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「愛してる、そばにいて」
第2章 罪①

愛してる、そばにいて0071

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 完全空調のリムジンから降り立った橋の上の空気は、海の水に冷やされて潮風も心地よく、昼間の暑さとは裏腹に過ごしやすく落ち着いていた。
 しかし司が提案している散歩道は、当然正規の遊歩道などではなく、高速道路の路側帯。
 幸い平日の夜の時間帯だからなのか、そう車通りは混雑しているわけではなかったけれど、その代わりに真横を通る車のスピードはかなり速くて恐怖を感じることもたびたび。
 …こいつマジでこんなところ、歩くつもりなの?
 「…坊ちゃん、危険ですよ」
 「これくらい平気だろ」
 とはいえ、つくしの顔色を見てあまり歓迎していないのがわかったのか、
 「ま、横を車がカッ飛ばしてて落ち着かないつーのなら、少しここで夜景を観ていくだけにすっか?リモを盾がわりに置いときゃあ、わざわざ突っ込んでくるような奴もいねぇだろ」
 「そんなこと言ったって、平気なの、そんなことして?ここって、普通は非常用の非難場所なんでしょ?」
 つくしの家に自家用車があったことがないので、詳しくは知らないけれど、高速道路の路側帯にしばらくとはいえ、非常事態でもないのにあえて車を駐車させて、夜景見物を楽しんだ話など聞いたことがない。
 「空いてんじゃん」
 「…………」
 「まあ、どうしても他の車がウロついてんのが気になるなら、こっち側の道路、一時通行止めにしてもいいけどよ」
 「冗談でしょ」
 肩を竦める司はどこまで本気なのか。
 運転手の方も、司が一度言いだしたら聞かないことを熟知しているのか、やや困惑した顔をしながらも、「お前は車に戻ってろよ」という指示に素直に従う。
 「ほれ、見ようぜ」
 「どうしてもって言うなら、下の階の遊歩道に移動すればいいんじゃないの?」
 「下は柵やら、上階の橋桁が邪魔で雰囲気ブチ壊しなんだよ」
 「………ハァ」
 ワガママも極まれりというべきか、ため息をつく。
 「ほれ、こっち来い。お前もいつまでもゴタゴタ言ってねぇで、あっち見てみろよ」
 肩を抱かれて、橋際ギリギリ、柵を手前に夜景煌くビル街へと向き直される。
 「やっぱ、いいじゃん」
 「……綺麗だけどさ」
 「だろ?」
 得意そうに笑っている司の横顔を、つくしはジッと仰ぎ見た。
 ニヤリと笑う顔は、子供のようだ。
 気紛れで残酷で、ワガママで自分勝手で、それらが許されるだけの力を持ったタチの悪い子供。
 …あたしの悪夢の根源。
 そんな彼女の視線にどう思ったのか、司はわずかに照れ臭そうに視線を泳がせると、キスの角度に顔を傾けつくしへと迫る。
 今度はつくしも、命令される前にそっと目を瞑った。
 目を瞑っていれば、見えるのは通り過ぎる車のヘッドライトの明かりの残像ばかりで、どうしても見てしまうものも、見たくないものもすべて見ないでいられるから。
 「……ん……」
 柔らかく押し当てられた唇が、何度も角度を変えては再び戻って、つくしの内側へと割り込もうとアプローチを繰り返す。
 堅く結ばれた唇の合わせ目をなぞるねっとりとした舌の感触。
 間近で吐かれる熱い吐息。
 彼女の肩を抱く汗ばんで熱い体温。
 それらすべてから心を閉ざし、体を強張らせて、ただ時間がすぎてゆくのを耐えて待つ。
 「チュッ…………ふ…ん。お前ってホント、何回してももの慣れねぇな女だな」
 強情なつくしにさすがの司も諦め、唇を離してボヤきを零した。
 「…………」
 「キスされたら、少しくらい口開けろよ。それくらいの気、回んねぇの?」
 「だって…キスなんてされたくないもん」
 溢れた本音。
 それだけことのを口に出すのに、途方もない勇気が必要だった。
 「お前…」
 声音に険を宿した司の勘気が怖くて、つくしは司の腕から逃れ路側帯を歩き出す。
 「おい、ちょっと待てよ」
 「…ゃっ………」
 だがもちろん、逃げられるわけもなく、またつくしも逃げられると思っていたわけではなかった。
 ただ、時々抑えきれなくなる。
 溢れ出す叫びを堪えて堪えて…けれど、我慢しきれなくなってしまうのだ。
 そうすることが後でどれだけの災厄を、自分に招き寄せる結果になってしまうかということをわかっていても、それでもどうしても、司を嫌だと思う気持ち、嫌いな男に手を握られたりキスをされたり、触れられる嫌悪に苦しくてしかたがなかった。
 「待てって!」
 カッカッカッカッと、足早に追いついてきた司の大きな手に手首を掴まれ、引き止められてしまった。
 …どうせ走って逃げたって、追いつかれる。
 猟犬は逃げる獲物を追い掛け、襲いかかる習性があるという。
 走れば飛びかかられる。
 本気にさせてしまう。
 そしておそらくそんなことをしてしまえば、これまで堪えてきたことがすべて水の泡になって、いつかの恐怖を再び味合わされることになるのだろう。
 無理やり振り向かさて仰ぎ見た司の顔は、抑えきれない不機嫌に歪んで、しかし予想に反して、いつかのような冷酷な目はしていなかった。
 「……チッ。そんな顔すんな」
 怯える彼女の顔をチラッとだけ見た司は、視線を足元に落とし、怒りを逃すようにもう一度だけ小さく息を吐き出した。
 「別に俺だって、些細なことで一々お前に何かしたり、手をあげたりするつもりなんかねぇよ」
 「道明寺」
 「逆らわれたらムカつくけど、な」
 震えるつくしの手を柔らかく握り、先に立って歩く司の手は強引なのに、彼の言葉通りそれ以上の無体をしようとしているわけではないようで、骨も砕けよとばかりに力任せに彼女に触れてきた男らしからぬ気遣いがあるように思えた。
 「だから、怯えんなよ」
 「………」
 「ま、怖がらせてんのは、俺の方なんだろうけど」




*****




 なんとなく手を繋いで橋の上を歩いた。
 たしかにブリッジの上階から見る東京の夜景は、特に綺麗で、非常識な行いではあっても、司が見たがったのもわからなくはなかった。
 「そろそろ運転手に、車こっちに持ってこさせるか」
 「…ちょっと歩いただけだし、Uターンしたらいいんじゃないの?」
 「アホくせ~、戻るなんてかったりぃことできるかよ」
 司の言い分はいかにも司らしい。
 つくしも彼との個人的な付き合いはそれほど長くはなかったけれど、5分の距離でも歩こうとしないことなど、彼の日常生活をここのところの短い期間でかなり把握していた。
 …人一倍いい体格しているくせに、宝の持ち腐れっていうか、体を甘やかしすぎだっつーの。
 それでいて、別段運動神経が鈍かったり、ひ弱なわけではなく緩んだ体型にもならないのだから、世の中というものは不公平にできている。
 通り過ぎた車の起こした風に髪を乱され、つくしは舞い上がる髪を抑えて、ふとその車へと視線を向けた。
 …あ、パトカー。
 サイレンを鳴らしていたわけではなかったから、単なる警邏だったのだろうが、ふいに自分たちが乗っていた車が高速道路の路肩で駐車していることが気にかかった。
 もちろん、故障等の非常事態のために設けられた場所であるのだから、駐車しているから即違反だとはいえないだろうが、駐車している目的が夜景観賞という非常識な理由からで、生真面目なつくしには疚しく感じられる。
 「…ねぇ」
 「あ?」
 一歩先を歩いている司が、つくしの呼びかけに視線を落として耳を傾けた。
 「今、パトカー行ったよね?」
 「そうか?」
 当の元凶の男の方は特には疚しさを感じていないらしい。
 「大丈夫なの?」
 「なにがだよ」
 「車。ああいうところで、路駐してたらお巡りさんに声をかけられたりしちゃうんじゃないの?」
 「どうだかな」
 答える返事は投げやりで、パトカーに対しての威迫も感じていないらしく、軽く肩を竦める程度で、司の態度はどこまでも平然としていた。
 車の主である司が平然としているものを、つくしもそれ以上気にしても仕方がないと口を噤む。
 が、遥か向こう、車を待たせたあたりで、そのパトカーが停まったのが見えた。
 「面倒臭ぇ」




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