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「愛してる、そばにいて」
第2章 罪②

愛してる、そばにいて0076

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 ベッドに二人横たわって、背後から抱きついてくる腕の温もりが重くて厭わしいと思うのに振り払えない。
 そんな気力もなかったし、もう今更だ。
 また『される』のかもしれないとは思ったが、別にそうなったらそうなったで、何がどう変わるというのか。
 しかし、流石に今の状態のつくしにこれ以上の負担をかけるつもりがないのか、あるいはそんな優しさなど持ち合わせた男のはずもないから、ある程度要求も満たされて満足したのだろう。
 腰と肩のところで抱きすくめて、首筋にチュ、チュッと頻繁に吸い付いてくるくらいで、それ以上先に進む気配はない。
 「……まだ慣れてないから、痛かったかもしんねぇけど、ヤってるうちに気持ちよくなってくるらしいからよ…。その、俺も、お前が初めてだったからさ」
 何が言いたいのか知らないけれど、目を瞑って一言も発しないつくしに、延々と何かを語りかけてくる。
 いいかげんうざったくて、煩いだけだが、何かを言って司と口をきく気力も意欲もなかった。
 「もしかして…その、お前はこういうのあんま、好きじゃねぇのかもしれねぇけど、…あ~なんていうか、お前は…その、俺のものになったわけだし。俺も、…お前以外とはしたりしねぇから…えっと」
 俺様男がしどろもどろだ。
 笑いたい気持ちなんて欠片もないのに、少しだけそれがおかしい気がした。
 「この年になったら、こういうことすんのも…あ~っ、ふ、普通のこと、だよな?」
 「…………」
 「お、俺は、そ、総二郎とか、あきらとかとは違ぇから…その、まだあんま上手くねぇ…かもしんねぇけど、えっと…優しく…あ~なるべく、するし、大事にすっから、チッ。自分で何言ってんだか、わけわかんねぇ」
 言葉に詰まっては、つくしの首筋に吸い付いて、ため息を繰り返している。
 「………おい、寝たのかよ」
 さすがに司も、ずっと無反応のつくしの状態が気に掛かりだしたらしい。
 それもそうだろう。
 ベッドに横たわってから、うんでもなくすんでもなく、つくしは一言も口をきかないのだ。
 つくしも眠っていたわけではなかったけれど、口をききたいなんて欠片とも思わなかったし、いまは無理強いされているわけではないようなのだから、別にそれでもかわまないだろう。
 しばらく、無言が続く。
 たぶん、司はつくしの反応を待っていたようではあった。
 何かを言いかけては黙り、また黙っては言いかけてはいたから。
 …寝よう。
 酷使された体が、どうやら眠気を呼んでくれたようだ。
 正直、眠る時くらいは解放して欲しい。
 けれどそれを欲求するために、司と口をきく労力を使うくらいなら、寝苦しいのを我慢した方がいい。
 嫌悪感はもはやつくしにとって慣れたものになりつつあった。
 人はどんなに嫌なものでも、やがては慣れることができる生き物なのだ。
 「あのな……」
 「……………」
 「お前はあんまり興味なさそうだったけど…、今日試着した服、本当にどれもよく似合ってた。スゲェ可愛くて、見惚れちまってたんだぜ、俺。それなのに、その…せっかく似合ってた服、クシャクシャにしちまって…あーその、なんだ」
 言いよどんで迷って、また言いかけて、結局は諦めることにしたらしい。
 「さっき着てた服はダメになっちまったけど、着替えは何着か、こっちにも運ばせておいたから、明日…好きなの選べよ。どれもお前に似合ってたやつだから、今度こそ、それ着て下のレストランで朝飯食おうぜ?」
 「………ふぅ」
 寝入る為の前動作的ため息。
 司の声に反応したわけでも、彼の言葉を心に留めたわけでもなかったが、黙り込んでまったく無視を込め込んでいたつくしからやっと出てきたリアクションに、司の声音にわずかに力が篭もり、腰を抱いていた手で彼女の頭や髪、背中をゆっくりと撫で始めた。
 「このネックレスも安物だなんて言っちまって…まあ、安物には違いねぇが、お前が初めて欲しそうにしてた物だから、…絶対欲しくなった。お前は、いらねぇなんて言ってたけど、本当は少しはいいなって思ったんだろ?俺は欲しいものは今までなんでも手に入れてきたから、手に入っても嬉しいとかあんま思わねぇんだよ。でも、お前にこれやること考えたら、なんかそれが妙に嬉しくて…本当は少しくらい笑ってくれたら…とかって。いや、いいんだけどよ。あー、なんだろうな。俺も自分でわかんねぇんだけど、お前が欲しいものをお前にやれるかもしれねぇって…さ」
 司の声を子守唄のように、眠る。
 たとえ嫌いな男の声がずっと耳元でしていても、この眠さの前にはそれもなんということもない。
 明日になれば…また、あらたな苦悩がそこにあるのだとしても、いまはただ眠りたかった。
 つくしが寝入ったのに気がついたのだろう。
 司がガサゴソと身動きをして、彼女の肩を抱いていた腕を動かして腕枕へと変えた。
 そして、髪を撫でていた手を布団の中に戻し、探り出してきた彼女の指の付け根…中指にハマった指輪を愛しそうに撫でて、何度もキスを繰り返す。
 「こっちも来週には出来上がるから、そしたら俺が付け替えてやる。…いや、中指のは中指ので、このまま付けておいてもいいな。新しい指輪も、きっとお前によく似合うぜ。お前が俺のものだって印。…もう誰にもお前を渡さねぇ、お前に見つめさせたりしない。お前は俺だけのもんだ。俺だけの…」




*****




 ふと目が覚めたのは、おそらく単なる偶然だった。
 時折、そんな時がある。
 何時だろうか。
 おそらくまだ真夜中、夜明けには間がある時間帯。
 気が付けば、寝入る前には絡みついていた不快な熱が、いつの間にか離れて自由になっていた。
 自由…今のつくしにはあまりに遠く儚い言葉。
 背後を伺えば、たしかに自分以外の寝息が聞こえて、やはり悪夢はいまだ続いていることを実感させられた。
 …目が覚めても悪夢の中だなんて、いったいどんなジョークよ。
 自嘲する。
 背後の狂った男を起こしてしまわないようにと、ソロソロと体を起こせば、ズキリと体の芯が痛んだ。
 それでも最初の時のように、身動き一つ取れないというほどもない。
 体のダメージから言えば、たぶんそれなりなのだろう。
 パサリと、体にかけられていたシーツが落ちて、貧弱な体が顕になった。
 白く細く…子供のように膨らみに乏しい自分の体。
 もともと肉体美だとは言えなかったかもしれなかったけれど、自分でもわかるほどに痩せて肋が見えて、ことさら自分の目にも醜く見える。
 …こんな体、抱いてて楽しいなんてね。
 どれだけ物好きなんだと、他人事のように司を嘲る。
 間接灯の灯りで互いの輪郭くらいは、容易に判別することができて、横で眠る司の顔貌さえもよく見えた。
 柔らかい橙色の光に照らされた司の顔立ちは、目を瞑っているといつもの鋭さや冷たさが消えて、不思議に柔らかく幼くさえ見える。
 息を吸って生きていることさえ信じられないくらいに、綺麗な顔立ち。
 こんな美しい男を、つくしはこれまで見たことがなかった。
 そして、これほどに冷酷で非道な人間も。
 憎しみが沸き起こってくると思っていた。
 けれど、何も感じない。
 憎しみも、哀しみも…恐怖さえも遠く、夢の中のようだ。
 …そうか、これはまだ悪夢の中だからだ。
 感情が凍えて、鈍い。
 行為の最中にはあれほど怖くて、哀しくて辛くて仕方がなかったのに、一眠りして起きてみれば、願った時ではなく今になって感情がひび割れ始めるなんて、自分は本当になんて要領が悪いんだと、おかしい気持ちになってそれがまたおかしくて仕方が無かった。

 「…喉、乾いたな」
 今度は声が出せた。
 それでも司を起こさないようにと、ゆっくりとベッドを離れる。
 真っ裸のままだったがいまさらだ。
 それでもベッドの足元側に畳んで置いてあったタオルケットの一枚を手に取り、バスタオルを巻く要領でグルグル巻に体に巻きつけ、洗面所を目指す。
 ホテルのスウィートルームに宿泊するなど初めての経験だったが、道明寺邸と似たような作りに、洗面所もどうせ寝室に隣接しているだろうとあたりをつければ、ドンピシャリですぐそばのドアがその洗面所へと続いていた。
 「歯磨きしたい」
 …顔も洗って。
 司に口の中やら顔中を舐め回された。 
 自分の汗や男の体液に塗れた自分の体が、ひどく生臭い気さえして気持ちが悪かった。
 洗面所のスイッチに手をかけ、パチリと電気を点灯する。
 「……っ」
 鏡に映った自分の姿に、目を見開いて棒立ちに立った。




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