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一日遅れのハッピー・バースディ…15話完+α

一日遅れのハッピー・バースディ10

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 「おかえりなさい」
 つくしが微笑みかけると、助手席から降りた雅也もニッコリと微笑み返してくれる。
 「ただいま」
 幸せに満ちている人は本当に素敵だ。
 そう思う。
 雅也にもまた多く人生の困難があり、苦しみもあったことをつくしもよく知っていたが、それでも今の彼は充実して輝いている。
 「…いい結果になったみたいね」
 「そう…かな。そうとも言えるかも。凌がちょうどいい緩衝役になってくれたからね。両親も戸惑っていたとは思うけど、思っていたよりはひどい拒絶はされなかったよ」
 「そう、よかった」
 雅也の背に隠れて見えていなかった運転席の享へも微笑みかける。
 「享、ありがとう。ここ数日、貴重な二人揃ってのオフだったのに、すっかり凌の面倒を見させて悪かったわね」
 「いいよ、雅也さんも言ってたろ?凌がいたから、雅也さんのご両親も、俺のこともなんとか許容出来たんだと思うし」
 「…そうかな」
 「うん、つくしさんこそ、ごめんね。せっかくの誕生日の朝を一人っきりにさせちゃって」
 享もまた複雑な気持ちを抱えてもいるのだろうが、本来お邪魔虫である自分にまで気を使ってくれる彼の優しさが温かく、ありがたい。
 「はは、気にしないで。誰も彼も忙しいこの時期のことだからさ。昔からけっこう自分でさえ忘れがちだし、この日が仕事の時も珍しくないから大丈夫」
 それでもこの日は、雅也も必ずつくしと過ごしてくれた。
 つくしの誕生日、凌の誕生日、雅也の誕生日。
 三人は仮初であってもたしかに家族なのだ、と。
 「あらら、やっぱり凌、寝ちゃったんだ」
 車に乗るとすぐに寝てしまうのは、つくし譲りか。
 雅也に抱き抱えられ、車から引き出された凌の頭がガクッと仰け反り、柔らかなクルクルの癖っ毛が風に靡く。
 …ホント、眠ってると天使だよね。
 性格までもが父親に似て、起きているととんでもないヤンチャ小僧だが、凌の美貌は血を争えず、そうしているとまるで宗教画の天使のような美しさだ。
 「じゃ、俺はそろそろ…」
 「え?享、帰っちゃうの?」
 てっきり今日は一緒に過ごしてくれるものだと思っていたのだ。
 「今日は遠慮しておくよ」
 「どうして?大したものはないけど、一応、今日は私も腕を奮ったから、ご飯食べて言ってよ」
 毎年、この日だけは家族同然の享も遠慮してくれていたが、それはいらぬ遠慮だと思う。
 本来なら、雅也と享の間に割り行っているのはつくしと凌の方なのだ。
 けれど…、
 「いいよ、享は5日まで休みだし、実はニューイヤーは一緒にカナダで過ごそうと思ってるんだ」
 「あ、そうなんだ」
 家族ではあっても、互いのプライベートに関してはかなりリベラルで、雅也もつくしの私生活に干渉もしないが、逆も同様だった。
 そして、それがそもそもこの歪な家族を継続するための基本でもあった。
 「つくしと凌は、今年の正月も牧野の実家で過ごすんだよな?」
 「うん、そのつもり」
 そしてこれも毎年の恒例行事で、どんなに忙しい時期でも凌の為に休暇をとって、つくしは日本に帰国していた。
 プップッ―――ツ。
 クラクションの音に顔を向ければ、道を塞ぐように停車していた享の車の後ろの車が焦れて警笛を鳴らしている。
 「やば…、じゃ、雅也さん、つくしさん」
 「ああ、また」
 「ありがとう、ごめんね」
 ニッコリ微笑んで車を発進させる享を、つくしも手を振って笑顔で見送る。
 「……ん、むにゃむにゃ、むにゃ。もう、食べれないよぉ」
 寝ぼけた凌が寝言を呟く。
 「ふふふ」
 「ホント、よく寝る子ね」
 「君に似たんだろ?」
 「やっぱり、そう思う?」
 笑い合う和やかな空気が、これまでと同じくらい大切だと思えるのに…。
 「…やっぱり、なんかあった?」
 「え?」
 「いい顔してるよ。…ボクと暮らしていても、どこか遠くを見て、今を生きることができていなかった君の顔が、どこか輝いている」
 「……雅也さん」
 「少し歩こうか?」
 けれど、子供とは言え、寝入っている小学3年生の男の子を抱えているのではいかにも重そうだ。
 そんなつくしの気遣いからの躊躇を、雅也も察してくれる。
 「抱っこして歩くのはちょっと大変そうだから、おんぶに切り替えるのを手伝ってくれるかな?少し寝れば、凌も起きると思うしね?」




*****




 気が付けば、携帯を気にしている自分を自覚する。
 リムジンの中央に設置されたコーヒーテーブルの上。
 無理だろうと推測しつつ、それでも一縷の望みにかけて、電話した今朝、逢いたいという彼の申し出に、つくしの返答はケンモホロロだった。
 曰く。 
 『無理。今日は、旅行に出かけていた主人と息子が帰ってくるの』
 それがどうした…。
 そう言うにはさすがの司も大人になって、一般常識というものを心得ている。
 そうでなくとも、つくしが応じないのは熟知していた。

 この世で唯一、司の意を最優先にしない。
 平然と逆らうことができる。
 それがつくしなのだから。
 それでも、今日はつくしの誕生日だった。
 10年前のあの日の事を思えば、なおさらのこと落ち着くことができず、せめて顔なり見たいと思ったのは、いつもの我が儘でも傲慢でもなかった。
 ただ逢いたい。
 ただ顔を見たい。
 この年齢になっても、年端もいかない少年のように堪え性がなく、…そして一途な自分を嘲りたいような自嘲も感じはしたけれど、それでもそれが司にとっての唯一絶対の真実で、諸事に惑わされその自分の心を無視した結果が、この10年間の虚無であり司の絶望だった。
 彼女がいなかった日々のなんと辛く、苦しいものだったか。
 …もう、無理だ。
 あの日々を繰り返す恐怖を思えば、矜持など司にとってなにほどのものでもない。
 次の予定に使う書類を片手に、溜息をつく。
 と、鳴り出した携帯の着信音に、携帯を取り上げたのは無意識の意識で。
 その着信音がつくしの番号に割り当てたものではないと気が付く前に、うっかりと受信をタップしてしまっていた。
 …チッ。
 やはりプライベート用の携帯の番号を交換するべきだったとプチ後悔する。
 当初、仕事での再会だったから、ついそのまま仕事用の携帯のみでの連絡を習慣にしてしまっていた。
 とはいえ、むしろつくしが相手の場合、プライベートでの連絡よりも仕事を介した方が間違いなく通じは良いだろう。
 とってしまった以上は仕方がない。
 憮然とした表情のまま、応答する。
 「…はい」
 『Hello、司?サリーよ。今、成田に着いたところなの。どちらに向かえば、あなたに会えるかしら?』





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~ Comment ~

NoTitle

ぷはっ 息しないで読んでいた様で苦しくなってしまいました。
はぁっー 
凌君 しっかり2人の愛を受け継いでいるのですね♡

サリー?? きゃー またまた苦難? 

こ茶子さんに、次から次へと仕掛けられております。
もう目が離せないです。

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