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「愛してる、そばにいて」
第2章 罪②

愛してる、そばにいて0085

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 ここのところ聞くことがなかった、どこか昏いものを含んだ陰惨な声音。 
 その目のあまりの冷たさに、つくしが思わず、一歩二歩と、後退る。
 「人がちょっと目を離すと、お前は何してるかわかんねぇな」
 …怖い。
 心と体に染み込まされた恐怖が、ホンの少し司の威圧を受けただけで湧き上がってくる。
 もはや意気地とか勇気とかそんな次元ではなかった。
 時には、友達のような気安い空気に、つくしも多少は気持ちを解されることもあったけれど、司のこうした性質がこの上なく恐しく安心できない。
 …また、気に入らないことをしたら、ひどいことをされる。
 けっして信頼したり、信用してはならない相手。
 わかってはいても、お人好しで間抜けなつくしはついそれを忘れて、警戒を怠ってしまう。
 「…牧野」
 真っ青な顔で司の顔を見上げたまま、怯えているつくしの様子に、司の顔が複雑に歪む。
 「こっちに…」
 「わんっ!」
 そんな緊張を破った、たった一つの鳴き声。
 つくしの怯えている様子に何を思ったのか、彼女の脇から飛び出してきた犬が、司とつくしの間に割り入って威嚇しだす。
 「…うううううううう」
 「な、なんだよ、こいつっ!」
 思わず仰け反る司へと向かって、犬がもう一度吠えた。
 「わんっ!」
 「だ、ダメだよ。わんちゃん、吠えちゃダメ」
 司の威圧に怯えて硬直していたつくしも、犬の鳴き声に、こんなところで吠えさせたらまずい今の状況にハッと我に返る。
 「しっ、し~っ、先生たちに見つかったら、大変」
 犬を半ば抱き抱えるようにして、背を撫で頭を撫で、なんとか犬を宥める。
 「…………牧野」
 ビクッ。
 誰何したわけではなかった。
 類がいると思って声音を荒げていた司だったが、つくしの背後に誰もいないことに気がつき、その一過性の激情もあっという間に霧散していた。
 ただ、思いもよらぬ存在―――みすぼらしい野良犬の登場に戸惑って、どういうことなのか経緯を訪ねようとつくしへと呼びかけたにすぎない。
 それだけのつもりだった。
 それなのに司の先ほどの威圧が、ここのところだいぶ宥められていたつくしの司への恐怖を呼び起こしてしまい、彼女の司を見る目が再び、あの傷つけられて怯えたものへと逆戻りしてしまっている。
 「牧野」
 「……ひっ」
 犬を宥めていたはずなのに、司が一歩前に踏み出しただけで、つくしは怖じけて犬の背に隠れるように犬ごと腰砕けに後退りし始めていた。
 「うううううううううう」
 犬が再び、司への威嚇を開始する。
 自分を威嚇する犬へは一べつをくれたのみで、司の視線はつくしだけを見つめ、だが、その視線にさえ怯えられていることを自覚したのか、わずかにつくしから視線を落としてそのままでゆっくりと語りかけてくる。
 意外な程に柔らかな声音。
 あえて心がけて、司がそんな声を出しているのはあきらかだ。
 「怖がるなよ。…何もしないから」
 「…………」
 「ただ…ちょっと、勘違いしただけだ」
 互いの息遣いが聞こえるのではないか。
 そんなことさえ思うような、緊迫を孕んだ数分。
 誰よりも勇敢で逞しかった少女が、怯えた小動物のように司を恐れて縮こまってしまっていた。
 司がもたらした暴力の結果。
 やがて、つくしも小さく息を逃して、視線を離すことできなかった司から視線を反らす。
 「…わんちゃん、大丈夫。いい子だから、大人しくして」
 いくらなんでも、犬に司を襲わせるわけにはいくまい。
 いっそ、それができたら爽快かもしれなかったが、そんなことをすれば殺されてしまうのは犬の方だ。
 つくしの声音に何かを感じているのか、それでも司への警戒心を解かないままに、つくしの命令に従って犬が威嚇を辞める。
 「その犬、どうした?」
 「……迷い犬みたい」
 「お前が世話してんのか?」
 「餌をあげてるだけだけど」
 とりあえず司が話しかければ、いつものように返答は返るようにはなっている。
 「ふ…ん、ずいぶん見窄らしい犬だな」
 「ふっ」
 「なんだよ?」
 思わず小さく噴き出したつくしに、司が首を傾げる。
 どちらかといえば鼻で笑った感じで、あまり良い感じの笑いではなかったけれど、それでもつくしの強張っていた表情がわずかに緩んだことに、司はホッとしていた。
 だがやはり、つくしの口からこぼれたのは、司への皮肉。
 「あんたなら言いそうだな、って思ったから」
 「…そうかよ」
 だが、それ以上、司も言うべき言葉が見つからない。
 しばらくの間、犬を撫でている彼女と司を警戒してジッと彼の動向を見守っている犬を眺めている司に、つくしが小さく話しかけてきた。
 「あのさ」
 「…ああ?」
 「この子のこと言う?」
 「誰に?」
 「…誰にって、先生とかに、かな」
 司にしてみれば思いもよらぬこと。
 「なんで、俺が一々センコーにチクんなきゃなんねぇんだよ」
 司の顔をジッと見て、つくしが大きな目を瞬かせた。
 その視線にいつものように司の顔が赤らんで、不機嫌に明後日の方向へと視線を反らす。
 「まあ、そうだよね。じゃあ、いいわ」
 半ばへたり込んで、階段に座り込んでいたつくしも、気をとりなおしたのか、ポンポンと制服のスカートの埃を払い、一つ犬の頭を撫でて立ち上がる。
 その行動を黙って見守っている司の、真横を何も声をかけることなく通り過ぎようとした。
 それを黙って見ている司でもない。
 通り過ぎざま、つくしの二の腕をグイッと掴む。
 「おい」
 「………なに?」
 面倒臭そうに答えるつくしの迷惑顔に、チッと舌打をして、それでもただ不機嫌なだけで怒らない。
 「あれ、どうすんだよ?」
 「あれって」
 「犬。まさか、お前、あの犬、ここでずっと飼い続けるつもりじゃねぇだろうな?」
 「………それは」
 つくしだとて、司に指摘されずともわかっていた。
 たとえ司に密告されずとも、ずっとこんな場所で犬を飼い続けることなどできるはずもない。
 これまでは運が良かっただけだ。
 早晩追い出されるか、悪くすれば保健所に連絡されてしまうだろう。
 …そんなのダメ。
 できるだけ早急に、飼い主を見つけてやる必要がある。
 「どうすんだ?」
 それでも司に縋るのは嫌だった。
 多少なり念頭になかったわけではなかったけれど、今はとにかくこの場から…司の傍を離れたい。
 「あんたには関係ない」
 「………うちに連れて来いよ」
 「え?」 
 「飼いたいんだろ?いかにもみすぼらしくて小汚ねぇ雑種だが、こんな犬の一匹や二匹、俺んとこで飼ってやってもかまわないぜ?」




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楽しみにしています。

こんにちは お茶子様
いつも素晴らしい作品をありがとう
ございます。
作品を書き続けるのは大変だと思いますが
私の一番の楽しみなのです。
更新されていない時、落ち込みます。
大量更新の時はテンションアゲアゲです。
よろしくお願い致します。

愛してるそばにいての司がつくしに
してしまった罪を回想している章ですが
司の不器用さが表れてて良いですね。
犯罪なのに、愛するが故の行動だから
悲惨に感じ無いのかな?
早く司とつくしの心からのラブラブが
読みたいです。


こ茶子さんがブログはもの凄く強いという感じはしますが、強い弱い関係なくそういうコメント送るべきではないですよね
多分甘えすぎなんですよね。どのようなコメントも受け止めていて、だからなんでもいいという。でもそれは違いますよね。

そもそもサイト紹介も凄い事だなあと思います。親しいネット友達という感じではないのかな?とブログ読んで感じました。そういう人ではない方からのサイト紹介でいい顔する管理人さんは少ないと思います。嫌味か、当て付けか、…遠回しにそういう趣向にして欲しいか。なんて考えちゃいます。多分そういう目的でコメントを送ったんでしょうね。

更新のコメント関しても、楽しみなのは分かるのですが私のために更新して!見たいなコメントには疲れるだろうな、と。自分の都合ばかり押し付けるのではなく、考えて更新コメントした方がいいですよね。

私自身もコメント気を付けないといけないと思いますが、他の人もそういう気持ちを常に持ちコメントして欲しいです。

こ茶子さん、コメントの削除も一つの手ですよ?

小説の完結まで頑張って下さいね!長々と失礼しました。

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いつも応援してますから!

きっと、心無い「言葉」に落ちていらっしゃっるんですよね。

お休みされてても、他サイトに投稿されてても、いつも応援してますよ!

ベリーズカフェでも魔法のiらんどでもエブリスタでも「こ茶子」さんを探しますから。

だって、おもしろいんだもの!

こ茶子さんの作品、大好きです。

こんな形でしか応援できませんが、永ーいお付きあいをお願いしますm(__)m
(嫌!って、言わないでくださいね。)
  • #8707 こ茶子様、大好き! 
  • URL 
  • 2016.02/21 23:57 
  •  ▲EntryTop 

こ茶子様、大好きです!!

こ茶子様
今までずっと毎日更新を続けてくださったり、イベントごとに大量更新をしてくださってありがとうございました。本当にこ茶子様の作品が大好きです。
また、気づかないうちに失礼な態度をとっていたのかもしれません。すみませんでした。そのことを謝りたくて、コメントさせて頂きます。
わかりやすくまとめることが苦手なので、長文になるかと思います。なので、最初にそれを謝っておきます。

私はツイッターをしていないので、更新がこのところされていないことに、なにかあったのかと心配と不安になってこちらのサイトに足を運んでいました。ですが、『こ茶子の日常的呟き』で記事を読ませてもらい、驚きでした。


私が花より男子の二次小説の世界に夢中になり、初めて読んだ作品が、こ茶子様が書かれているものでした。初めて読んだ時の衝撃は今でも覚えています。なにより、マンガやドラマ以外でも花より男子の世界が楽しめるのだという発見を与えてくれ、純粋にお話に興味を持ちました。そのことを教えてくれたこ茶子様には本当に心から感謝しています。

私は、まだ読み手側の礼儀や作者様に対してどうしたらいいのかが正直なところ良くわかっていません。だから、最初は拍手なども怖くてできなかったし、コメントなんて、恐れ多くてどう書いたらいいのかわからなくて、好きなのに、作者様に伝えるにはどうすればいいのかわかっていませんでした。ですから、知らず知らずのうちに私は失礼なことをしていたのかもしれません。毎日更新して下さることに慣れすぎて、それがどれほど大変なことなのかを正直、考えていなかったと思います。また、色々なサイト様で読む作品が増えるごとに、私の勝手な読みたい作品のイメージが出来ていました。それを作者様に押し付けていたこともあったと思います。他にもたくさん反省しないといけないことが有るなと思いました。

こ茶子様、今まで失礼な態度をしてしまい、すみませんでした。
また、これを機に他のサイト様にも気を付けて読もうと思います。何よりも、こ茶子様のように作者様あっての二次サイトですから。そのことに改めて気づかされました。気づかせてくれて、ありがとうございます。

こんな私ですが、これからもご縁が続いてほしいと思っています。だから、こ茶子様の他の小説にも足を運ばせてもらいたいと思っています。嫌がられるかもしれませんが、それでも私はこ茶子様の作品が大好きなんです。
最後に、こ茶子様が書かれる作品はどれもすべて私は大好きです。花より男子の作品と設定が変わっているといわれる方もいるかもしれないけれど、私はサイトが開かなくなるまで、読み続けるし、応援し続けます。

こ茶子様、だから、無理をせず、したいようにしてください。私は陰ながら応援しています。
長文でごめんなさい。
こ茶子様、大好きです!!今までたくさんの素敵なお話、ありがとうございます。これからもご縁が続くことを祈っています。

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