FC2ブログ

「パッション…①24話②22話完」
ベイビー・ステップ…22話完

ベイビー・ステップ18

 ←ベイビー・ステップ17 →ベイビー・ステップ19
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ
【君を愛するために】オススメ作品!?
ランキングもよろ(・ω-人)
ブログランキング・にほんブログ村へ
いつも応援ありがとう♪
**************************************

 うそっ。
 目の前に突然飛び出してきたあたしに驚くその男の人は、あたしが想定していた人とはまったくの別人だった。
 中肉中背、メガネをかけた若い男の人で、もちろんこの間、銀行で見かけた眼光の鋭い人でもなければ、知り合いでもない。
 あたしを見てびっくり眼で固まっている。
 「す、すみません」
 いっひ~、えらい恥かきッ!
 慌ててクルリと踵を返し、手に抱えていたペットボトルを胸に抱え直し、足早に先を急ぐ…つもりが、
 「あのぉ」
 逆に、呼びかけられ足を止めた。
 「すみません、あの、駅は………」
 え、駅ッ?
 どうだっけと今来たばかりの駅への道順を頭に描いて振り返ろうとした瞬間―――。
 「ぎゃっ!!」
 いきなり背後から抱きつかれた!?
 ええっ?
 なになになに?
 頭の中は、何の繰り返しで、驚愕にとっさになにも反応できない。
 ぐわしっと痛いくらいに胸を掴まれて、我に返って抵抗しようとしたけど、すでに男の力で羽交い締めらていて身動きがとれなかった。
 …うそっ。
 ガンッ。
 鈍い音を立てて、手に持ったていたペットボトルが足元へと転がり落ちる。
 大声で悲鳴をあげたいのに、恐怖で舌が口の中に張り付いて上手く声を出せない。
 抵抗しなきゃって思うのに、ただただ、怖い気持ちばかりが渦巻いて、まるで腰が抜けたように身動きがとれなかった。
 そのまま塀へと体ごと押し付けられてしまう。
 ハアハアと荒い息が耳元で聞こえて、ゾッとした。
 「やだっ、は、離してッ!いやあぁぁぁぁっ」
 体を這い回ろうとする手に、死に物狂いで手足を振り回し、なんとか逃れようと身を捩る。
 「牧野様っ!!」
 声のした方向へと、必死で顔を向ける。
 あたしを羽交い締めていた男も、その声にビクッと体を揺らして、ドンッと突き飛ばされた衝撃に、コンクリートの地面に転がった。
 とっさに顔は庇った。
 ついてしまった手首や膝が熱い衝撃を伝えてきたけれど、今はまだ恐怖に痛みさえ感じられない。
 「大丈夫ですかッ」
 逃げていった痴漢を追いかけることなく、足元にかがみ込んで抱き起こしてくれる大きな手。
 その手に縋って立ち上がろうとするけど、やっぱり腰が抜けてしまったようで、膝がガクガクしてどうにも立ち上がることができない。
 「すみません、少し追いつくのが遅れてしまって」
 そう申し訳なさそうに謝ってくれた男の人は、銀行でひったくりに会った時に目があったあの男の人だった。




*****



 花沢家のSPさんに伴われて、交番を辞去した時には、もう深夜も回って午前を過ぎていた。
 花沢家のSP…まさに、あたしが予測を立てていたとおり、その男の人は花沢類があたしの警護のためにつけていてくれた護衛だったんだ。
 別に護衛をつけられるような重要人物でもあるまいに、って呆れた気持ちもあったけれど、銀行でのひったくりと今回のことでは大いにお世話になって、素直に感謝することしきり。
 ひったくりを捕まえてくれたのも、もちろんこのSPの谷さんだったそうで、あたしが相馬さんに助け起こされているのを確認して、犯人確保に走ってくれたらしい。
 その場でお巡りさんに引き渡さなかったのは、あたしに正体がバレないため。
 そのおかげで銀行のカードどころか、現金さえも全て戻ってきたのだから、本当にありがたいことだった。
 で、今回。
 なんていうか、凄い偶然だったというべきか、不運だったというべきか、それともやっぱりあたしって迂闊なおまぬけ女なのかと、ズーンと落ち込むことの顛末。
 結論から言えば、あたしに抱きついてきた男は、まったくあたしと関わりあいのない相手で、この谷さんを捕捉しようと待ち構えた挙句、たまたまいつもより後方で後をつけていた谷さんとの間に入り込んできた…正真正銘の痴漢だったというわけ。
 もちろんストーカーなんかではないので、これまであたしが感じていた気配は谷さんのものであって、その痴漢男ではなかった。
 なんともはや、よくもそんな偶然があったものだとは思うけれど、谷さんがもしいてくれなければと思うとゾッとする。
 普段、気の強いあたしだけど、やっぱりいざという時にはその気の強さも上手くは発揮できないんだな、と。
 手には武器(ペットボトル)まで持っていて、たしかにスポット的に気が抜けたタイミングだったといはいえ、いきなり抱きつかれて、男の力に叶わない事態に陥ったことでパニックしてしまったのだ。
 あの痴漢男がどこまでの無体をするつもりだったのかはわからない。
 でも…。
 谷さんがタクシーでアパートまで送ってくれたけど、震えが止まらないあたしを見かねて部屋の前まで送ってくれた。
 「大丈夫ですか?」
 「あ、はい。ありがとうございました」
 丁寧に頭を下げて、あらためてお礼を言うあたしを心配そうに、でも小さく笑って頷いてくれる。
 「もしよければ、ご実家の方にお送りいたしましょうか?」
 「……あ~」
 考えないでもなかったけれど、明日も仕事があるし、実家だと会社から少し遠くなって通勤には不便だ。
 それにこんな真夜中に押しかけて、パパやママに心配かけるのも本意ではなかった。
 「大丈夫です。心配までしていただいてすみません」
 「いえ、私は仕事ですから」
 「それでも、あたしのためにこんな真夜中まで、骨を折っていただいたことには違いがありません。本当にありがとうございました」
 谷さんが頷いてくれた。
 「私はこれで失礼しますが、また明日、伺いますので、しっかり戸締りをなさってください。…もしご心配なようでしたら、もうしばらく外で警備を続けましょうか?」
 「ええっ?いえいえ、へ、平気です。どうぞ、お帰りになってください」
 でも、いやいや、という押し問答を何度か繰り返し、結局は谷さんになんとか納得してもらった。
 「では」
 「はい、お疲れ様です」
 谷さんに、促されて部屋へと入る。
 …あ、警護を断るのを忘れてた。
 と、いうか、たぶん、谷さんは雇われているだけだから、護衛を断るなら花沢類の方に直接するべきなんだろうな。
 でも今は、それさえも躊躇していた。
 いくら付き合っているからって、そこまでしてもらう謂れはない。
 そう思っていたのに、今はありがたくって、逆に一人歩きをするのが少し怖かった。
 …どうしよう。
 もう少しだけ花沢類の好意に甘える?
 とりあえず、今日はもう寝てしまおう。
 花沢類に連絡は…変に甘えてわけのわからない我が儘を言ってしまいそうな気がする。
 自分でも動揺して情緒不安定な自覚があった。
 とりあえず、ひと眠りして…そして明日また連絡すればいいかと、あたしは大きく息を吐いた。





◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ





↓ランキングの協力もよろしくです♪
ブログランキング・にほんブログ村へ 💛 
いつも応援ありがとうございます^^!

web拍手 by FC2






関連記事


総もくじ 3kaku_s_L.png イベント
総もくじ 3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ 3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ 3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ 3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ 3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 倉庫
総もくじ  3kaku_s_L.png イベント
総もくじ  3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ  3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ  3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話+
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ  3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話^
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ  3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ストック
もくじ  3kaku_s_L.png R短編集
もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ R
もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛の品格 R
もくじ  3kaku_s_L.png 愛妻生活 R
  • 【ベイビー・ステップ17】へ
  • 【ベイビー・ステップ19】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【ベイビー・ステップ17】へ
  • 【ベイビー・ステップ19】へ
にほんブログ村 小説ブログへ💛
スポンサーリンク