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「夢で逢えたら…全207話完+α」
プロミス…遠い日の約束~番外編

プロミス~遠い日の約束~025完

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 季節はそろそろ秋も終わり、寒さも厳しい冬へと差し掛かっていた。
 静と待ち合わせたカフェ。
 セーヌの川沿いに位置するそこは、かなり冷たい風が吹きつけてくることもあって、この寒い季節のテラス席はことさら寒い。
 天気も晴れ間が覗いてはいるものの、あまり天気がいいとは言い難かった。
 それでもテラス席を好むパリッ子たちで賑わっていて、それが類的にはいまいちな居心地で、喧騒を避けて近場のベンチに腰掛ける。
 さすがに似たような環境下とは言え、テラス席専用の暖房もあるカフェとは違い、そんなもの好きは他にはいない。
 4つ折りだった手紙を広げ、顔を隠すように被って目を瞑る。
 それでも時折吹き付ける風に攫われないように、しっかりと手で抑えるのは忘れない。
 花の都と称されるパリではあったけれど、治安はあまりよくないのだ。
 たとえ寒さが厳しくなかったとしても、こんな路上で寝ているなど正気の沙汰ではないが、類にとってはそこがどこでも大した違いはなかった。
 ただ寝心地がいいか、悪いかそれだけのこと。
 来年の…大学卒業後のフランス支社転勤に向けて、何かとパリへと出張を命じられて訪れるのも、今年に入って何回目のことだろうか。
 類的には実のところ、日本だろうとフランスだろうと格別のこだわりはない。
 けれど、つくしが日本にいる以上、できる限りの努力で日本に残留するつもりだったというのに、今の彼の未来は五里霧中。
 当のつくしでさえも、現在日本にいないのだから、どうしようもなかった。
 つくしに逢いたいな、と思う。
 彼女が現在いるはずの南米でも、日本でさえもないこんなパリの街角で、彼女に会えるはずもないのに、無性に彼女に逢いたい。
 あの屈託のない笑顔を見つけて、子供みたいにくるくると変わる表情を見たいと切望してしまう。
 「…寒い」
 「そりゃそうよ」
 突然割り入った鈴を鳴らすような聴き慣れた美声に、手紙を目の下に引き降ろせば、案の定、呆れて苦笑している静の顔に出くわす。
 「カフェで待っててって、言っておいたでしょ?」
 「うるさくって寝れないし」
 カフェで寝ようとする自体間違っていることだという認識は、この青年にはないのだろうか。
 ため息一つついて、静も類の横に並んで腰を下ろす。
 どちらにせよ、いまさらなことで、子供の頃からの付きあいだ。
 何を言っても無駄なことなど熟知していた。
 「で?それ、牧野さんからの手紙?」
 「そう」
 「なんて?」
 つくしが南米・グァテマラに海外青年協力隊としてNPO活動に参加していることは、静にも話してあったから驚くことはなかったけれど、それでも司との経緯を聞いていただけにその心中を察したのだろう。
 痛まし気に顔を翳らせ、類のこともただ抱きしめてくれた。
 かつて愛した女性。
 けれど、その温もりは肉親のものに近く、かつてのように静自身を渇望することなく、ただただ静の幸せを祈り、時にはこうしてつくしの不在を愚痴る?相手として頼みとする関係に落ち着いていた。
 「グァテマラでの任期が終わったって」
 「あら、良かったじゃない」
 「…でも、この機会に少しあちらこちら見て回りたいからって、今ブラジルにいるんだってさ」
 「あらあら」
 手紙の内容は、つくし自身が経験した活動の内容やら現地の人たちとの触れ合いなど多岐に渡ったものだったが、その中に見過ごせない表記があったのだ。
 「…で、もしかしたら、ブラジルを回った後に、また次の任地を希望してあっちに残るかもしれないって」
 「……まあ」
 当然類としては、唯々諾々と承認できるものではなかったし、いくらこれまで無事だったからといって、以前として南米の多くの国々が政情不安を抱え、また治安が良くないことは変わらなかったし、類の立場的にも南米ではつくしとの間を縮めることが難しくなってしまう。
 …俺に向き合うって言ったくせに。
 もちろん、その時のつくしはそのつもりだったのだろうし、今も逃げるつもりなどないのかもしれなかったが、それでもまだ自分の中の何かに決着をつけられずにもがいているのだろうことは容易に類にも察せられた。
 「で?あなたは、どうするの?」
 「…俺?」
 「指を咥えて牧野さんが戻ってくるのをただ待ってるつもり?」
 静の目が真っ直ぐに類へと問いかけてくる。
 「もちろん……」
 類が言葉を切り、手紙を持ったまま伸びをして、ベンチから立ち上がった。
 「…もちろん?」
 「迎えに行くよ」
 静の目の前にいるのは、一人の逞しい男性。
 もう静の後を雛鳥のように、ただただ追いかけてくる少年ではなかった。
 ホンの少しの寂寥を感じないではなかったけれど、この弟のような青年のために、静は安堵して心からの微笑みを浮かべる。
 「それでこそ、男ってものよ」
 「「ふふふ」」
 そっくりな表情で笑い合う彼ら二人は、他人から見ればよく似た姉弟に見えるのかもしれなかった。 
 「じゃ、俺、そろそろ行くよ」
 「あら、一緒にお茶してくれるんじゃなかったの?」
 「牧野を迎えにパリを経つ前に、静の顔を見ておきたかっただけだからさ」
 現金な類の言い草に、静も苦笑する。
 「もうっ、類ったら」
 「じゃ………」
 別れの挨拶を告げかけ、懐で震える携帯のバイブの響きに気がつき着信を確認する。
 「総二郎からだ」
 「総二郎?」
 「うん、そう。……はい、俺。なに?総二郎」
 雲の切れ目から覗いていた青空から射していた陽の光が、再び雲に遮られて一気に翳ってしまう。
 『類、類?』
 「だから、そうだって」
 今日の総二郎はなんだか妙だ。
 『落ち着いて聞けよ?いいか、落ち着けよ?』
 落ち着けという総二郎の方が、らしくなくテンパって何度も同じ言葉を繰り返している。
 ふいに、…本当にふいに、浮かび上がった想い。
 …寒いな。こんな日は牧野とお茶したいな。
 “カフェに入ると暖かくって、お茶もおいしくって…なんか、幸せ…。”
 そんな風に頬を染めて、嬉しそうに微笑む彼女が見たい。
 『今、優紀ちゃんから電話があって、牧野が…』




*****



 音が聞こえない。
 じんわりと耳を塞ぐ不快な耳鳴りが全ての音を遮断して、遠く総二郎が何かを言っているのをちゃんと聞いているはずなのに、頭が理解できなかった。
 『…それで、すでに荼毘に伏せられて、家族が遺骨を持ち帰ったって話なんだ。牧野の家族と一番親しいお前はフランスだし、滋も今中東行ってて、牧野の弟から優紀ちゃんに葬式の連絡が来た時には、全部終わった後だったらしい。俺にしてもあきらにしても、牧野の家族とはそれほど交流はなかったし、あちらも急なことで動転してたんだろう』
 「…総二郎、聞こえないよ」
 『類?おい?』
 …何を言ってるの?
 総二郎は何を言ってるのだろうか。
 呆然と立つ類を不審げに見ていた静が怪訝に立ち上がって、類の傍らへと歩み寄る。
 「どうしたの?類。総二郎が何か?」
 『類ッ!!聞いてるのか、類ッ!?』
 総二郎の声を届け続けていた携帯電話が、スルリと類の手から抜け落ちた。
 ガッツン!!ゴッ。
 「類ッ、しっかりしてっ!類ッ!?」
 遠く聞こえる総二郎と静の声を聞きながら、類は自分の周囲が壁に閉ざされたビジョンを見ていた。
 箱の中で膝を抱えて小さく蹲り、いつかのように茫洋と空を仰ぎ見る自分の姿の幻影。
 “またね、類”
 最後に会った時のつくしの声が、いつまでも、いつまでも…類の耳に木霊し続けた。




*****




 あの夢だ。
 甘く、切なく、…愛しさと哀しみ、そして悲喜交々、さまざまな想いの詰まったいつもの夢。
 『また、明日ね』
 『おう!また明日な』
 そう言い合って別れて、でもやっぱり別れがたくて見つめ合って笑う。
 でも、すぐにそれが夢だと自覚して、笑っていた道明寺の姿が涙で滲んだ。
 『…どうしたんだよ。何泣いてんだ?』
 心配そうに聞いてくれるあいつに笑いかけたいのに、どうしても笑えなくて…。
 ただ首を振って泣き続けるあたしを、困ったように抱きしめてくれる。
 …本当にあんたが好きだった。
 …ううん、今も好き。
 だから、だから、もう終わりにしなきゃ。
 そう思って、あたしは言うの。
 『もうお別れだよ。あたしは…』
 …あたしはもう。
 そう言おうとしたのに、言い切る前に場面は変わって、抱きしめていてくれたはずのあんたが消えて…。
 さっきまでお別れを言おうと思っていたのに、道明寺の温もりがないことが哀しくて寂しくて探してしまう。
 泣きそうになって振り向いたその先に、英徳の制服を着た道明寺が立っていた。
 どこかを見つめて、微笑むあんたの顔が、凄く優しくて幸せそうで…。
 『…さみしくねぇーよ、今は。俺にはお前がいるし、あとは別になんもいらねぇ』
 弾けるような笑顔。
 いつも昏く凝って怒りに満ちて…、憎悪と憤怒と悲哀と絶望、そんな顔しかしなかったあんたの顔が少しづつ柔らかく綻んだ。
 …ああ。
 ああ、と思う。
 『行くな。逝かないでくれ』
 笑ってたあんたの顔が、不安そうに歪んで崩れ落ちた。
 …どこ?道明寺。
 闇が消え光が差して、周囲の世界が壊れて…現実へと引き戻される。
 『……お前がいなければ、俺は幸せになんかなれねぇんだ』
 「目が覚めたのッ!?」
 見たことのない天井、見たことない人たち。
 わんわんと耳鳴りが煩い。
 「……ぁ…………」
 声を出したつもりだったのに、掠れて音のない呼気が洩れただけ。
 「……まだ、声を出すのは無理だ」
 「ええ、ええ。この半年……このまま、あなたが死んでしまうのではないかと、心配したのよ」
 どこか夢の続きのような非現実的な曖昧さ。
 「まだ意識がしっかりしていないんだろう。あるいは、いままでのように、意識が混濁して目覚めたように見えるだけなのかもしれない…セリ、いまは眠りなさい」
 優しい声がそう囁き、つくしの目尻から一筋の涙が溢れ落ちた。





~Fin~





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あとがき)

2014/01/27にスタートしたこの作品は、2014/04/21に完結した『夢で逢えたら』の100話記念に書き始めたお話でした。


途中、2年あまりの休載期間を挟んでの再開。
私自身もおそらくかなり作風?も変わっていたかもしれません。
ちょうど、本編の100話といえば、キャサリンを名乗っていたつくしの正体が司にバレるという記念すべき回であり、皆さんも盛り上がった回だったと思います。


この番外編を完結したところで、ある意味『夢で逢えたら』をすべて書ききったなあという達成感があるのですが、多くの皆さんがキャサリン(つくし)と司の幸福なその後を…という声も多く、まだまだ終われないかもしれない『夢で逢えたら』。
つくしと司にとっても辛い十数年間であったように、類にとっても闇に閉じ込められていた歳月を少しでも皆さんに感じていただけたらと思います。
この作品を読み終えたら、皆さんにはもう一度本編も合わせて読んで欲しいな。


てことで、皆さん、もう一度 本編 へGO!
え?w


2016/01/11 完
2016/02/09 公開


by こ茶子






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