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「愛してる、そばにいて」
第2章 罪②

愛してる、そばにいて0084

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 「昨日はちゃんと食べたかなあ」
 ここに来るのも何度目になるだろうか。
 かつては、類に会うために通っていた非常階段。
 その前には、英徳学園という異世界に迷い込んでしまった自分の鬱屈を吐き出すために訪れていたところ。
 いずれの時も、つくしにとって、憩いと安らぎをもたらしてくれた特別な場所だった。




*****




 基本、毎日学校へは登校しているつくしだったけれど、昨日はどうも風邪っぽいのか、体が怠くてなかなかベッドから起きられなかった。
 …ちょっと、ここのところ体を甘やかしすぎてるのかもね。
 とにかく眠い。
 そして、極力そんな自分を見せないようにしていたのだが、たまたま何かの拍子にそんな様子を司に見咎められ、過剰に心配されて邸に押し込められてしまった。
 当然というべきか、べったり司が張り付いて、つくしにしてみれば返って落ち着かず気疲れした一日。
 具合が悪そうで休まされていたのだから、無茶や無体はされなかったけれど、嫌いな相手に四六時中付きまとわれては気が休まるはずもない。
 それでも、そうしたことに…司や彼の言動にもだいぶ慣れてはきたのかもしれなかった。
 …とりあえず、あいつが同じ部屋にいても無視できるようにはなったもんね。
 少し前だったら、ビクつきすぎて、それだけで気疲れしただろう。
 「おはよう!つくしちゃん」
 「あ、おはよう」
 後から教室に入ってきた和也に声をかけられ、つくしも笑顔で挨拶を返す。
 「昨日、お休みしたけど、どうしたの?」

 「…ん~、ちょっと怠かったかな」
 「怠かったって…え?もしかして、ズル休み?」
 「…似たようなものだったかも」
 「つくしちゃんたら」
 呆れたような和也の顔に、へへへと笑って、昨日からずっと心配していたことを口にする。
 「あのさ、和也君、…昨日」
 「なに?」
 周囲の目が気になって、ズバリと言うわけにもいかず、どうしたものかと言いあぐねる。
 「ああ…、ワンコ?」 
 「そ、それそれ」
 周辺を見回すが、特に誰も注目しているようではなかった。
 それはそうだろう。
 司と手繋ぎで登校してきた初日はともかくとして、一月近くたった今、その場に司がいなければ生徒たちの関心はつくしから反れて、騒ぎも沈静化していた。
 一つには、司がつくしによけいな虫が付くことを嫌がったこともある。
 もう一つは、つくし自身が忌避したからだ。
 あきらかにおもねりだとわかっているのに、たとえ女生徒たちからのわざとらしい好意であろうと、心の余裕がない今、つきあっていられる精神状態ではなかった。
 よけいな詮索をされたくないということもある。
 ここのところ、定期的…というか、ほとんど毎日のように司と性的交渉を持っているつくしは、知られたくないことがたくさんあって、身近に人を寄せるのが嫌だった。
 …キスマークは目立つところにはつけないでって言ってあるけど。
 わりにつくしの要求には応じる男だったが、それもある程度理性的な時のみの話で、ただでさえ血の気が多い男で肉食系の代表のような男だ。
 年齢的なものもあっただろうけれど、性的欲求も強く、興奮すると抑えが効かず、暴走することもしばしば。
 つくしが無抵抗なので、初体験やその次の時のように暴力的に犯されたり、意にそまぬことだということを除けば特にひどい目に合わされることはなかったが、つくし的にはかなり憂鬱な行為。
 見え見えでも、それを他人に指摘されたくなかった。
 ―――羨みからであっても。
 …みんな本当にあんなことしてるの?たとえ好きな人が相手でも、あんなことしたいなんて、とても信じられない。
 恥ずかしくて、痛くて、苦しいだけ。
 それとも好きな人とでは何かが変わるのだろうか。
 少なくても、つくしにはあえてしたいと思えるようなものではない。
 しかし、そうは言っても慣れとは恐ろしいもので、過度な恐怖を味合わされたり、虐待さえされなければ、つくしの嫌悪感もだいぶ薄れ我慢できる範囲に落ち着いていた。
 諦めと言い換えることもできたが、それでもつくしの心的には救いにはなってる。

 「…つくしちゃん?」
 ついとんでもない物思いに耽ってしまっていたようで、つくしがハッと我に返り、和也の不思議そうな目に出会って赤面する。
 …うう、和也くんの無垢な眼差しが痛いかも。
 「ごめん、ちょっとボウっとしちゃってた」
 「いいけど、大丈夫?また、ここのところあんまり顔色良くないよ?」
 「そうかなぁ。食欲は戻ったし、たまにちょっと胃がムカムカしたり、怠いこともあるけど、特に体調不良って感じじゃないんだけどなぁ。季節外れの5月病?やたらと眠いんだよねぇ」
 「つくしちゃんて、わりと寝る子だもんね」
 「…ははは、そうかなぁ」
 テレテレと笑う。
 「で、ワンコなんだけど」
 「うん」
 今一番聞きたいことだ。
 「昨日、つくしちゃんがお休みだったから、僕が様子を見に行ったんだけど、やっぱり僕じゃダメみたいで、出てきてくれなかったんだ」
 「…そっか」
 意外なことに、つくしにはよく懐いた犬だったが、野良犬の性かけっこう警戒心が強いようで、彼女以外の人間の前にはあまり姿を現さないらしい。
 もしかしたらつくしの他の生徒も目撃している者もいたのかもしれなかったけれど、非常階段でウロつくようなモノ好きな人間など、まさにつくしか和也…そして今はめっきり不登校になってしまった類くらいなものだ。
 いまのところ、特に問題になっているということはなかった。
 「一応、食べ物は置いておいたけど…」
 「うん、ありがと。後で様子を見に行ってみるね。一日、二日くらいは食べていなくても大丈夫だとは思うけど…」
 どうにも、犬の貰い手探しは今のところ難航していた。
 やはり成犬であるというところもネックなのだろう。
 「…頑張って、うちで飼ってくれるように頼んでみようか?」
 「いやいやいや…犬が苦手なのに、それは辛いでしょ。いざとなったら、頼むかもしれないけど、今のところ、学校側にも見つかっていないし、あたしがなんとか餌をやったりしてしのげてるから」
 それにしても長期間というわけにもいかないのはあきらかだ。
 …道明寺に相談してみる?
 こんなことで?
 一時期よりは、だいぶ囲われる以前の気安さは戻ってきていたけれど、つくしの中のわだかまりが消えたわけではなかった。
 できることなら、どんな些細なことでも司に借りを作りたくなかったし、司が真摯に相談に乗ってくれるとも思えない。
 …無視されるくらいならいいけど。
 おそらくそれが一番ありえそうではある。
 「…メイドさんたちにもあたってみようかなあ」
 「あ、先生だ」
 生徒たちの号令に、和也が席へと戻り、つくしも黒板へと向かう。
 …西門さんとか、美作さんにも相談してみる?




*****




 右見て、左見て。
 ここのところ、非常階段を訪れた時には必ず行う、つくしの習慣的予備動作。
 以前は類がいるかどうかを確認するための行為だったけれど、現在は当然、意味合いが異なる。
 人気がないことに安心して、ワンコを呼ぶ。
 「チッ、チッ、チッ。おいで、おいで~」
 「わん!」
 和也の時には姿を現さなかったという犬が、喜び勇んで非常階段を駆け上がってくる。
 …いた。
 一晩くらい物を食べなくても野良犬なのだ。
 ある程度はどうということはないだろうけれど、つくしを見て目をキラキラさせているその姿に愛しさがぐっと湧き上がり、急いで手の中のナフキンの中身を開いて差し出す。
 大人しくつくしの「よし」の合図を待って、はあはあ言いながら、つくしの手元を凝視している姿が、えも言われぬほど可愛い。 
 「お腹空いてたんだねぇ。昨日はごめんねぇ~。…はい、お待たせ。じゃあ、よ……」

 し、と言いかけ、
 「…なにやってんだ?お前」
 背後からよく聞き慣れた声音に、ビキーンと固まる。
 おそるおそる振り返れば、怪訝な顔の司が、階段を数段降りた位置で、つくしとその影に隠れた形の犬を見下ろしていた。
 「ど、道明寺っ」
 …しまった。
 「まさか、…類がいんのか?」
 司の顔が凶悪に歪んだ。




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