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一日遅れのハッピー・バースディ…15話完+α

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 上目遣いで睨みあげてくる、自分瓜二つの可愛げのない顔さえ憎たらしくなってくる。
 「睨んでねぇよ」
 「睨んでる」
 「睨んでねぇったら、睨んでねぇんだっ」
 子供と同じ土俵で大真面目に言い争っている司の稚気に、さすがに目を瞬かせていた雅也がぷっと小さく噴き出して、ケラケラと笑いだした。
 「仲がいいですね」
 「良くなんかないよっ!」
 「おう、羨ましいか」
 とっさに反駁した凌に対し、堂々と肯定した司の自信に満ちた物言いが、意地っ張りな息子の顔を赤面させる。
 「お前、俺と仲、良くねぇのか?」
 「う~」
 「意地張りやがると、当分一緒に風呂入ってやらねぇぞ」
 「えっ!」
 「ふふふ、凌、お父さんと一緒にお風呂入ってるんだ?」
 雅也に聞かれて、どうしようかと迷って、結局司の言葉が効いたらしい。
 素直に頷いて俯いた愛らしい顔には拒絶や悔しさではなく、照ればかりがあって、言葉とは裏腹に、凌が突然に現れた父親を受け入れていることが、雅也にも容易に知れる。
 「…だって、うちって広すぎて一人だと寂しいんだもん」
 以前は『お父さんの家』と言っていた凌の言葉が、『うち』に変わっているのに一抹の寂しさを感じつつ、それでも雅也は可愛い一人息子の幸せな日常の気配を嬉しく思い、優しく頷く。
 「そうだろうね。ボクでもきっと、一人でそんなに広いお風呂に入るのはイヤだろうからわかるよ」
 「でしょ?パパもボクたちと一緒に入れればいいのに」
 「なっ!」
 …アホ言うなっ!なんで、俺が他の男と一緒に風呂入らなきゃなんねぇんだよっ。
 司の心の声が雅也には丸聞こえ。
 しかも雅也は同性愛者だ。
 司にしてみれば、天地が逆さまになってもありえないことだろう。
 しかし、当の息子はまるで察してくれない。
 さすが鈍感女の一人息子だ。
 青ざめている父親と、苦笑しているもう一人の父親の微妙な空気を読めないようだ。
 「……ダメかな。温泉だってみんなで一緒に入ったりするじゃん」
 「ははは、まあ、それはさすがにね」
 「広いだけじゃなくって、なんでもあるんだよ?」
 絶句する司もさすがに、即座に拒絶するほど鬼にはなれなかった。
 
 「お父さん…も」
 チラッと司に視線をやり、照れ臭そうに笑う幼い顔には屈託がない。
 「けっこう優しいよ」
 「そうか、良かった」
 「…………」 
 司は司で照れて、口を挟めない。
 喉の渇きを覚えて、司はシャンパンクーラーに突っ込んで冷やしてあるミネラルウォーターのペットボトルに手を伸ばした。
 いやなわけではないが、こうした会話にはまだまだ慣れずに気恥ずかしい。
 「休みの日はボクとも遊んでくれるし、…お母さんには凄く優しい」
 「へえ?凌にはけっこうで、ママ…お母さんには凄くなんだ?」
 「ん~」
 半ばわかっていて、あえて質問を重ねる雅也はもちろん確信犯だ。
 そうと知らず言葉を選んで、凌が首を傾げる。
 「お母さんがボクのことばかりカマってると、すぐに拗ねてヤキモチ妬くからさ」
 「ばっ、よけいなこと聞かれるままにペラペラ喋んなっ、このクソガキッ!!」
 飲んでいた水を噴き出しかけ、慌てて司が制止する。
 もう雅也の笑いは止まらない。
 悪態をつかれた凌は当然ムッとして、よけいに喋りだす。
 「すぐ、こんな感じ。ボクに悪い言葉を使うとお母さんにタコ殴りにされるくせに、ぜんぜん懲りないの。今日だって、本当は、お母さんが来週のお父さんの誕生日には仕事を休んでくれないのに、今日のパパと享の結婚式には出席したから、ムクれてご機嫌ナナメだったんだよ」
 もう司のメンツは丸潰れだ。
 ぴんぽ~ん。
 再び鳴ったインターフォンの音に、「あ、は~い」と、本日の出迎え役の凌が慌てて玄関へと走る。
 「…………」
 「…………」
 「…………」
 ニヤニヤ笑いの雅也は何も言わない。
 ただ青筋を浮かべて、ぴくぴくとこめかみを引き攣らせている司を面白そうに見守っていた。
 「…なんか、言いたいことあんだろ?あんた」
 「いえ、別に。ただ、…あなたが凌を可愛がってるんだな、と感じられてとてもホッとしてる。ただ、それだけです」
 ニヤニヤ笑いを引っ込め、柔らかく微笑む雅也の顔はそれまでの人の悪さを消し去り、ただ本当にそう思っていることだけを伝えてきていた。
 司も居住まいを正す。
 「これを言うのは、俺としては不本意なんだが…」
 「はい?」
 一つ大きく息を吸い、吐くと、司は頭を下げた。
 雅也の目が大きく見開かれる。
 「世話になった。つくしと凌を俺が守ってやることのできなかった10年間、あんたが守ってくれたことに大して、感謝する。ありがとう」
 いかにも俺様傲慢男の司が下げた頭。
 半ば呆然とする心持ちで、司の頭頂部を見つめていた雅也だったが、実はまったく関係ないことを考えていた。
 ここまで完璧な美貌の男にはアホ毛の一つもないんだな、とか、そんな妙な感慨がふいに思い浮かんで、シリアスな場面だというのに、つい笑い出してしまいそうになっていたのである。
 もちろん、そんなことをしてしまえば、せっかく殊勝な顔で礼を述べてくれている司の顔を潰すことになるだろうし、これほど怖しい男の勘気を被ることが、どれほど自分と自分の事務所の未来に暗雲を立ち込めさせることになるかは明らかだ。
 …ま、これだけネジネジしてたら、アホ毛も巻いててわからないか。
 「…なんか、言ったか?」
 怪訝な顔に見返されて、厚顔な自信のある雅也さえも、ドキッと心臓が音を立てた。
 が、顔は何食わぬ笑顔のまま。
 礼をいったものの、やはり司は雅也が気に入らないらしい。
 眉間のシワが、さっき言っていたようにいかにも不本意だと言っていた。
 …可愛いかもな。
 「おい」
 「いえ、突然のことに驚いていただけですよ。…ただ、あなたにはお礼を言われてしまいましたが、ボクにとってもこの10年間、彼女や凌と過ごせたことは望外の幸せでしたから、あなたに礼を言われるまでもないことだと思っています」
 「………」
 「ただまあ、好きな時に二人に逢えなくなってしまったのは少しだけ寂しいとは思いますけどね」
 それでも二人が幸せならそれでいい。
 近くで見守ることも、そして遠くでも見守ることも雅也にとっては同じことだった。
 距離に関係なく二人を愛していることと同様に、どんな関係へとカタチを変えても、雅也にとって二人が大切な宝物であることには変わりはなかったから。
 「……来ればいい」
 「はい?」
 「好きな時に屋敷に来て会えよ」





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