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「愛してる、そばにいて」
第2章 罪②

愛してる、そばにいて0077

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 洗面化粧台に手を置き、鏡を覗き込む。
 「…なによ、これ」
 もうショックなことなど何一つないと思っていた。
 司によって勝手につけられたネックレスの周辺を指先で辿る。
 まるで彼女の首を戒める首輪のように、赤黒い痣がその周囲を取り巻いていた。
 ―――キスマーク。
 そういうものなのだろうと、経験のないつくしでも昨日からの行為を思い起こせば、すぐに思いついた。
 好きなように弄ばれて、汚され尽くして、司に所有される程度の物同然の自分。 
 家畜ではないと言いながら、焼印がわりに押し付けられた指輪。
 首筋の鎖と痣を辿る。
 指輪以上に、明確な所有の証。
 そしてその首筋から、胸元、脇、見えるところ見えないところ、どこもかしこもキスマークでいっぱいだった。
 赤黒い醜い刻印がつくしの目に禍々しく焼き付き、息を苦しくさせる。
 指輪や首輪だけでなく、素肌に刻まれ…そして、その胎内奥深くまでもがすべてあの男のものであると暴かれ侵略されつくした。
 自分でもいまさら何がショックなのかわからない。
 「…ふっ、ふふ……ふふ」
 ただ…その穢らわしく刻み込まれた赤黒い痣が、つくしのひび割れた心をなお切り裂いて、笑いたくもないのにまたも笑いの発作に襲われかけ頭を抱えこむ。
 …なんて汚らしいの。
 男の体液に塗れさせられ、男の臭いに満ちて、醜い証を刻み込まれたカラダ。
 足の力が抜け落ちて、ズルズルとその場で崩れ落ちて、床へとしゃがみ込む。
 「ぅう………スン…………ぁ………スン」
 震える手で喉を抑えて、悲嘆に浸り込んだ。
 それでもやはりどこかが壊れかけているのに違いない。
 妙に明るい諦念と虚しさがある。
 …悲劇のヒロインかっつーの。
 だが、おそらく今のつくしを他人が例えるのなら、悲劇のヒロインでも十分にいけるだろうと冷静に思う部分と、あるいは幸運のシンデレラだと羨まれるのかもしれないと皮肉に思う思いと。
 どれくらい座り込んでいたのか。
 直接素肌に触れる床が冷たい。
 シンシンとした冷えが、傷ついた下腹部や酷使された関節をなおいっそう鈍く痛ませ、つくしの気分を惨めにさせた。
 …逃げちゃおうか。
 ふいに頭に思い浮かんだ衝動。
 …いまなら、道明寺も寝込んでる。
 寝息の深さからいって、かなり熟睡しているようで、まだしばらくは起きては来ないだろう。
 道明寺邸では逃げ出したくても、どこかしら監視の目があって逃げることができなかった。
 特につくしを監視していたわけでもなく、監禁されていたわけでもなかったが、実質的には監禁されているのと同じことだった。
 邸内には誰かしら必ず人がいたし、メイドたちは言うに及ばず、さまざまな役柄の使用人たちが屋敷中につめて、そのすべてが司の意のままに動くのだ。
 当然、つくしが勝手に屋敷を出ることなどできはしなかったし、今日…いやおそらく、昨日か、久しぶりに登校した学校へも司が同伴だった。
 そして、司と仲睦まじげに登校したつくしは注目の的で、ほとんど人の目から逃れることができず、さらに司を取り巻く生徒たちからの監視状態で、とてもではないがこっそりと学校を抜けることなど夢のまた夢。
 そしてなにより…、逃げてどこへ行くあてがあったというのか。
 家に帰ることは、もしかしたらできたかもしれない。
 そして、司の暴挙を訴え、甘い考えの両親たちを説き伏せることさえ可能だったとして、だが、それで?
 もちろん、つくしは司相手に自分の受けた非道の報復をすることなどできるとはとても思ってはいなかった。
 教師や学校関係者の態度、あるいは学校内に脈々と噂される数々の司に関する逸話が、それらがどれだけ無謀な試みであるかをつくしにもわからせてくれていたから。
 泣き寝入り。
 それが一番楽な方法だろう。
 たとえそれがどんなに屈辱的で、憤懣やるかたないことだとしても、ただでさえ頼りない両親が道明寺財閥を相手取り、なにかしらの報いを求めることなどできるはずもない。
 だがそんなことよりも、決定的につくしの絶望を深めたのは、やはり違反を犯した司に対した警察の対応だった。
 誰に対しても公正明大であるべきはずで、絶対的権威を持っているはずの警察官が、司におもねり、彼の違法行為をあっさりと見逃したのを目の当たりにしたのだ。
 …進のこともある。
 今のところ、司に直接弟のことで恫喝されてはいなかったけれど、英徳などとは関わりのない弟が、英徳の生徒に暴行されたなど、どう考えてもつくしと関わりがないとはとても思えなかった。
 「……あたし、どうしたらいいの?」
 逃げられるところがない。
 救いがない。
 司の奇妙な執着が薄れるのを待つか、司を唯一止められるはずの力を持つ彼の両親が現れてくれるの待つのが早いか…あるいは、つくし自身の心が粉々に砕けてこの苦しみさえも感じなくなることの方が早いのか。
 …いっそ、その方が楽だよね。
 何も感じない人形になれれば、それほど楽なことはないのに、もう自分の図太過ぎる感情は息を吹き返しかけている。
 それがたとえ哀しみであっても、だからこそ辛くて苦しかった。
 「…ハァ、シャワー浴びよう」
 たとえ表面的なものだけでも洗い流せれば。
 首筋を抑えていた手を離しかけて、触れた鎖の感触にカッと頭に血が上った。
 …こんなものっ。
 些細な八つ当たりに過ぎない。
 憤りのままに、首筋の鎖を掴んで、いっきに引きちぎる。
 ブチッ、シャラン。
 鎖が食い込む小さな痛みに、顔を顰めて、そのまま床に叩きつけ………かけ思い留まった。
 司に見つかった時のことを考えたのだ。
 …なんて、あたしは臆病なの。
 司自身に抗う勇気も失い、八つ当たりをブツけた物にさえ思うままに怒りをブツけられない。
 何度も床に放ろうとして、それが果たせず、すぐそばにあったダストボックスに投げ入れた。
 その勢いのままに、指にハマった指輪も抜き取ろとして、…結局、それができずに顔を覆ってしまう。
 …これだけはできない。
 寝物語に耳元で囁かれていた呪縛。
 『こっちも来週には出来上がるから、そしたら俺が付け替えてやる』
 そんな言葉がつくしの衝動を縛った。
 恐怖が、ただ恐怖が、心と体を蝕んで、あの男の意図通りに自分を家畜へと貶めてそのとおりにしてしまったのだ。
 ノロノロと体を起こして、立ち上がりかけて、ビクッとつくしは体を硬直させる。
 「え?…え、なに?」
 股間から何かが溢れて、伝い落ちる異様な感触に恐れ慄く。




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