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「愛してる、そばにいて」
第2章 罪①

愛してる、そばにいて0068

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 司の着る服になどまったく興味がなく、それどころか肉体的精神的疲労で、早く帰りたいくらいのつくしだったが、どうしても選べとゴリ押ししてくる司の意に応えてそれなりに数点を選んだ。
 とはいえ、ショップの店員が勧めてくるコーディネートを、後押ししただけのことで、つくしの好みなど欠片とも反映されていなかったけれど。
 「お前、ボンビー…いや、場馴れしてないつーわりには、センスいいんじゃん」
 上機嫌の司からはそんな評価もいただいた。
 「…そ?」
 「ああ、これ、すげぇ俺に似合ってんじゃね?」
 自画自賛もいいところだが、これ…と指し示された、今司が着ているつくしの選んだとされる衣類は、確かに司の日本人離れしたスタイルと美貌によく似合っている。
 外国人モデルでもなければ着こなせないような、派手と紙一重のオシャレなシャツと、シックなスラックスの対比が、彼の迫力のある美貌にマッチして、まさにファッション雑誌から抜け出したような佇まいだ。
 「……ホテルのレストランで食事するって言ってたけど、そんなんで平気なの?」
 「そんなんで…て、別にこれなら上にジャケット羽織れば平気。言うほど、今はどこもガチガチじゃねぇし」
 「へぇ、そうなんだ」
 「まあ、ビジネスでの接待とかでなら別だけど、たとえ三ツ星のレストランであっても、ジーンズだからダメとかあえて言われるわけじゃねぇよ」
 「え?そうなの?」
 「実際にジーンズで行くは別問題だけどな。レストラン側が明記しているのは、せいぜいジャケット着用、タイ着用つー注意書きくらいだな」
 「へぇ」
 さすがはお坊ちゃま、そうした知識や常識は自然に身についているのだろう。
 自慢しぃな男のくせに、珍しく得意げでもなく淡々と説明している。
 「ただセンスやマナーは客個人の常識に任されてるってだけで、それぞれに相応しい装いってものがないわけじゃない。それに、靴は見られる」
 「靴?」
 「日本でも昔から足元を見るっていう言葉があるらしいが、そういう店の奴らは客のセンスや靴を見て当人を値踏みしてくる」
 「…そうか。ちょっと意味合いは違うかもしれないけど、静さんも一番大事なのは靴だって言ってた」 
 「静が?」
 「…うん」
 「いつ?」
 司にはつくしが静とそんな話をする機会を持っていたのが不思議だったらしい。
 それはそうだろう。
 つくしと静の付き合いは、あくまでも類を介したもので、司はそこには介在していない。
 顔見知りではあるとは思っていたかもしれないけれど、司とつくし自体、基本個人的な付き合いなどほとんど皆無で、あくまでもイジメの加害者と被害者でしかなかったから、交友関係や互いの家庭の事情や日常生活など、個人的なことを知る機会がほとんどなかった。
 一緒に食事をしたり、雑談をしたり、ある意味グッと近づいたのは、皮肉なことに、こうしてつくしが司に半ば拘束された状態に捕らわれてからのことだったのだ。
 「お前が静とそんな話、するような付き合いあったかよ?」
 「付き合いってほどのことじゃないけど、以前にあんたのクルーザーに招待された時に、静さんがあたしにソワレを貸してくれたよね?その時にそんなこと教えてくれたり、ちょっと雑談したりしたの」
 「ふぅん。そういえば、この前の静の誕生日パーティにも、お前のこと呼びたいって、静が言ってたらしいからな」
 「え?それホント」
 寝耳に水だ。
 「らしいぜ。けど、お前、季節外れのインフルエンザだったし?」
 「………」
 くくくと忍び笑う司は、もちろんその『季節外れのインフルエンザ』の実際を知っていて笑っているのだ。
 盗人猛々しいとはこのことだろう。
 「ま、お前的にはかえって良かったんじゃねぇの?」
 「…どうしてよ」
 「天下の藤堂商事の社長令嬢のパーティだぜ?それこそドレスコードじゃねぇけど、お前、相応しい装いっつーのをして行けたのかよ」
 言われてみなくてもそのとおりで、実際に招待されてしまったら困惑したことだろう。
 けれど、それを司に嘲るように指摘されるのも腹立たしかった。
 だが…、
 「ま、今なら大丈夫じゃん」
 「…なんで?」
 司の手がつくしの頭へと伸びる。
 その動きに内心構えているつくしの髪を柔らかく撫でて、さっき乱されたままに絡んでいた髪を丁寧に解して整えてくれる。
 「俺がなんとでもしてやる。…どんなパーティでも、どんなところでも、お前がその場で一番輝いて羨まれる存在にしてやるよ」
 「…それって」
 つくしの震える声に、艶然と笑う男の顔は、美しく…それでいてどこか禍々しい。
 「お前が俺のものだってこと。俺のものを馬鹿にしたり、蔑んだりできる奴がいるわけねぇだろ?それどころか、誰もがお前を羨望して、憧れるようになるんだ。世界一、幸運な女って奴だな。そういうのってシンデレラ・ガールとか言うんだっけか?」
 甘く魅惑する笑みは、まるで悪魔のようだとつくしは思った。




*****




 洋服屋の次に連れて行かれたのは、ベタなことに宝石店。
 もちろんシャネルでもちょっとしたアクセサリーくらいは用意できたはずなのに、司がつくしに与えたかったのはそうしたものではなかったらしく、なぜかまたもガッツリ、店の従業員に接客させている。
 黒いベルベット地のアクセサリートレイに並べられた指輪は、一見して普通の高校生が持つような代物ではなく、どれもこれもがつくしの両親の一ヶ月の収入でも追いつかない価値のあるものだと伺い知れる。
 それ以上の金額帯については、つくしでは想像もつかない。
 「お嬢様の指は華奢でほっそりしてらっしゃいますから、こちらのような繊細な細工のリングがお似合いだと思いますわ」
 女性店員のおもねりを受けて、つくしの手と指し示された指輪を矯めつ眇めつ、司が首を傾げる。
 「…そうだな。こいつにはあんまりゴツイやつ付けさせても、かえって不釣り合いでダセェか。けど、石のクオリティにはこだわりたいよな」
 「もちろんでございますとも。こちらのデザインには…」
 あれだこれだと細かい説明を受けては、司もそれはあれだ、こうの方がいい等々細かい注文をつけている。
 こちらでも一応はつくしの反応も伺ってはいたものの、どれが欲しい等の自己主張のないつくしに、いつの間にか司が自分の意思を通してしまっている。
 …こいつ指輪なんて買うつもりなの?
 あまりに意味深なものに、不信ばかりではなく、なぜか底冷えするような怖れも蘇っている。
 司の両親の帰国を待って司におもねって逆らわないつくしだが、それとは別のところで、そうした思惑を待たずとも、そのうち司の方でつくしに飽きてくれるのではないかと期待もしていた。
 それが何をトチ狂ったのか、デートもどきを画策したり、まるでカノジョを扱うようにエスコートをしてみたり、しまいには物を買い与え、指輪のような高価なものまで大真面目に物色している。
 …なんなのよ、いったい、どういうつもりなの?
 物好きにしても度が過ぎていた。
 けれど、つくしはこんなことにも思い当たっている。
 つくしの近所の社宅には、昔、猫を可愛がっていた若い奥さんがいて、子供がいなかったせいもあるのだろう、まるで我が子のように可愛がっていたらしい。
 蝶や花よではないけれど、ペットには分不相応なものを買い与え、その奥さんとおしゃべり友達だったつくしの母は、よくその奥さんのペットへの執心について呆れて話していたものだ。
 『よほど可愛いがってんのねぇ。この間、聞いたんだけど、その猫ちゃんが身につけてた首輪なんて、どこだかのブランドショップの特注品なんですって。値段聞いて、あたし、目玉が飛び出しちゃったわよ』
 その他にも猫だというのに、服だのベッドだの、かなりな散財を繰り返していたようだ。 
 ところが、それだけ猫に執心していたというのに、奥さんが妊娠して事情がまるで変わってしまった。
 まるでつきものが落ちてしまったかのように、猫を溺愛していた奥さんの愛情はわが子へと移ってしまったらしい。
 当然といえば当然のこと。
 けれど、極端だったのはその後の話で、我が子が生まれても可愛がっているペットを飼い続ける家庭はいくらでもあっただろうに、その奥さんは赤ちゃんに猫は病気やその他の問題で良くはないからと、他人にあっさりとあげてしまったらしい。
 『そりゃあ、捨てるよりはいいかもしれないけどね。あれほど可愛がってたのに、あっさり他の人にあげちゃうなんてちょっと可哀想そうよね』
 そんなことを母が言っていたのを思い出したのだ。
 そして、母はこうも言っていた。
 『やっぱり、しょせん、ペットはペットってことなのかしらね。ど過ぎたことをする人って、結局は自分勝手なだけで、自分の気持ち一つで、生き物でも玩具みたいに、たとえ大切にしてた物でも気分一つであっさり捨てたり壊したりしちゃものなんでしょうね』
 と。




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