リムジンの運転手や部屋に戻るまでの途中、出くわした執事やメイドたちの表情も似たようなもので、彼らにつくしの立場はどう理解されているのかは不明だが、間違っても歓迎されてなどいないことはわかっている。
 それなのに、さらにこの荘厳な屋敷とは不釣合いな野良犬を連れ込んだつくしへの視線は、戸惑いと困惑に満ちていた。
 もしかしたら、そこには被害妄想も含まれていたかもしれなかったけれど、どう考えても尋常な立場ではない彼女の扱いに困り、疎んじていると思うのは考え過ぎか。
 …どうしよう。
 許可を出した、当の司は屋敷に戻るや否や着替えてくるとかで姿を消してしまっていた。
 「お部屋の中が汚れてしまう前に、こんな野良犬さっさと…」
 「坂城さんっ!!」
 再び小川の叱責が飛んだ。 
 穏やかな小川の上げた厳しい声音にさすがに坂城もハッと言葉を切る。 
 すっかり俯いてしまっていたつくしも、驚いて顔をあげた。
 声音と同じく厳しい表情をした小川が、ハッキリとした口調で坂城を注意する。
 「坂城さん、出すぎていますよ」
 「……小川さん」
 「牧野様のことは、司坊ちゃんがくれぐれも粗相がないように、お世話してさし上げるようにとご指示を受けているはずです」
 思わぬ言葉に、つくしの方がキョトンとしてしまう。
 だが、小川の言葉は大げさではなかったようで、坂城が悔しそうに唇を噛み締め項垂れた。
 それでも…、
 「でも、こんな野良犬を連れ込むなんて…」
 「司坊ちゃんが許可をされたことです」
 「……坊ちゃんが?」
 呆然としている坂城を放置し、小さくなっているつくしとその足元に座っておとなしくしている犬へと小川が微笑んでくれる。
 「お見苦しいところをお見せしまして」
 「…いえ」
 「坂城は仕事熱心すぎるきらいがあるものですから、これまでも何かと牧野様には失礼をしてしまうことがあったかもしれませんが、どうか私に免じて許していただけないでしょうか」
 本当に申し訳なさそうな顔で頭を下げる小川に、つくしが慌てて顔を上げさせる。
 「いえ、わかってますから、そんなことなさらないでください」 
 坂城はたしかに仕事熱心なメイドだった。
 だからこそ、なかなか彼女の真意がどこにあるのか、つくしはわかりかねていたが、それでも彼女が自分を嫌っていることくらいはわかっていた。
 おそらく…小川も。
 それでも小川には何くれとなく良くしてもらっている。
 ましてや、小川に頭を下げてもらう筋合いでもない。
 小川の口利きのすべてに納得がいくわけではなかったが、今ここで好意的な小川をつくしも困らせたくはなかった。
 …小川さんはいつも私のことも庇ってくれる。
 彼女に出来る範囲でのことではあるが、それでもこの冷たい屋敷で唯一優しくしてくれる存在だ。
 「それより、そろそろ交代のお時間ですよね?お時間をとらせてしまってすみません」
 「……いえ」
 しかし、小川にしてもつくしに冷たく当たる坂城を残して、自分が退出することに気兼ねがあったのだろう。
 「よろしければ、わんちゃんを私に洗わせていただけませんか?」
 「あ、…そうですよね」
 いろいろ一杯一杯、萎縮するばかりで気が回っていなかった。
 つくしが連れてきた犬が汚いのは真実のことで、さすがにこの豪奢な室内にノミだらけ、フケだらけのままで置いておくわけにも行くまい。
 「いえ、その…浴室を使わせていただければ、自分で洗いますので」
 「浴室でっ!?」
 とんでもないといったように眉根を寄せる坂城はまだ何か言いたそうではあったが、小川の一べつを受けて、ぷいっと部屋の出口へと向かってしまう。
 きわめて失礼な態度ではあったけれど、正直、今のつくしにはむしろ好意的ではない坂城がいない方がありがたい。 
 しかし、坂城が部屋を出しな呟いた声が、つくしの耳へと届く。
 「犬がお嫌いな坊ちゃんが、あんな汚い犬を連れてくることをお許しになったなんて」 




web拍手 by FC2

関連記事


総もくじ 3kaku_s_L.png イベント
総もくじ 3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ 3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ 3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ 3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ 3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 倉庫
総もくじ  3kaku_s_L.png イベント
総もくじ  3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ  3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ  3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話+
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ  3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話^
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ  3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ストック
もくじ  3kaku_s_L.png R短編集
もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ R
もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛の品格 R
もくじ  3kaku_s_L.png 愛妻生活 R
  • 【愛してる、そばにいて0085】へ
  • 【愛してる、そばにいて0087】へ

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【愛してる、そばにいて0085】へ
  • 【愛してる、そばにいて0087】へ
にほんブログ村 小説ブログへ💛
スポンサーリンク