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「愛してる、そばにいて」
第2章 罪①

愛してる、そばにいて0052

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 「ぅ……ん」
 喉の渇きに、ぼんやりと目を開いたつくしのすぐそばで、優しい声が気遣わしそうに声をかけてくる。
 「ああ、よかった。目が覚められたんですね」
 つくしが無意識に声の方向に顔を向けると、見覚えのない女が、声音と同じように心配そうに彼女を見つめていた。
 「…ぁ、の…ど」
 返事を返したいのに、喉が乾いて上手くしゃべれない。
 掠れて小さな囁きが溢れるばかり。
 けれど、つくしの拙く喘ぐ声だけで、女はつくしの要望を理解してくれたようだ。
 「お水ですか?」
 問われて、小さく頷く。
 ニッコリと愛想よく笑った女が、すぐに頷き枕元へと歩み寄る。
 コポコポと小さな水音がして、気遣わしげな顔で、優しくつくしの体を抱き起こしてくれた。
 手を添えられ、介助されて水を口に含む。
 思っていた以上に体が水分を欲していたのか、一口口に含んだ途端、貪るように飲み干していた。
 勢い込みすぎたのだろう、その水が気管の方に入って咽せ込んでしまう。
 「ゲホッ、ゴホッゴホゴホッ」
 「まあ、大変」
 コップを取り上げられて、女が背中を優しく摩ってくれた。
 ひとしきり咳き込んで、どれくらいの時間がたったのか、一息ついたつくしに、もう一度女が水を進めてくれる。
 「もう一杯、お飲みになりますか?」
 少し考えて、頷く。
 「…少しだけ」
 「はい、かしこまりました」
 渡された水を、今度は噎せ返らないようにと慎重に飲み干し、大きく息を吐き出した。
 すると、つくしにもやっと自分の状況に気を回す余裕ができて、ゆっくりと周囲を見回す。
 …ここって。
 何度見ても、驚くほどに豪奢な内装は、つくしが馴染み親しんだ場所でないことを、容易に知らしめる。 
 もちろん…記憶はしっかりと残っていた。
 ここ数日間なのか、それとも1日2日のことなのかはわからないが、どうやら次々に襲ってきた衝撃につくしの精神よりも肉体が先に参ってしまったらしい。
 重苦しい体調が、司から受けた暴行ではなくて熱によるものだと冷静に判断する。
 …夢じゃない。
 悪夢だと思えればどれだけ気が楽だろうと、それが現実に起きた出来事だと、今のつくしはハッキリと自覚していた。
 「…あの、すみません」
 「はい?」
 「ここ、どこですか?」
 「道明寺家のお屋敷ですよ」
 女の答えはよどみがない。
 ここに連れてこられているつくしの事情を知っているのか、知らないのか。
 …あたしを拉致することも、平気できちゃうお家柄だもんね。
 金持ち坊ちゃんのワガママでは片付かないような命令も、いとも容易く周囲の大人が加担する。
 つくしを甲斐甲斐しく世話してくれているこの女は、おそらく道明寺邸に仕えるメイドだろうと、すでにつくしも見当をつけていた。
 そして、ここが道明寺邸である以上、今はこの場にいない司もどこかにいるのだ。
 それを思うと、意気地もなく恐怖に震えてしまいそうだが、いまは怯えている場合じゃない。
 「…あたしを家に返してください」
 「それは…」 
 困った顔のメイドの表情が、彼女に懇願する無益つくしに悟らせる。
 けれど、だからといって、こんな異常な状態を唯々諾々と受け入れられるはずもない。
 案外あっさりと解放される可能性もなくはなかったが、あの司の尋常ではない態度を思えば安穏と解放を待てるはずもなかった。
 「お願いします!あたし、好きでここに来たんじゃありません。ご存知か知りませんけど、あ、あたし、道明寺に…ここのお宅の息子に無理矢理に連れてこられたんですっ」
 「…………申し訳ございません。私の判断ではなんとも」
 返ってきた答えは予想通り、あるいはあまりに平静な態度につくしが逆上する。
 「じゃあ、勝手に帰ります!」
 「あ、ちょっとっ」
 驚く女を押しのけ、ベッドから降りる。
 親切に介抱してくれたメイドには悪いが、その彼女に気を使う心の余裕が今のつくしにはなかった。
 ベッドを降りたとたん、クラりと眩暈がして、衰弱した身体がフラつく。
 それでも。どうやら暴行によるダメージはむしろ落ち着いているようだ。
 布団から出たつくしは、肌触りの良いパジャマ姿で、もちろん自分で着替えた覚えなどないから、誰かによって無断で着替えさせられたらしいことに、気がつく。
 しかし、今はそんなことにこだわっている場合じゃない。
 フツフツと迫る焦燥感に、つくしは追い立てられていた。
 …早くしないと。
 「せ、制服を返してください」 
 「ダメです。まだ、ベッドを出られてはいけません!」
 ヨロめくつくしの体を支えて、オロオロと女が狼狽えた。
 「帰る!か、家族が心配してるもの!帰るの、あたしは帰るッ!!!」
 一度叫んでしまえば、もう我慢することが難しかった。
 まるで子供のように帰ると繰り返し、押し止めようとするメイドと小競り合いになってしまう。
 「だ、誰かっ」
 「いやああっ!」
 つくしの勢いに抑止しきれなくなったメイドが、声を上げかけたのに触発されて、つくしが悲鳴を上げた。
 …は、早くしないと、あいつが来る。道明寺が来てしまうっ。
 「……なに、騒いでんだよ」
 パニックに沸騰しかけていたつくしの頭が、いっきに冷えて凍りついた。
 振り返るのが怖い。
 低い男の声が誰のものかなんて、わからないはずもない。
 それなのに、振り返るのが怖かった。
 振り返った瞬間に、恐怖が再び蘇って襲いかかってくる強迫観念に囚われて…。
 「坊ちゃん」
 「…なに、どうした?」
 「はい、お嬢様がお帰りになるとおっしゃられて…」
 「ふぅん」
 抵抗をやめたつくしの腕を離して、メイドが一歩下がる。
 だが、つくしはもうその場から逃げ出すこともできず、身動きすることもできなかった。
 「やっと目を覚ましたかと思ったら、病み上がりにしちゃあ、ずいぶんと元気になったんじゃね?昨日まで高熱だして、うんうん唸ってたようには見えねぇじゃん」
 迫る恐怖の気配に耐え切れず、つくしがゆっくりと振り返る。
 「………ど、道明寺」
 ドアに片手をかけて、入口に立っていたのは、つくしの予想に違わぬ男の姿だった。
 「よう、お前、自分が何日寝込んでたか、知ってるか?」




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