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「中・短編」
一日遅れのハッピー・バースディ…15話完+α

一日遅れのハッピー・バースディ05

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 キョロキョロと自分を探す風情の女の姿に、小さく笑みが浮かんだ。
 自分がそんな風に自然に笑うなど何年ぶりなのかと、自分で自分に苦笑が溢れる。
 …どんだけなんだよ。
 ただそこに彼女が立っただけで、世界のすべてが美しく輝き出す。
 闇の底に漂っていた数年間が一気に吹き飛んで、彼女がいる世界だけが自分の全てだったことを容易に思い出してしまった。
 あ、とラウンジのソファに座る彼の姿に気がついたつくしが、小走りに歩み寄って会釈する。
 「…遅くなってすみません」
 他人行儀な言葉遣いが、当たり前のことなのに思いのほか司の胸をつく。
 かつての彼女だったら、彼を見つけた瞬間嬉しそうに笑ってくれたことだろう。
 背中まで覆うほどに長かった黒髪が、耳も顕なショートヘアになったように、今の彼女は過去の彼女とはまるで別人なのだと、あらためて思い知らされるたびに、それでも彼女へと傾いてゆく心が抑えられない。
 昔の牧野じゃねぇ。
 それはそうだ。
 目の前にいるのは、他人の妻である真々部つくしであって、彼が愛したあの牧野つくしではないのだから。
 それでも、新しい彼女に今度は惹かれている。
 それが過去の残滓ゆえなのか、あるいは他人の女である彼女への興味なのか、それとも…。
 「急にここまで呼び出して、すまなかったな」
 明日はつくしの誕生日。
 断られることはわかっていたし、そうでなくても彼にも予定があったのだ。
 今となってはくだらない…いや最初から、そんなことはわかっていて、どうせ人生が終わるまでのマネーゲームの一貫だと割り切っていた作業工程の一つ。
 恐れを知らない彼でさえ、身震いするほどにあまりに似通った状況。
 過去を彷彿させる『今』に既視感を覚える。
 …10年前のあの時と同じ。
 だからだったのだろうか。
 それさえも無意識な行動。
 どうしても今日逢いたかった。
 気がついた時には、彼女へと連絡していた。
 無理を押してでも、今日この場に来てもらいたかったのだ。 
 「今日の予定の都合が付かないならつかないで、キャンセルしてもらって後日でも良かったのに」
 「…迷惑だったか?」
 「いえ…」
 否定したものの、社交辞令だ。
 もちろん、そうに決まっている。
 昨日詰められなかった内装についての打ち合わせの予定を、午後一に約束していたけれど、どうしても司がその時間に空けられなかったのだ。
 結果、司がジェットで直帰した空港付近のこのホテルでの待ち合わせとなった。
 さすがに、雅也と凌が東京にいたなら、司の強引な申し出など断っていた。
 けれど今二人は、享と三人で雅也の実家のある長野へと出かけている。
 つくしも誘われたけれど、今回は断った。
 …さすがにね。
 仕事のこともあるが、彼らの事情を考えれば、緩衝役の凌はともかくとしてつくしまでもが同伴したのでは、雅也の両親の困惑も想像に絶するだろう。
 「上のレストランの個室を予約してある」
 「え?」
 「飯、お前もまだだろ?」
 たしかに時間的に少し早かったので、まだ夕食はとってはいなかった。
 一応、呼び出された場所が場所…一流ホテルのラウンジだったからTPOに添った格好をしてきているから、レストランで食事することも可能だったけれど…。
 「いえ、打ち合わせだけ先にしてしまいましょう」
 …デートじゃない。
 もう昔とは違う。
 何度となく自分に言い聞かせなければならない自分自身の心の箍に堅く鍵をかけて、それでも溢れ出してしまいそうな想いが怖い。
 「飯くらいでケチケチすんな」
 つくしの逡巡も意に介さず、さっさとソファから立ち上がって司が先に立って歩き出す。
 …もう、ホントにどういつもこいつも。
 考えてみれば物柔らかくはあるが、雅也もこうと言いだしたら聞かないところがある。
 …経営者ってやつは、みんなこんなもんなのかしら。
 溜息一つで、つくしも渋々あとに続く。
 さっさと先を歩いていたようだった司が、歩くスピードを緩めて、つくしの横へと並んだ。
 「…ちょっと」
 「……」
 何食わぬ顔で眉根だけあげて、チラ見してくるが、腰に回った手はなんなんだと、つくしが邪険に振り払おうとするがガッチリ掴まれて払えない。
 「やめてったら…」
 「エスコートしてるだけだろ。なに妙に意識してるんだよ」
 「そりゃそうかもしれないけど…パーティ会場じゃないでしょ」
 「お前も海外長いんだろ?旦那以外の男にエスコートされたことだってあるんだろうに、妙に意識するんじゃねぇよ?」
 「………」
 そのとおりなのかもしれない。
 けれど、ここは日本なのだ。
 そうでなくても、夫でもなく恋人でもない男にここまで密着されるのはおかしい。
 つくしの常識がそう訴えるのに、平然とまるで当たり前のことのように行動する司に抗う言葉が見つからない。
 言葉を探して、逡巡するつくしを見下ろして、司が柔らかく微笑む。
 「…似合ってるな」
 「え?」
 「その髪型。昨日…最初に見た時には別人みたいで驚いたが、今のお前にすげぇ似合ってて、イカしてる」
 「…そ、そうかな?」
 若い頃にはずっと長い髪だった。
 彼女自身、特にこだわっていたわけではなかったけれど、学生時代は単純に美容院代をケチってとかいう乙女にあらざる理由から、そして大人になってから目の前の男が、彼女の長い髪をいつも愛しそうに撫でてくれていたから。
 何度か、『お前の髪、綺麗だな』そんな風に褒めてくれたのが、嬉しくて…ただ彼に綺麗に思われたかった。
 だから…彼と別れてしまえば、必然髪型になどこだわる必要がなくなってしまったのだ。
 単純にショートの方が楽だから、いかにもキャリアウーマンの外見がクライアントの受けに良かったから…そんな理由。
 それを褒められて、なんて返せばいいというのか。
 …こいつったら、噂どおりにやっぱスケコマシになっちゃった?
 3度の結婚と離婚を繰り返し、今度は4度目の結婚に臨んでいるというのを、遠い異国の空にいたつくしもまた知っていた。
 どんな令嬢であるか。
 知りたくなくても、有名なこの男の身辺はいやでも耳に入ってきたのだ。
 「昔のお前もめちゃ可愛かったけど…今のお前は、いかにも大人の女って感じだよな」
 「………」
 その言葉の真意はなんなのだろう。
 一々、そこに意味を探すことこそ無意味なのだろうか。
 けれど…、
 「…あんたもね。立派な経営者ってやつになったじゃない」
 「そうか?」
 「噂に聞いてるだけだけどさ」
 ペロッと種明かしをするつくしの悪戯っぽい顔に、一瞬虚をつかれて目を瞬かせた司が、すぐに相好を崩して、彼女の腰に回した手にグッと力を入れる。
 「噂だけじゃねぇさ。今の俺は昔の俺とは違う。今なら…」
 しかし、司の言葉をあえて全て聞かずに遮って、つくしが燥いだ声音でエレベーターの到着を告げる。
 「あ、来た来た。私、ここのレストランって初めてなのよね。どんな美味しいものを出してくれるのかしら、凄い楽しみ」





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