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あの後、当然のことながらリサとムラちゃんには恨まれた。
それでもさすがにしなくてもよかったかもしれない散財をさせるのは忍びなく、カフェバーでのお茶代はあたしが奢った。
自分が飲み食いしたものは、基本自分が払うというのは普通のことだとは思ったけどね。
これが英徳時代のあたしだったら無理な話だったけど、まあこれも、あたしの懐事情が大幅に改善されていたからこそできたことではある。
…それにしても5000円は痛かったな。
たしかに美味しかったには美味しかったけどさ。
ジュース一杯で1500円とかどんだけなのよっ!
そんなところでも、自分がいかに価値観の違う場所に紛れ込んで苦労していたかをいまさらながらに実感して、経緯はなんだったけど、あの歪な世界から逃れられたのは本当に良かったと幸福を噛み締めた。
なおさら、あんな連中ともう関わり合いたくないッ!
「もうっ、つくしちゃんたら、ひどいよ」
「ひどいは、まあ、なんだけど、アレはちょっとねぇ」
遠慮がちに同意するムラちゃんに、そうでしょ、そうでしょ、とリサが勢い込む。
「ホント、つくしちゃんてさ、自分が凄い彼氏持ちだからって友達甲斐がないよ」
朝、顔を合わせてからずっとこんな感じ。
正直、鬱陶しいけど、まさかそのまんま言うわけにもいかない。
こういう時、近い席だとけっこう辛い。
しかも、もうHR始まって先生もいるって言うのに。
あたしも特別生真面目ってほどじゃないけどさ、さすがにやりすぎだよと、内心顔を顰める。
「そうだ、でも、あの人たちってつくしちゃんの友達なんだもんね」
思い直したのか、さっきまでブー垂れていた顔がおもねるようになって、隣の席のリサが首を伸ばすように顔を覗き込んできた。
「…………」
その後ろの席のムラちゃんも、期待顔。
リサほどあからさまじゃないけど、ムラちゃんも逃した魚は惜しいって思ってるのがあきらか。
でも、あいつらはムラちゃんたちが思っているような、ちょっとスペックが高い程度の…ただ食べられるだけの魚なんかじゃない。
むしろ食べられちゃうのはこっちの方で、彼氏どころか、良くても遊ばれてポイ捨てにされるのがオチだ。
…ああ、ポイ捨てじゃなかったか。
一期一会だっけ?
美作さんにしてもマダムキラーとか言ってるくせに、なんだかんだでけっこう据え膳は美味しくいただいちゃうタイプだし、道明寺は………。
まあ、どちらにせよ、むしろあいつらの毒牙にかかるのを防いであげたんだから、感謝されたいくらいだよ、まったく。
「合コン」
は?
…何言い出すわけ?
いいかげんうんざりもしていた。
バレバレだけどHRに集中するふりで無視していたのに、仕方なくリサたちを振り返る。
ニコニコ。
さっきまでのブーたれ顔はどうしたのかというほどの満面の笑みで、リサとムラちゃんが、「お願い」と両手を合わせてきた。
…もうたくさんっ。
あの連中と関わると、英徳を出ても結局この手のことと縁が切れないんだ。
思い出すのは、道明寺と初めてデート?をした翌日のこと。
故障したエレベーターを出たところをスクープされて、英徳の女狐たちの態度が180°変わった。
長続きしなかったけどね。
それもそのすぐ後の出来事で、手のひらを返したなんて生易しいって言う目に合わされた。
昨日までは全然そんなこと思いもよらなかったのに、急にこの子達の顔が浅井たちに重なって我慢できなくなる。
「悪いけど…」
「え?」
「そういうつもりなら、他を当たって?あたしを頼らないで、自分でナンパでもなんでもしてよ」
「……なっ」
「あたしあの人たちとはホントに友達でもなんでもないの。あいつらの外面見て騙されてるのかもしれないけど、あの人たちってとんでもないスケコマシだし、普通の人とは感覚の全然違うやつらだからさ。いろいろ間に受けない方がいいよ」
あたしとしては、良心からの忠告のつもり。
だけど、リサとムラちゃんの表情がみるみる堅くなった。
声を抑えてたけど、やっぱりそれなりに周囲の注目は集めていたらしい。
チラチラとあたしたちの成り行きを見ていたクラスメートたちの視線が痛い。
先生も気がついた。
「どうした?牧野?」
「……いえ、すみません。なんでもありません」
先生は怪訝な顔だったけど、あたしももうそれ以上リサたちを相手にするのを辞めて前に向き直ったし、リサたちもさすがにもう声をかけてこない。
目の端に映った高村くんが、ひゅう~っと口笛を吹く仕草で小さく笑う。
ハァ…笑い事じゃないよ。
せっかくできそうな友達だったのに。
そりゃあ、優紀とかみたいに親友とかそこまでの友達になれるって感じじゃなかったけどさ。
女の子の結束ってこういう時は厄介だとあたしにもわかっている。
…リサたちって、けっこうクラス内の女子たちの中でも力があるんだよね。
いつも一緒にいるのは3人だけど、たぶん他の子達にも回覧されちゃうんだろうな。
まあ、最悪英徳の赤札みたいなことはないとは思うから、それほど悲観することもないか。
*****
「牧野、やっちゃったな」
授業が終わった途端の10分休み。
リサとムラちゃんが席を立って直ぐに入れ替わるように、高村くんがあたしの前の席の子の椅子に逆向きに座っての第一声。
「……なに、やっちゃったって」
「なんか、あいつらにガツンと言ってたろ?」
顎をしゃくった先、教室の対角側の葛原さんの机の周りに集まっているリサとムラちゃんの姿。
時々、チラッとこちらを振り返ってるのってきっと気のせいじゃないよね。
ま、いっか。
過ぎたことをいつまでもクヨクヨしているのは、性分じゃないしね。
「ま、あれでもクラスの女ども総動員してイジメやるような陰湿な奴らじゃないから、安心しろよ?」
あっさりとあたしの懸念を拭ってくれる。
「そうなの?」
「あ、やっぱり心配してた?」
「……ちょっとだけ」
「ま、あいつらってたしかに女子たちの中ではボスっぽいけど、けっこう勢力?二分してるしな」
「せ、勢力」
マジ勘弁だよ。
「なんか、牧野ってそういうとこけっこう物慣れしてないよな」
「そうかな」
自覚がないでもない。
「…ちょっと、少し前まで特殊な環境にいたので」
「へえ?英徳だっけ?」
「え……」
驚いて、ポカンと高村くんを凝視していまう。
…あたし、まだ誰にも言ってないよね?
もちろん先生も特に説明とかしてなかったはずだ。
「もしかして、知られてないと思った?」
「……それって」
「クラスの女どもの大半は知ってるんじゃね?俺はたまたま職員室で先生が他の先生に話しているのを聞いたから知ってけどさ。ちょうどその時、ムラがいたから、ムラからリサに回ったんじゃねぇの?リサが知ってるってことは、あいつ間違っても口堅くないからさ」
…あたたたた。
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…それにしても5000円は痛かったな。
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そんなところでも、自分がいかに価値観の違う場所に紛れ込んで苦労していたかをいまさらながらに実感して、経緯はなんだったけど、あの歪な世界から逃れられたのは本当に良かったと幸福を噛み締めた。
なおさら、あんな連中ともう関わり合いたくないッ!
「もうっ、つくしちゃんたら、ひどいよ」
「ひどいは、まあ、なんだけど、アレはちょっとねぇ」
遠慮がちに同意するムラちゃんに、そうでしょ、そうでしょ、とリサが勢い込む。
「ホント、つくしちゃんてさ、自分が凄い彼氏持ちだからって友達甲斐がないよ」
朝、顔を合わせてからずっとこんな感じ。
正直、鬱陶しいけど、まさかそのまんま言うわけにもいかない。
こういう時、近い席だとけっこう辛い。
しかも、もうHR始まって先生もいるって言うのに。
あたしも特別生真面目ってほどじゃないけどさ、さすがにやりすぎだよと、内心顔を顰める。
「そうだ、でも、あの人たちってつくしちゃんの友達なんだもんね」
思い直したのか、さっきまでブー垂れていた顔がおもねるようになって、隣の席のリサが首を伸ばすように顔を覗き込んできた。
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でも、あいつらはムラちゃんたちが思っているような、ちょっとスペックが高い程度の…ただ食べられるだけの魚なんかじゃない。
むしろ食べられちゃうのはこっちの方で、彼氏どころか、良くても遊ばれてポイ捨てにされるのがオチだ。
…ああ、ポイ捨てじゃなかったか。
一期一会だっけ?
美作さんにしてもマダムキラーとか言ってるくせに、なんだかんだでけっこう据え膳は美味しくいただいちゃうタイプだし、道明寺は………。
まあ、どちらにせよ、むしろあいつらの毒牙にかかるのを防いであげたんだから、感謝されたいくらいだよ、まったく。
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さっきまでのブーたれ顔はどうしたのかというほどの満面の笑みで、リサとムラちゃんが、「お願い」と両手を合わせてきた。
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あの連中と関わると、英徳を出ても結局この手のことと縁が切れないんだ。
思い出すのは、道明寺と初めてデート?をした翌日のこと。
故障したエレベーターを出たところをスクープされて、英徳の女狐たちの態度が180°変わった。
長続きしなかったけどね。
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「悪いけど…」
「え?」
「そういうつもりなら、他を当たって?あたしを頼らないで、自分でナンパでもなんでもしてよ」
「……なっ」
「あたしあの人たちとはホントに友達でもなんでもないの。あいつらの外面見て騙されてるのかもしれないけど、あの人たちってとんでもないスケコマシだし、普通の人とは感覚の全然違うやつらだからさ。いろいろ間に受けない方がいいよ」
あたしとしては、良心からの忠告のつもり。
だけど、リサとムラちゃんの表情がみるみる堅くなった。
声を抑えてたけど、やっぱりそれなりに周囲の注目は集めていたらしい。
チラチラとあたしたちの成り行きを見ていたクラスメートたちの視線が痛い。
先生も気がついた。
「どうした?牧野?」
「……いえ、すみません。なんでもありません」
先生は怪訝な顔だったけど、あたしももうそれ以上リサたちを相手にするのを辞めて前に向き直ったし、リサたちもさすがにもう声をかけてこない。
目の端に映った高村くんが、ひゅう~っと口笛を吹く仕草で小さく笑う。
ハァ…笑い事じゃないよ。
せっかくできそうな友達だったのに。
そりゃあ、優紀とかみたいに親友とかそこまでの友達になれるって感じじゃなかったけどさ。
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…リサたちって、けっこうクラス内の女子たちの中でも力があるんだよね。
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「なんか、あいつらにガツンと言ってたろ?」
顎をしゃくった先、教室の対角側の葛原さんの机の周りに集まっているリサとムラちゃんの姿。
時々、チラッとこちらを振り返ってるのってきっと気のせいじゃないよね。
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「ま、あれでもクラスの女ども総動員してイジメやるような陰湿な奴らじゃないから、安心しろよ?」
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「そうなの?」
「あ、やっぱり心配してた?」
「……ちょっとだけ」
「ま、あいつらってたしかに女子たちの中ではボスっぽいけど、けっこう勢力?二分してるしな」
「せ、勢力」
マジ勘弁だよ。
「なんか、牧野ってそういうとこけっこう物慣れしてないよな」
「そうかな」
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「…ちょっと、少し前まで特殊な環境にいたので」
「へえ?英徳だっけ?」
「え……」
驚いて、ポカンと高村くんを凝視していまう。
…あたし、まだ誰にも言ってないよね?
もちろん先生も特に説明とかしてなかったはずだ。
「もしかして、知られてないと思った?」
「……それって」
「クラスの女どもの大半は知ってるんじゃね?俺はたまたま職員室で先生が他の先生に話しているのを聞いたから知ってけどさ。ちょうどその時、ムラがいたから、ムラからリサに回ったんじゃねぇの?リサが知ってるってことは、あいつ間違っても口堅くないからさ」
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