FC2ブログ

「中・短編」
一日遅れのハッピー・バースディ…15話完+α

一日遅れのハッピー・バースディ14

 ←一日遅れのハッピー・バースディ13 →一日遅れのハッピー・バースディ15~完
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ
【君を愛するために】オススメ作品!?
ランキングもよろ(・ω-人)
ブログランキング・にほんブログ村へ
いつも応援ありがとう♪
**************************************

 クスクス笑う雅也の顔を睨みつける司の顔がますます剣呑に、危険な色を帯びる。
 もちろん、司を侮っているつもりは雅也にはなかった。
 司自身の醸し出す空気もそうだったが、世間の噂でも彼がいかに侮りがたい相手か十二分に理解していても、それでも雅也は奇妙な安堵とも清々しさをも言えぬ思いに満たされ、そんな自分を笑わずにはいられなかったのだ。
 …妻を寝取られたっていうのにね。
 「俺を嘲笑うってか?言っておくが、俺には…」
 あんたを潰すだけの力がある―――そう司が警告を発する前に、クスクス笑っていた雅也が片手を口元に当てたまま、もう片方の手を突き出し、自分に二心がないことを示して司を宥める。
 「…申し訳ない。あなたを笑ったわけではなかったのだけれど、気分を害させてしまったなら謝りますよ」
 「俺を侮るつもりなら、あんたは間違ってるぞ。俺にはあんたと、あんたの事務所を潰すだけの力がある」
 さっき言いかけた言葉を一気に言い切った司に、雅也も同意して大きく頷いた。
 「でしょうね。ボクも世間にそれほど目敏いわけではないけれど、カナダでも道明寺財閥の威容は音に聞こえているし、日本でのあなたの評価も度々耳にしている。だから侮りたくても侮りようがない。だけど、だからこそ、微笑ましい…そう言ったらまたあなたを、怒らせてしまうかな?」
 「…微笑ましい?」
 自分にもっとも縁遠いと思われる評価に、司が顔を顰める。
 怪訝に雅也を見返す司の不信をよそに、雅也が司の傍らに歩み寄った。
 そして、司が余計な警戒心を抱く前に、すっと懐へと入り込む。
 「好ましいと言い換えたほうがいいかな?あなたのような人が、彼女に関することで覗かせる青さや一途さは、ボクみたいなスレた人間にも酷く眩しくて…少しだけ羨ましい。そう思ったんですよ」
 「なにをっ」
 …殴るつもりかっ!?
 
 雅也の柔和な雰囲気と優しげな美貌に、警戒心を怠っていた。
 しかし、それは司の勘違いだった。
 ぐっとネクタイと胸元のシャツを掴み寄せられ、引き寄せられた司の唇に、雅也の唇が重なる。
 体温を感じる暇もない…ホンの一瞬の接触。
 「△※■☆★×―――ッ!!!??」
 無意識の防衛本能が働き、司が反撃する寸前、すでに雅也はその射程距離から逃れ出ていた。 
 「て、て、て、て、て―――ッツ!!!」
 ガチーンと固まったまま赤と青の斑に顔色を染めて、自分でも何を言おうとしているのかわからない司をよそに、クスクス笑いの雅也は上機嫌だ。
 「ごちそうさま。あらの一つもない美形なんて、ボクの好みじゃないんだけどな。久しぶりにトキメいてしまいましたよ。享と出会う前で、あなたがノンケじゃなかったら、真剣に口説いてみたくなってしまったかも。とはいえ、今のボクは恋人と別れるつもりはないし、つくしの恋敵になるのもごめんだから、このことはご内密に?」
 口止めしたわりには、雅也には真剣味がない。
 そして絶句している司へと、グッドラッグのジェスチャーをしてそのまま部屋を出て行ってしまった。
 後に残った司の方といえば、すっかり毒気を抜かれて脱力し、そのままドスンとソファへと逆戻りする。
 「……あ、のヤロウ」
 NYでも今や珍しい人種ではないし、もちろん司の知人にもいないわけではないというのに、まったく気が付くことができなかった。
 ただ、それがつくしの夫だという事実に、司は彼らしくなく困惑していた。




*****




 一時期の混乱から立ち直ると、とりあえず司も多忙な身、いつまでも用もない空港でボウッとしているわけにもいかない。
 …牧野に電話してみるか。
 今は真々部だの、どうのとつくしには文句を言われるが、司の中では今でも彼女は彼の『牧野』であり、それ以外の何者とも呼ぶつもりもなく、彼女を違う名前で呼ぶのなら、なんと呼ぶかはもう決めていた。
 あの食えない夫のことがなかったとしても、つくしは一筋縄ではいく女ではない。
 それでも、司がただ一つ失うこともできないもの―――それがつくしであり、絶対にもう諦めるつもりはなかった。
 たとえ、つくしがどうであろうとも。
 シュ―――ッ。
 ほとんど音もなく開いた自動ドアを抜けて、司が顔を上げ、目を見開いた。
 目の前には、今も思い浮かべていた彼の最愛の女が、なぜか唇を尖らせフクれた顔で仁王立ちしているではないか。
 …おいおい、アラフォーの女がする顔かよ。
 もちろん司とて学んでいる。
 女に年の話は禁句であるのは常識で、ただ気持ちのままに彼女と逢えた思わぬ幸運に、司は破顔した。
 「牧野ッ」
 「…ちょっと、あんた、どういうことよっ!?」
 が、つくしの方はいかにもご機嫌斜めで喧嘩腰。
 それでも、耳目を気にしてか、声を潜めてはいる。
 誰よりも人目を気にする立場のはずの当の男は、もちろんつくしのそんな配慮などどこ吹く風で、つくしを抱き寄せようと手を伸ばした。
 しかし―――。
 「待ったッ!!」
 急接近してくる司にギョッと仰け反り、つくしが両手を突き出す。
 「こんなところでなにしてくれちゃうつもりよッ!?」

 「なにって、もちろん、惚れてる女に誕生日おめでとうのキス?」
 「はあ?誕生日おめでとう…って、もう終わってるし」
 苦笑するつくしに、今度は司がムッと顔を歪めた。
 「俺をケンモホロロに突っぱねやがって」
 「昨日は夫と子供とお祝いしたのよ」
 「………」
 さすがにツラの厚さには自信のある司にしても、胸を突く言葉に顔を引き攣らせた。
 「……なにげに、あいかわらずひでぇ女だな、お前」
 「え?ごめん」
 なにが?と目を瞬かせるつくしの天然ぶりにハアッと大きくため息をつく。
 司にため息をつかせることができるのも、彼を凹ませ傷つけることができるのも、この世でただ一人、つくしだけだというのに、その当の彼女はそんな自覚が欠片ともないのだ。
 「…いいさ。たとえ次の日にでもお前に逢えただけで、俺は嬉しいからな」
 「道明寺」
 あまりに殊勝で切なげな司の眼差しに、つくしはつい肩を抱き寄せてくる彼の腕を突っぱねるタイミングを失ってしまった。
 「あのさ、私…」
 「今は何も言うなよ。今日のこともちゃんと話す。俺的にはお前の不利なるようなことは何一つするつもりはねぇが、これだけは譲れなかった」
 「………」 
 「て、ことで、お前もここで俺に会っちまったのが運のツキだ。どういうつもりで出向いてきたんだか知らねぇ、こんなところにわざわざ来たくらいだ。時間あるんだろ?」
 時間あるもなにも、もちろん彼女がオフであることなど司はとっくにお見通しなのだろう。
 事務所とは常に連絡をとっているから、雅也とつくしのスケジュール確認に司から電話があったことも聞いていた。
 むしろ、忙しいのは司の方だろう。
 年末年始もないハードなスケジュールをこなしている男であることは、別れてしまった今だとて容易に察することができる。 
 だが、そんな素振りを少しも見せずに、肩を抱いたつくしへと司がただ甘く優しく微笑む。
 「ちょうどいい、誕生日プレゼントを買ってやるから、今日、付き合えよ」
 10年前より遥かに増した魅惑に、思わずつくしもフラフラっと頷きかけるが、
 「…あ、実は私、一人じゃないんだよね」
 「は?」
 「ママッ!!」





◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ





↓ランキングの協力もよろしくです♪
にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ 💛 
いつも応援ありがとうございます^^!

web拍手 by FC2






関連記事


総もくじ 3kaku_s_L.png イベント
総もくじ 3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ 3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ 3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ 3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ 3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 倉庫
総もくじ  3kaku_s_L.png イベント
総もくじ  3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ  3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ  3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話+
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ  3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話^
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ  3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ストック
もくじ  3kaku_s_L.png R短編集
もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ R
もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛の品格 R
もくじ  3kaku_s_L.png 愛妻生活 R
  • 【一日遅れのハッピー・バースディ13】へ
  • 【一日遅れのハッピー・バースディ15~完】へ

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【一日遅れのハッピー・バースディ13】へ
  • 【一日遅れのハッピー・バースディ15~完】へ
にほんブログ村 小説ブログへ💛
スポンサーリンク