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「愛してる、そばにいて」
第2章 罪①

愛してる、そばにいて0065

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 「飽きたぁ?」
 司のワガママに総二郎が眉根を寄せ、あきらが怪訝に司を見返す。
 そんな彼らを放置して、司はポカンと口を空けて自分を見上げているつくしの手首を掴んで、さっさと席を立った。
 「…ちょっ」
 「ツマンネー話してるくらいだから、もう食事も終わったろ?」
 抗議しようとしているつくしの言葉さえも遮ってしまう。
 「おいおい、司。お前もまだ半分しか食い終わってねぇんだろ?急ぐことねぇじゃん」
 「ここの飯もたいがいマンネリで飽きた」
 「…お前な」
 「この前も飽きたとか言って、シェフ変えさせたのはお前だろうよ」
 「別にいいだろ?他の奴らだって、同じもん食ってるより、新しいもん食いてぇよなぁ?」
 『なぁ』という司の呼びかけに、周囲のイエスマンたちが意気込んで同意する。
 「はいっ!道明寺さん」
 「道明寺さんのおかげで、いつも新鮮な味を楽しめてありがたいです!」
 「ありがとうございます!!」
 等々。
 「…だってよ?」
 あからさまなおもねりだとわかっていて、司が皮肉に笑い、肩を竦めている親友たちへと手を振ってつくしを連れ歩き出した。
 「…あたし、まだ話をしたかったのに」
 ボヤくつくしを、司がチラリと見やる。
 その目は昏い怒りを宿して、冷たく底光りしていたというのに、俯いて溜息をつく、つくしは気が付けないでいた。
 …どうして、あたしまでこいつの気紛れに付き合わされなきゃなんないのよ。
 口にすることはできないが、不満が心を占める。
 どこかに行きたいのなら勝手に一人で行けばいいし、やりたいことがあるなら自分だけでやれと思う。
 一々嫌がっているつくしまで付き合わせる司の気がしれなかった。
 …まさか、こいつ、あたしが逆らわないからって、自分のやることなすことあたしが歓迎してるとか勘違いしてるんじゃないでしょうね?
 「…かよ」
 「え?」
 理不尽な扱いに一人憤慨しながら、言えない鬱憤で物思いに耽っていたつくしだったので、司が話しかけていることにすぐには気が付けなかった。
 当然、何を言われたのかも。
 「えっと、ごめん。ちょっと聞き逃しちゃった」
 「フケようぜ」
 「は?」
 「さっきも言ったろ?朝、約束した買い物させてやるから、このまま店、行くぞ」
 まるでつくしが望んだようなことを言っているが、実際はそうじゃない。
 自分で勝手に予定して、つくしを振り回しているだけ。
 それなのに、どうしてこの男はいつもこんなに恩着せがましいのだろう。
 しかも、午後の授業を出ることを一度許可したはずなのに、その約束を破って、またもワガママ全開で、自分の我を通そうとする司の俺様具合が本当に嫌だ。
 何をされても、どんなことを言われても、司の一挙一動すべてにつくしは嫌悪を感じる。
 もともと嫌っていた男だったが、今ではつくしにとって同じ空気を吸っていることさえ、司は不快で苦痛な相手と成り果てていた。
 それでも、決定的なところで司に逆らえないのだ。
 一度味合わされた被虐への恐怖は、つくしの魂のレベルまで深く刻み込まれて、もう一度そんな目に合わされると思うだけで、体の芯から怯えて、今度こそ正気を保てるとは思えなかった。
 「5時限目、受けさせてくれるって言ったよね?」 
 「気が変わった」
 「…そんな」
 「しつけぇな。そんなに心配なら、家庭教師の一人や二人、つけてやるって言ったじゃねぇか。いつまでもグダグダ言うな、イラつくから」
 「…………」
 そう言われてしまえば、もうつくしは何も言えない。
 けれど、カフェテリアを出る時に持ってきたナフキンを握り締め、せめてもと、機転を利かせる。
 「わかった。お買い物…いこ」
 「それでいい」
 つくしが司の意思に従ったことで、司もわずかに機嫌を直す。
 「あ…でも、あの、さ」
 「あ?」
 眉根を寄せられてしまう前にと、つくしは一気に言い切った。
 「ちょっとだけトイレに寄っていきたいから、あんたは先に行って待ってくれない?」
 「……トイレ?」
 「う、うん」
 司が唇を尖らせ、つくしを見下ろす。
 ジロジロと彼女を見つめる視線が、何かを探ろうとしているようで居心地が悪い。
 …あたしには疚しいことなんてないんだから。
 今のところのつくしは、まだ司に逆らうつもりはなかった。
 「ま…しょうがねぇな。エントランスのとこに車呼んで待ってっから」
 「うん」
 「あんまり俺様を待たせんなよ」
 「……わかってる」
 …時間がない。
 しかし焦る気持ちとは裏腹に、思案を気取られないよう離された手をゆっくりと引き戻す。
 踵を返そうとして…だが、再びその手を掴み直されてしまった。
 そして抗う間もなく、引き寄せられる。
 「な、なに?」
 驚いて見上げた司の顔が、近づいていた。
 目を見開き凝視する彼女の唇へと、柔らかな唇が落とされる。
 ちゅっ。
 そんな軽やかなリップ音とともに奪われたキス。
 伏せられた司の瞼が青く透けていた。
 長い睫毛の一本一本までが、それだけの至近距離からだと容易に観察できた。
 「……なんだよ、目、くらい瞑れ」
 間近でジッと凝視されていたのでは、さすがの司も居心地が悪かったのか、そう注意されて、眉根を寄せながらもつくしは素直に指示に従った。




*****




 サアアアア―――ッ。
 手をセンサーから離すたびに水の流れが止まってしまう。
 こんな時を想定しているわけではなかっただろうから、それも仕方がないとはいえ、盛大に顔を洗いたい時には不便なものだ。
 片手でゴシゴシと唇を洗いながら、溜息をつく。
 かなり頑張ったせいで、鏡に映ったつくしの顔の口周りはすっかり赤くなっていまっていた。
 …これ、まずいかな。
 ちょっと心配だ。
 「うがいは…ま、手酌でいいかな」
 吹きかけられた吐息に危うく嘔吐してしまうところだった。
 別に口臭があったわけではない。
 むしろ、豚の腸詰など食べさせられてしまった自分自身の口臭の方キツかったかもしれない。
 けれど、司に張りたい見栄などなかったし、かえって口臭プンプンの息でも吐きかけてやりたいところだった。
 「あ、やば。待たせるとあいつ迎えにきちゃうかも」
 そういうところはマメというか、ストーカーのような男だ。
 待たせるなと言われたからには、待たせるのはまずい。
 幸い舌まで入れるような濃厚なキスはしかけられなかったから、歯磨きの必要はなさそうだ。
 「…もしかして、今度から携帯用の歯磨き持参の必要ありかな」
 キスされる前ではなく、キスされた後を考える。
 そして、キスの先、男の欲望の行き着く先を考えると身震いするほどの嫌悪と恐怖が蘇って叫びだしてしまいそうだ。
 だが今はまだ、司の両親の帰宅を心の支えに耐えなければならない。
 つくしは、鏡の向こうの虚ろな目をした哀れな少女を励ます。
 …まだ、大丈夫。もう少しだけ頑張れるから。
  「さ、急いで行ってきちゃわなきゃ」
 そうでなければ、手に持ったナフキンの中身の意味がなくなってしまう。
 つくしは小さく息を吐いて、洗面室を後にした。




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