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 「はい、これとこれ。あと、これ、持っててくださいね」
 ホイホイと渡される荷物を持って、桜子の後を歩く和也の顔は諦めの境地だ。
 ここまで極端なことも珍しいが、和也の経験上、基本買い物好きな女とはこんなもので、男の苦痛やら都合など一顧だにしてくれない。
 「…あ、青池さん、すぐそこのコーナーに休憩所がありますから、よかったら一服してらしたらどうですか?」
 それでも細やかな気遣いを見せてくれる桜子は憎めない。
 …この子って、ただワガママなだけじゃないんだよね。
 高校生の時にも何度か思った感慨。
 気紛れで可愛いことを鼻にかけて、男を振り回す小悪魔。
 そんな一面とは裏腹な、優しさや気配りの細やかさ。
 それを計算でやる時もあることは知っていたけれど、本当に好いている相手に対する献身は本物だった。
 本当はわかっている。
 桜子を推している母親の考察が買いかぶりなんかじゃなくって、桜子の真髄を見抜いて彼女の美点を見込んでいるのだと。
 母の言うとおり、自分のようなぼんやりとした男には、彼女のような女性が似合いなのかもしれない、そんなことを思うこともある。
 …でも、僕はともかく、三条さんの方がそもそも僕のことなんてお呼びじゃないよね。
 「青池さん?」
 「へ?」
 「へじゃありませんよ。さんざん私のお買いものに付き合わされて、足が棒だってさっきまでブツクサ言ってませんでしたっけ?」
 「気遣ってくれるくらいなら、今日はもう解放してくれたり……」
 「するわけがないでしょ」
 サクッ。
 「前回のデートをドタキャンした穴埋めに、バックでも帽子でも、服でも好きなものを買ってくれるって約束したの、もう忘れたんですか?」
 「……好きなもの買うなんて、僕が言ったんじゃなくって、三条さんが強引にゴリ押ししたんじゃないかぁ」
 ぼやく口調がすでに完全に負けている。
 キッと睨まれただけで、口ごもる時点ですでに和也の完敗は確定だった。
 「経緯はどうあれ、一度承諾したものを取り消そうなんて、男らしくないんじゃありませんか?」
 「…取り消したりはしないけどさ。なんで女の人ってそんなにガメついの?三条さんなら、バックだって帽子だって、服だって、僕が買えるくらいなもの自分でも買えるよね?」
 「何言ってるんです。私が買えるか買えないかが重要なんじゃなくって、男の人にプレゼントされるってところが大事なんですよ」
 「……ハァ、なるほど、了解」
 どうせ何を言ったところで、和也が桜子に口で勝てた試しがないのだ。
 言い募るだけ、よけいにドツボにハマるだけ。
 「仰せのとおり、僕はこれからの英気を養う為にちょっと休憩してくるよ」
 「ええ、そうしてください。右側の方は喫煙可でヤニ臭いですから、左奥側の方にした方がいいですよ?」
 和也が喫煙者ではないことへの忠告。
 仕事柄ストレスを喫煙で誤魔化す者もいまだになくはなく、接する機会もあるが、喫煙しない者にとっての受動喫煙はかなり辛いものがある。
 「…日本でもだいぶ禁煙が進んでるって聞いてたんだけどな」
 「大抵の公共施設は禁煙化が進んでますよ。でも、どうしても完全にというわけには、なかなか行かないものですからねぇ」
 肩を竦める桜子に、和也が苦笑する。
 「仕方ないかぁ。…じゃ、僕はちょっと休んでくるから、こっちもひと段落したら携帯に連絡して?」
 「…わかりました」
 頷く桜子は、すでに次のターゲットに目星をつけているらしい。
 和也を見送るのにも気はそぞろだったが、ニッコリ笑って見送るその猫は相変わらず見事なものだと和也は感心した。




*****




 「…お買いにならないんですか?」
 見るともなく見ていた時計から視線を移すと、桜子が隣に並んで一緒に覗き込む。
 「そっちとそっち、…どちらがお好みなんですか?」
 ゴツイ意匠のそれらはなかなかの高級品だが、今の和也には手の届かない価格帯ではなかった。
 しかし、その無骨なデザインは、どちらかといえば優男の和也が身に付けると妙に浮いてしまってよく似合うとは言い難く、またいかにも成金じみて浅ましい気もする。
 「…ん、どっちも僕にはちょっと分不相応かな」
 「そうですか?」
 「こういうのってさ、手足も長い…そうだな、道明寺みたいなタイプの男が身につけてると似合うだろうけど、僕みたいなタイプにはちょっと滑稽だとか思わない?」
 「青池さんでもそんなこと思ったりするんですか?」
 「三条さん、君って猫被ってるわりに僕には、なにげに失礼だよね」
 とりあえず和也の苦情は見事にスルー。
 「高校生の時の青池さんて、かなり悪趣味なセンスを平気でひけらかして、平然としていましたよね?」
 「…まあ、それはね」
 黒歴史とまでは言わないが、たしかにいかにも田舎者の自分を卑下したりすることはなかった。
 ただ海外に出て、それなりにセンスを磨いた。
 趣味は趣味として、周囲に合わせられるようにはなったと思う。
 それでもどうしても譲れないところは譲らない。
 あえて固辞したいほどではないのだったら、それほどの執着ではないのだろうと、諦めてしまえるだけで、たぶん本質は今でもそれほど変わっていないのだろう。
 …でも、なんだかちょっとね。
 自分に似合わないセンスの品に、惹かれる自分のコンプレックスを和也は自覚していた。
 …道明寺に憧れてるとか、そんなんじゃないけど。
 それでもつくしが惚れてる男に、某かのこだわりを抱かずにはいられない自分をわかっている。
 「まあ、時計ならフランスのアパルトマンにもけっこう置いてあるしね。無理して買いたいほどでもないよ」
 「…あと半月ほどで、帰国されるんでしたっけ?」
 「うん、こっちでの交渉も幸い上手くいったし、元々3ヶ月の予定での出張だったから」
 その後のことは、互いに特に話し合ってはいなかった。
 見合いだったのだから、双方の親族が望んでいる行き着くはずは、本来なら結婚だろう。
 しかし、最初のスタンスからして、双方の親族の希望とは真逆の方向を見てきた二人の中で、その選択肢は論外だった。
 …あと半月だけ。
 そのことが、意外な程に胸に響いて、桜子の気持ちを暗澹とさせる。
 「三条さん、買い物終わった?」
 「…ええ」
 「じゃあ、そろそろご飯いかない?さすがに、君もお腹が空いたんじゃない?」
 「何が君も…ですか、ご自分が空いたんでしょ?」
 「うん」
 あっさりと頷かれ、毒気もなにもあったものじゃないと、仕方なく和也の腹を満たすことに同意する。
 「なに、食べようか?」
 すでに和也の頭は時計から離れて、今日の夕食への思案へと移ってしまったらしい。
 が……、
 「ちょっと、先に出ていてくださいますか?」
 「なに?」
 首を傾げる和也に、桜子が可愛らしく小首を傾げる。
 「…お化粧室にちょっと」
 「ええ~。ちゃんと2,3枚、普通の人より厚いツラの皮が…うっ」
 ピンヒールに踏まれた足が痛い。
 もしかしたら、穴が空いてしまったのではないかというほどの衝撃と激痛に、和也が床に懐いて蹲る。
 「す、凄い痛かったんですけど」
 「人一倍足の皮が厚そうな成金のくせに、何人並みに痛がってるんですか。余計な与太をフいていないで、さっさと行ってくださいな」





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