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「愛してる、そばにいて」
第2章 罪①

愛してる、そばにいて0059

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 乱暴された記憶が蘇って、全身を硬直させたつくしはあまりの恐怖で声が出せなかった。
 体重を乗せられてしまえば、どんなに抵抗しても男の力には抗えないことは既に肌身に染み込まされているのだ。
 いつの間にか背中の下に下敷きにされて両腕を抑え込まれ、身動きが取れなくされてしまっていた。
 妙な方向へと捻られてしまった肩が軋んで痛んだ。
 けれど、たとえそんな風に抑え込まれていなくても、恐怖がつくしの体を縛って、思うように暴れることなどとてもできなかったに違いない。
 怯えて喉を引き攣らせ、コクコクと唾を飲み込むつくしの首筋に埋まった男の唇が、チュルチュルと音を立てて濡れた痕を残し、胸へと下がってゆくのを、力なく嗚咽を溢して見守るしか今のつくしにできることは何もなかった。
 「ぅっ……ぁ………ぁあぅっ」 
 「泣くな…泣くんじゃねぇよ」
 「っ!?」
 「なんだよ、てめぇ、うぜぇな、一々怯えんじゃねぇっ!!」
 つくしの首筋から顔を上げた司が、まるで子供がダダを捏ねるように、癇癪を起こし出す。
 ドンッとつくしの顔の横に、力任せに拳を落として、ただでさえ怖がっている彼女を脅かした。
 「ひっ」
 「…俺は、ただ…体調はどうかって聞いただけじゃんかよ。それだけなのに、ビクビクした顔しやがって、ムカつくんだよっ」
 これ以上司を怒らせるのが怖くて、つくしは必死で口元を抑えて泣くのを堪えた。
 けれど、どうしても嗚咽を我慢できない。
 …怖いのに。
 怖くてしょうがないから。
 「ヒッ、ヒッ…ご、ごめん…なさい。ごめんなさい。うぁ…う…うう」
 もう顔中涙でぐちゃぐちゃで、止めたくても止まらない涙に、また涙が溢れた。
 「クソッ!」
 つくしの体を投げ出した司が何に腹を立てているのか、枕や近場で手に触れるものを片っ端から床へと投げて、物に当たり出す。
 ガッシャッ―――ン!
 ガンッ。
 ガッ。
 ガラガラガラッ、ドッシャ――ンッ。
 ベッドに突っ伏したつくしが今できることは、震える体を胎児のように丸めてただ耐えるだけ。
 両耳に手をあて、目を瞑って、嵐が過ぎ去るのをジッと待った。
 少しでも再び司の注意を引いてしまえば、次に壊されてしまうのはつくしなのだから。
 「はぁはぁはぁはぁっ!ああぁ~イラつく。けったくそ悪ぃ!!」
 ガシャン!
 何かを蹴倒して司が出て行った気配に、つくしは強張らせていた体を一気に脱力させた。




*****




 ゴトゴトゴト。
 ワゴンを運び入れる音に、ふと意識が浮き上がって目が覚めた。
 悪夢ばかり見ていた気がする。
 浅い眠りはいまだつくしの頭をぼんやりとさせ、怠い体をなお重いものに感じさせた。
 シャッ―――。
 ベッドサイドのカーテンが引かれて、一気に明るい日差しが入り込んで、眩しさにつくしは目を細めた。
 ベッドサイドには、昼勤の小川が柔らかく微笑んで佇んでいる。
 「おはようございます」
 「…あ、おはようございます」
 ゴソゴソと体の向きを変えて、慌てて起き上がった。
 小川はそんなつくしの体を支えて、起き上がるのを介助してくれる。
 
 「お体のお加減はいかがですか?」
 「…あ~、たぶん、大丈夫…だと思います」
 自分でもよくわからない。
 フラフラとするのが、体調不良によるものか空腹によるものなのかわからなかった。
 が…。
 ぐううううう~。
 「あら」
 「…………」
 大きく鳴った腹の音に、赤面してしまう。
 もちろん小川はそれを笑ったりはしなかったけれど、乙女心的にはかなり恥ずかしい。
 「昨夜もお食事、召し上がらなかったそうですね?」
 昼勤を終える時、何も口にしようとしないつくしを小川は心配してくれていた。
 せめて水分はと、大きなポットにお茶を用意してくれていたのだが…そこでハッと周囲を見回す。
 「あ、…片付け」 
 たしか昨夜、激昂した司が暴れまわってかなり派手に物を壊していたはずだった。
 それなのに、部屋はすでに綺麗に片付けられて、その暴挙の跡など微塵も残してはいなかった。
 「今朝はお食事召し上がってくださいますね?」
 「…あ、はい。お願いします」
 「良かった。お若いとは言え、病み上がりでいらっしゃるのに、ちゃんと食事をされないのでは回復も遅くなってしまいますものね」
 優しい言葉かけが心に染み入る。
 昨日はその優しささえもが心に届かず、ただ鬱陶しいと拒絶して、親切な彼女を邪険にしてしまっていたのだ。
 「あの、すみません」
 「え」
 「…その、いろいろと」
 感謝と謝罪を上手く言えないつくしを察して受け取り、小川が微笑んでくれる。
 けれど、すぐに伏せられた眼差しに、彼女の屈託や疚しさが含まれていた。
 …何も感じてないわけじゃない。
 けれど、見て見ぬフリをするしかない場合もあるのだ。
 つくしがクラスメートの樹本の受難を見て見ぬフリをしたように、真木子が自分を庇ったつくしを避けざる得なかったのと同じように。
 「私こそ、お力になれなくて」
 「…いえ」
 監禁されているわけではないのだから、小川を恨むべきではない。
 「椿様が…」
 「え?」
 「いえ…司様のご家族は今海外にいらっしゃいますが、帰ってらっしゃる時もあるのですよ。あるいは、わたくし共ではどうにもできないことでも、諌めることのできる方もいらっしゃるのです」
 「…………」 
 小川の言葉の意味は。 
 真意を探って、つくしが小川の顔をジッと見返す。
 「さあ、お食事をしてしまいましょうね。腹が減っては戦ができぬと、昔から言いますでしょ?居間の方にお仕度しましたから」
 「…はい」
 促されて、つくしも素直に従い、小川の後に続く。
 …道明寺の家族は今いないだけ。
 「ああ、そうか。そうなんだ」
 つくしは突然開けた希望に、小さく微笑んだ。




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