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「それでも貴方を愛しているから…全97話完+α」
それでも貴方を愛しているから番外編(短編)

PURA VIDA~碧い鳥によせて~後編

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 これ…司の手はすでにつくしのバスローブの紐に掛かってしまっている。
 それでも彼女の許可が降りないうちは、けっしてそれ以上進まない。
 たとえつくしが嫌だと言っても、「そうか」と言ってあっさり諦めるのだろう。
 けれど…。
 「まったく、寒いからどうのとか、自分が言ってたくせに」
 仕方ないといった風情のつくしの暗黙の了解に、司が嬉々としてバスローブの紐を解き、まるでプレゼントの包装を解くような楽しそうな顔で、手早くつくしのバスローブを剥いでしまう。
 「なんだよ、また下着着てんのかよ」
 「…そりゃあね」
 普通はバスタオルを兼ねているのだから、素っ裸が基本だろうけれど、この二人の家ではこういう事態はデフォルトなので、つくし的にはまだまだ敷居が高い。
 それでも…、
 「さっきは裸で抱き合って寝てたじゃん」
 「……ううう」
 昨日できたからって今日もできるとは限らないのが、つくしという女だった。
 「その…ごめ」
 「ま、いっか。じゃあ、俺も下、脱がねぇ方がいい?」
 迷って、小さく頷く。
 「ごめんね」
 「だからいちいち謝るなって。それよりいつも思うけど、お前ってすげぇスベスベで手触りいいな。温っけぇし?」
 謝りかけたつくしの言葉を遮って、司が柔らかく抱きしめ彼女の頭を頬ずりする。
 「寒くねぇ?」
 「平気。あんたって体温高いから、あったかい」
 触れる司の素肌の感触が心地よい。
 ぬくぬくと温かかった。
 司の手は、けっして胸や尻などには触れない。
 たとえ下着越しであろうと、つくしの心の準備ができるまでは決して司は急がなかった。
 …もう夫婦になって2年あまり近く過ぎているのに。
 コスタリカに居を構えた年月が、つくしと司の夫婦生活の期間とイコールだ。
 いまだ肉体的な意味で結ばれていない原因を抱えた自分に、自己嫌悪をつくしが感じることは少なくなかったけれど、その度に司がより大きな愛情と優しさで包み込んでくれていた。
 司の履いているパジャマのズボン越しに、つくしの素足に当たる彼の欲望の証が切ない。
 司もあえて隠しはしない。
 こうして抱き合って寝ている以上、どうしても隠すことなど出来はしないし、司も正常な成人男子であるのだ。
 むしろ愛してる女を抱いて寝て、平然としている方が不自然だろう。
 …ごめんね、司。
 そう思うたびに、ぎゅっと抱きしめてくれている腕の力が強められ、優しいキスをいくつも頭に落とされる。
 「なあ」
 「…うん?」
 もう寝ているのかと思った司に声をかけられる。
 「…………」
 「…………」
 「…………」
 沈黙。
 つくしが呼びかけられたのは気のせいかと思い出した頃。
 「…もうすぐ、俺の誕生日だろ?」
 「そうだね」
 2週間後に迫った今年の司の誕生日は、二人で3日間の休暇をとって、コスタリカの観光をすることにしていた。
 NYや東京時代に比べ、確かに司の仕事自体は楽になっていたし、出張や転勤がないだけに休暇も取りやすかった。
 だがつくし自身、慣れぬ環境下に観光どころではなかったのだ。
 まずは環境や生活に慣れること。
 スペイン語を自由に使いこなすこと。
 そして仕事を覚えることに汲々として、それどころではなかった。
 だが、コスタリカに移住して、まがりなりにとも2年あまり。
 この地にも馴染み、やっと周囲を見回す余裕が出来た。
 もっとコスタリカを知りたい。
 美しい場所を見て、美味しいものを食べ、愛する人と二人でたくさんの楽しみを共有したい。
 まずそのはじめとして、二人は『ケツァール』を見に行くことにしていた。
 ケツァール…火の鳥のモデルと言われるその鳥は、エメラルドグリーンとルビーのような真紅の体色を持つ美しい鳥で、光の反射によっては、エメラルドグリーンがターコイズブルーにも見えるらしい。
 また、約1メートルもの長さの飾り尾羽を持ち(※雄のみ)、黄・緑・赤・黒・白と様々な色彩を帯びているという。
 メキシコ南部からパナマに生息しているその鳥は、かつてアステカの農耕神・ケツァルコアトルの使いと言われ、『ケツァールを見た者は幸せになれる』という言い伝えがあった。
 司とつくしが居住する、このコスタリカの首都サン・ホセからほど近いところにも生息しているはずなのだが、あいにく二人はまだその幸福の碧い鳥を見たことがなかったのだ。
 「…で」
 「あ、ごめん、聞いてなかった」
 司の声でわれに返って、物思いに耽ってボウッとしていたことを謝罪する。
 「まだ、なにも言ってないって」
 「はは…そうだった?」
 「…まあ、そのだな」
 「うん」
 珍しく司の歯切れが悪い。
 司の裸の胸に手を置き、ジッと司の言葉を彼の肌越しに聞いて待っていたつくしが、怪訝に司の顔を仰ぎ見る。
 司の顔は間接灯のほの明るい薄闇の中でさえわかるほどに赤かった。
 それでいて、つくしと視線を合わせられず、疚しげだった。
 自信に満ち溢れて、傲慢なくらいな彼に何度こんな顔をさせてしまっただろう。
 つくしゆえに、たくさんの苦しみを負わせてしまった。
 …これがあんたへの罰だよ。あたしにしたことに対するあんたの罰。
 かつて、そう言った自分の言葉が間違っていたとは思わない。
 それでも、彼を愛しているがゆえの憐憫と、彼への罪悪感に苛まれてしまう。
 人間としての当たり前の欲望。
 司だって女性を抱きたいだろう。
 まだ若く気性も激しい。
 人一倍精力的な彼の本性が、どこかでそうした気質の一端を発散させる必要があることは、つくしにだって容易に推測できる。
 昔は暴力だった。
 気に入らないことがあれば、今でも物にあたることはある。
 けれど、昔のように度が過ぎた暴れ方はしなくなった。
 つくしへの愛。
 しかし、愛情だけではどうにもならないのが、生き物としての本能であり自然なのだ。
 だからといって、司を他の女に奪われることなんて考えたくもない。
 共有するなんて赦せるはずもなく、そして司もそうした類の男ではなかった。
 「…司?」
 「風呂…」 
 「え?」
 もしかして、…もう少し関係を進めたい。
 もうそろそろ妻としての彼女を抱きたい、そんな風に言われるのかもしれないと、多少なり覚悟を決めていたつくしだったが、意外な司の言葉に怪訝に眉根を寄せる。
 「一緒に…風呂に入りたい」
 「………」 
 「俺の24才の誕生日プレゼント、それじゃあ、…ダメか?」
 「司」
 そんな些細なこと。
 望めばどんなことも叶うとかつて嘯いていた男が願うには、あまりに囁かなお願い。
 「…………」
 「…………」
 「いや、悪い。無理すんなよ」
 あまりに長い沈黙に、しびれを切らしたのは司の方だった。
 つくしが何も言っていないのに勝手に納得して、自己完結しようとしている。
 「俺はいつまでも待つし、こうして一緒に眠れるだけで俺は幸せだし、嬉しい。それは本当だからな、疑うなよ?」
 「……うん」
 わかってる。
 彼の気持ちは誰よりも、つくしがわかっていた。
 愛してる。
 この世の誰よりも愛してる。
 …触れたい。
 あんたに触れたい。
 そして、愛して愛されていることを実感して、一つに溶け合ってしまえれば。
 けれど、今はまだ。
 どうしても震える手足を抑えることのできない自分を、許してくれる司の優しさに甘えたままで…。
 司の逞しい胸から伸び上がって、横を向いてしまっている彼の耳の下にキスを落とす。
 「……ッ!?」
 赤かった司の顔がさらに赤味を増したが、きっとつくしの顔も彼に負けず、茹で蛸のように真っ赤なのは間違いなかった。
 …まったく、10代の子供じゃないっていうのに。
 しかも夫婦だというのに、自分たちのウブさはどうだろうと、一人ツッコミするのさえも楽しくて、幸せで。
 「あたしが、先に入るからね?」
 「…………」
 司の目がつくしの目を捉えて、不審そうにパタパタと何度も長い睫毛のついた瞼を瞬かせた。
 それが子供みたいで可愛い。
 つくしはそんな彼が愛しかった。
 胸に満ちる温もり。
 ただ一人、愛する男だけが与えてくれる幸福。
 「あたしが湯船に入ってから、入ってきて?」
 「…おまっ」
 「そのさ…あたしも、進みたいって思ってるから。いつか、ええっと、あんたと…本当の夫婦になりたいって、…本当に、そう思ってるの」
 「………バカ。本当の夫婦ってなんだよ」
 優しく笑ってくれる司の顔を今度は見れないのはつくしで、そんな彼女の頬を優しく撫でて、再び胸に戻してくれる。
 「俺たちは夫婦だ」
 「………」
 「カタチなんて関係ねぇ。俺たちの気持ちが、愛情が、俺たちを本物の夫婦にしてくれた。…これから先もずっとだ」

PURA VIDAままさん

 ドクンドクンと高鳴る心臓の音は、自分のものなのだろうか、それとも司のもの?
 でも、これだけはわかる。
 今、自分たちの気持ちは一つだ。
 ただ、愛してる、その気持ちだけで。
 「寝ようぜ」
 「……うん」



~Fin~



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※なお画像の版権以外の著作権はままさんにあります。当サイトの作品同様、無断転載、複製、二次使用、配布等は厳禁です。




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あとがき)

 司君Birthday記念作品第二弾(本日の更新では3回ー4回目)。
 24才の司君です。
 本編91話二人がコスタリカへと移住してから2年、同じく91話で二人が初めて結ばれる時から1年前くらいの話です。
 それまでもいろいろあったのでしょうが、その間も二人肩を寄せ合い、より添い合って過ごした日々。
 さぞや濃密な愛の日々だったとは思いますが、心は結ばれていても体は未だ。
 つくしを抱きたい男の本能を抑えてただ彼女を愛することを実践し続ける司と、司に抱かれたい彼を愛してあげたいと願うつくしの二人の心の一部を描きました。
 ま、これで二人で風呂にも入って~とか?
 別に誕生日じゃなくっても良かったんですが、この作品を司君の誕生日記念に書いたもので、その都合上w
 では、皆さん、次のお話でまたお会いしましょう♪


2016/01/21 執筆
2016/01/30 公開

by こ茶子


 ※PURA VIDAというタイトルはスペイン語で、『素敵な人生』という意味だそうです。





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