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一日遅れのハッピー・バースディ…15話完+α

一日遅れのハッピー・バースディ11

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 『お義母様から、司の離婚が正式に成立したと伺ったの』
 例によって例に洩れず、この次の婚約者殿は母親の推薦だった。
 前の女房と離婚調停も終わらぬうちに、次の婚約者候補とは司にしても我ながら笑える冗談だったが、鉄の女と新しい提携相手にしてみれば冗談ではなかったらしい。
 そして、今電話一本で、この道明寺司にアポイントもなく面会しようとしている女にとっては。
 以前までの司にとって、結婚とはあくまでもビジネスであり、そうである以上は厳密なスケジュールの管理下に組み込まれていない予定は果たすに値しないものだった。
 そして今も、ただ一人の女に関すること以外には、なんの変化もありはしない。
 「…帰れ」
 『え?』
 端的ではあったが、あまりにも冷たい司の声音に、意味を理解し難かったのだろう。
 女が言葉を詰まらせた。
 「あんたと結婚するつもりは微塵もない」
 『…なっ、そ、そんな』
 「俺の母親が何を言ったか知らないし、何か誤解させてしまったかもしれないが、…この話はご破算だ。後日、俺の方からも、あんたの親父殿に挨拶するから、あんたは黙って帰ってくれ」
 一方的だという自覚はある。
 そもそも司自身にしてもどうでもよかったから、逆らうつもりもあまりなかった。
 2度目の妻が3度目の妻にすげ変わった時のように、結婚相手の名前と顔が変わるくらいで、彼の生活自体には何も変化がないものだからと、放置した結果が現在の事態と相手の女の期待。
 そうである以上、ある意味、女の誤解も致し方がないと言えた。
 だが、もうつくし以外の女をたとえ名前だけだとしても隣に据えることなど、司には耐え難く、我慢するつもりもなかった。
 もちろん、つくしもまた許してくれるはずもない。
 10年前同様、いや、今度こそ二度と彼女は手の届かぬ存在となってしまうだろう。
 だから、何かを言いかけた女の言葉も聞かず、さっさと電話を切る。
 アドレスばかりでなく、履歴からも相手の名前を削除して、見るともなく車窓の外を見て、司は息を飲んだ。
 …あれはっ。
 一瞬のことだったが、その光景は瞬時に司の脳裏に焼きついて、胸に激しい痛みすら感じる嫉妬を沸き上がらせた。
 あれは、つくしと、おそらくその夫。
 子供を背に背負った男に寄り添って、伸び上がったつくしがその唇にキスを落としているところだった。




*****




 「キスしようか。夫婦だった記念に、最初で最後のお別れのキス」
 雅也のそんな言葉に、つくしも泣き笑いに微笑み、彼の唇へと優しいキスを落とした。
 性的なものを含まない親愛の証。
 恩人であり、同志であり、そして友人であり家族だった。
 初めて雅也の事情を知ったあの日―――司との別れ話を選んだのは大学のキャンパスの片隅でのこと。
つくしはと言えば、母校の就職担当者からの要請を受けての訪問だった。
 司との思い出に満ちた自分のアパートの部屋で、一人、彼への別れ話の電話をするのが耐え難く、かといって会社や日常的な場所は避けたかった。
結果、どこで話せばいいのか迷って…非日常な場所である大学の人気のない校舎の裏を選んだのだ。
 涙が溢れて止まらなかった。
 けっして泣かないと誓っていたのに、通話を切った途端、すぐに湧き上がってきた嗚咽を堪えられず泣いてしまった。
 悲しくて、辛くて、苦しくて、本当に自分はどうなってしまうのかと思うくらいに泣きじゃくり続けた。
 そんな時だ。
 自分以外の人影を見つけたのは。
 二人の男。
 発見されるバツの悪さに、低木の影に隠れたのがこの奇妙な縁の始まりであり、そして運命だったのだろう。
 「まさか、あんなところを見られるとはね」
 「…まさかって、それこそあんなところで痴情の縺れとか無用心すぎるでしょ」
 それも男同士のというやつだ。
 つくしは知らなかったけれど、雅也は在学当時、大学でも有名人だった。
 英徳を離れたつくしが在席していた国立大学でも、一二を争う秀英のエリート。
 学部こそ違ったが、つくしの友人たちの中にも雅也を見知っている女友達はかなりいて、つくし自身も友人を通じての知人程度には顔を知っていた。
雅也もまた偶然の導いたとでもいうべきか、後でつくしが聞いたところによると、当時付き合っていた交際相手が、母校の後輩だったのだ。
 「化粧は涙ではげ落ちて凄い状態だったし、腫れ上がった瞼や頬はまるで四谷怪談の幽霊。あまりに怖い顔してるから、いったいどこから這い上がってきたオバケかと思ったよ」
 「………」
 本当のことかもしれないが、あまりに遠慮会釈ないひどい形容詞につくしの顔が引き攣る。
 過去のこととは言え、これだけ美形な男に見せるにはたしかにあまりに酷すぎた姿かもしれなかった。
 「その上、茹で蛸みたいに真っ赤な顔してたし…」
 「それは、男同士のラブシーンなんて見せられちゃったからでしょっ!」
 「…それはそうだったねぇ」
 しみじみと頷かれ、つくしはガクッと項垂れ、心なしか頭痛を覚えたこめかみを押さえる。
 「そんなんだから、噂になって二進も三進もいかなくなったんでしょうに」
 「まあね。…隠すって意識があまりなかったしね」
 けれど日本はまだまだ閉鎖的な国だ。
 マイノリティ(※社会的少数者)は冷遇されがちだったし、ゲイ(※同性愛者)やトランジェスター(※性同一症候群)などへの風当たりも強い。
 そしてまた、それらの人々とは異なるが、シングルマザーが生きづらい世の中なのは今も変わらない。
 それは経済的のみにならず、世間的な立場や風評なども含めて。
 現在でさえそうなのだ。
 わずか10年前とはいえ、当時の事情はさらに厳しかった。
 「…もし、君がボクの申し出を受けてくれなかったら、今のボクはなかったかもしれない」
 「雅也さんが、私たちを受け入れて支えてくれると申し出てくれなければ、私たちは路頭に迷っていたかもしれないし、謂れない中傷にさすがの私も折れてしまっていたかもしれないわ」
 そして何よりも大切な我が子の体ばかりか、心も守れなかったかもしれない。
 だから互いに互いが同志だったのだ。
 つくしが雅也の社会的地位を守り、また雅也がつくしを経済的に助けて、互いが世間の蔑視や冷遇からの盾となり、支えとなった。
 見つめ合う互いの目の中への自分を見つめ、過去を振り返る二人に後悔はない。
 互いへの感謝と信頼、友愛があるのみで、今も変わらぬ互への愛情がある。
 あの時にはたしかにそれが必要だったのだ。
 たとえ、世間を欺く偽りの家族だったのだとしても。
 寄る辺ない互いを守り支え合う日々。
 そしてその蜜月はまもなく、終りを告げようとしている。
 雅也が彼の人生で唯一『妻』と呼んだ女性へと慈愛に満ちた笑みを向け、長年思っていた想いを今告げる。
 「君が男だったら、あるいはボクがゲイじゃなかったら、きっとボクは君に惹かれていたと思う」
 けれどそういう彼の顔には、つくしへの恋慕は欠片ともなかった。
 だから、つくしも正直に告げる。
 自分の気持ちを、真っ直ぐに雅也を見つめ返して。
 「たぶん…、雅也さんがゲイじゃなかったとしても、私は雅也さんに恋したりはしなかったと思う」
 目を瞬かせ、雅也が苦笑した。
 「ハッキリ言うねぇ。なにげに酷くないかい?こういう時には、社交辞令でも、私も…とかなんとか言うもんじゃないの?いくら率直な君でも、さ」
 つくしもまた苦笑を浮かべる。
 けれど、それが真実だから…そして、たとえ恋ではなくても、たしかにつくしにとっての雅也は大切な人だったのだ。
 「でも、雅也さんのことが大好き。恋じゃないし、享に嫉妬したりもしないけれど、それでもあなたが私にとって大切で幸せになって欲しい人であることには間違いないの」
 「……つくし」
 「本当にこの10年間ありがとう。私と…凌が心穏やかに、優しい毎日を過ごすことができのは間違いなく雅也さんのおかげだから」
 「行くのかい?」
 雅也が聞く。
 「彼なんだろ?君が10年前泣くことになった原因の男を、君はもう一度信じて、ついてゆくつもりなのかい?」





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