FC2ブログ

「愛してる、そばにいて」
第2章 罪①

愛してる、そばにいて0067

 ←愛してる、そばにいて0066 →愛してる、そばにいて0068
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ
【君を愛するために】オススメ作品!?
ランキングもよろ(・ω-人)
ブログランキング・にほんブログ村へ
いつも応援ありがとう♪
**************************************

 「降りろ」と言われて車を降りたのは、ごく一般的な女子高生であるつくしでも知っている高級ブランド店・シャネルだった。
 結局、つくしにはブランドショップで買い物をするような経験などなかったし、そうである以上好みなどないから、すべては司に任せた。
 …っていうか、こんなところでこいつに洋服なんて揃えてもらいたくないんですけど。
 借りは作りたくない。
 だが逆らうこともできないジレンマに、生真面目なつくしはとても楽しめなかった。
 貸切の店内で、あれやこれやと勧めてくる店員の攻撃に嫌気が差しながら、眼前に広げられた洋服やらドレスに目が眩む。
 スカート、シャツ、ワンピース、それらだけでも何十着あるんだという世界なのに、さらには靴やらバッグ、帽子までもが引き出され、つくし一人のために数人がかりでの接客だ。
 …すごい数なんですけど。
 しかもどれも高そうで、タグがないところがまた空恐ろしい。
 「それとこれと、それ。あと、それだな」
 つくしの買い物と銘打っておきながら、司がどんどん指示をだして、つくしに試着させてゆく。
 最初に店員に全身のサイズを採寸されただけで、どうしてこれだけ…と思うほどジャストフィットした洋服だけが差し出される。
 シャ―――ッ、と試着室のカーテンを空けては司の元へと引き出されて、一人ファッションショーよろしく次々と披露させられ、何度もそれを繰り返させられた。
 つくしだとて、年頃の女の子。
 綺麗な格好をさせてもらえれば、嬉しくないわけではなかったし、新しい洋服や小物を選ぶのだってわくわくする。
 しかし、今の彼女はまるで司の着せ替え人形と同じで、一応は好みを聞かれているにしても、自分の意思ではなく押し付けられる買い物は苦痛だった。
 …こんなものいらない。
 …こんなことしていたくない。
 「いいじゃん。お前はどうだ?」
 「…素敵だけど」
 「じゃ、それは決まり。そっちの色違いのやつも買うから入れといて」
 「かしこまりました」
 司の指示ににこやかな店員たちが愛想よく承諾する。
 信じられないことに、司の買い物は、つくしの常識とは180度違って、気に入ったものを色違いもセットで大人買い。
 「ああ、濃い色の奴いらねぇ。こいつは色白だから、ああいう淡い色合いのは似合ってて可愛いけど、そういう色の濃いやつは俺の好みじゃねぇし」
 つくしの着る服のはずなのに、好みの基準は司であるらしい。
 「今度はそっちのリボンついてるやつを、試着してこいよ」
 当然のように命令してくるが、いったい何着すればいいのか。
 いいかげんつくしも疲れて面倒臭くなっている。
 「…もういいよ。さっきから何着も買うって」
 「店ごと買ってもいいくらいだけど、それはそれで後でいらねぇやつ仕分けんのも面倒臭いだろ?」
 …ありえない。
 「だから、そんなに買ってもらっても着れないし…」
 「なんだよ、もう気に入ったやつねぇてこと?」
 「…うーん、まあ、そういうことにしておいてくれてもいいよ」
 俺様傲慢男のナルシストで、自分のことにしか興味のなさそうな男だったが、意外や意外、司はつくしの買い物にいやに熱心だった。
 いやいや付き合っているつくしより、よほど楽しそうだ。
 たいがいの男性は女の買い物などに興味がないらしいのに、司は喜々としてつくしを着せ替え人形にすることに腐心している。
 …こいつ、待ってるのって面倒臭くないのかな。
 けっこう試着にも時間がかかっているはずなのに、試着室から出るたびに、出くわすのは妙にキラキラした目で嬉しそうな司の顔なのだ。
 「なんだよ、変な言い方。ま、いっか。じゃ、今日のところはそれ着て帰るか。他のは屋敷に運んでおいて」
 と、店員に指示を出す。
 「…これ、着て帰るの?」
 「ああ、後でホテルでディナー行くし、さすがに制服のままだとカッコつかねぇだろ?」
 英徳の制服はブレザー着用だったし、音に聞こえた名門セレブ校の制服で世間でもかなり知られている。
 基本、どこの高級レストランでもドレスコードに反することはないから、そのままでの食事も可能なのだ。
 けれど、通学するのにも制服をほどんど着たことがない司だったから、制服のままの女を連れ歩くのは格好がつかないと顔を顰める。
 …見栄っ張りでバカみたい。
 仕方がないので、つくしも内心の嘲りを隠して従う。
 「靴とかバッグも、適当に服に合わせて買うのでいいか?」
 「…え?」
 「欲しいのとか好みのがあったら、好きなの選んでもいいけどさ?」
 「…特にないから、任せるよ」
 「ふぅん?女って買い物が好きだと思ってたけど、お前あんがい淡泊なのな」
 「そうかな」
 淡泊なのではない。
 司から与えられたいものなど何もないだけ。
 ショップのコーディネーターが用意した靴やバッグを身につけて、鏡に映ったつくしはそれでもどこか垢抜けて、我ながらいつもよりも5割増しに可愛く見える。
 そして司もまた、
 「可愛い」
 すぐ脇で呟かれた言葉に顔を上げれば、司が柔らかく微笑んで彼女を嬉しそうに見つめていた。
 熱い眼差しは、それが本心だと言っている。
 「すげぇ似合っててイかしてる」
 「…ありがとう」
 司に褒められても欠片も嬉しいとは思えなかったが、それでもそう言わなければならない空気に、つくしは搾り出すように礼を言う。
 けれど、そんな素っ気ない社交辞令でも満足だったのだろうか。
 「おう」
 司が破顔して、彼女の髪をぐしゃぐしゃっとかき混ぜた。
 「うわっ、お前すげぇ頭になっちまったぞ」
 爆発してしまった髪型をおかしいと笑われる。
 自分でやっておいて、ずいぶんな言いようだが、つくしも慣れたものだ。
 「…そう思うんだったら、無闇やたらとあたしの髪に触らないでよ」
 「やだね」
 「あ、そう」
 言うと思っていたから、それで別にどうということもなく手櫛で整える。
 「俺は自分がやりたいことは我慢しねぇし、お前に触りたきゃいくらでも触る」
 「そうでしょうね」
 つくしの返事も投げやりだ。
 「じゃ、今度はお前が選べよ。俺の全身全部、お前の好みで揃えてやる。お前の好きにさせてやるからさ、お前もすぐに俺に、ほ、惚れちまうんじゃねぇの?」
 「………」
 ニヤニヤと笑う司の言葉に、つくしは彼の顔をジッと見上げる。
 その視線に、司がキョドって顔を赤らめ、ソワソワと盛んに照れては憎まれ口を叩く。
 「なんだよ、もう俺に惚れちまったのか?そんなでっけぇ目で、マジマジ上目遣いで見惚れてんじゃねぇよ」
 「無理だから」
 「あ?」
 …あたしがあんたに惚れるわけがない。
 「男の人の洋服なんてわからないもん。だから、自分で選んでよ」




web拍手 by FC2

関連記事


総もくじ 3kaku_s_L.png イベント
総もくじ 3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ 3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ 3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ 3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ 3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 倉庫
総もくじ  3kaku_s_L.png イベント
総もくじ  3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ  3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ  3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話+
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ  3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話^
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ  3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ストック
もくじ  3kaku_s_L.png R短編集
もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ R
もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛の品格 R
もくじ  3kaku_s_L.png 愛妻生活 R
  • 【愛してる、そばにいて0066】へ
  • 【愛してる、そばにいて0068】へ

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【愛してる、そばにいて0066】へ
  • 【愛してる、そばにいて0068】へ
にほんブログ村 小説ブログへ💛
スポンサーリンク