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「中・短編」
犬も食わない…30話完

犬も食わない30~完

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 「は、初めてだからさ」
 平然としていられないだけなんだと言ってくれるお前。
 「…あたしがあんたのこと凄い好きだってこと、信じてくれる?」
 「ああ」
 「だ、大学部に行かないのもさ、行きたくないんじゃなくって…」
 黙って遮らずに、耳を澄ませて言葉を待っていれば、牧野も恥じらいながらも素直な気持ちを話してくれる。
 「なんていうかさ、大学にいるあんたは遠く感じるっていうか、凄く大人に見えて…気後れするの」
 「気後れ?」
 「…たぶん、会社にいるあんたを見たらもっとそれを強く感じる気もするけどさ、今は大学にいるところしか見ていないし」
 気後れ、とか、大人になったとか言われても、高校を卒業してまだ1年も経っていない。
 俺にしてみれば、それほど意識の違いはなかった。
 まあ、それでも、認識は180度変わったことは確かだ。
 昔はいやいや学校に通って、将来のことなんかなにも考えていなかった。
 ただ時がすぎるのを待っていた、それだけ。
 どうせ決められた未来、ロクでもない将来になんの希望も展望も持っていなかった。
 けど、今は違う。
 牧野との未来のため、これからもこいつとずっといられるために、そう思い定めたらすべてが変わった。
 大学でも会社でも、少しでも吸収できるものは吸収して、力を持ちたい。
 認められたい。
 もしかしたら、そうした俺の姿勢が牧野のいう気後れや、大人になったという意味なのかもしれなかった。
 「それにあんた、女の子も近づけるようになったでしょ?」
 「…俺が?」
 それこそ心外な言葉で、俺にはまったく思い当たることがない。
 「ほら、昔はあたし以外の女の子が近づくのも嫌がって威嚇してたじゃない」
 「…もしかして、嫉妬した?」
 俺としては冗談のつもりで、妙に素直なこいつに馴染まなくって、茶化したつもりで反発してくるのを予想していた。
 けど、牧野はそうしないで、少しだけ迷ったようだったけど、結局コクンと頷き俯く。
 「もちろん、あたしだってわかってる。あんたがその子達に興味があるわけでもないし、特に愛想してあげてるわけでもなくって、ただ許容しているだけってことはさ。それでも…あんたがそうして成長したことは悪いことじゃないのに…、本当にそう思うのに。時々それがすごく不安で、あ、あたしの道明寺に触らないでって、そ、そんなことを思ったり、した」
 「………」
 自分で聞いておいて、二の句が告げなくなった。
 「…い、嫌になる?」 
 「わけねぇ。つーか、逆に嬉しい」
 「そ、そう?」
 キョトキョト、キョドった目がすげぇ頼りなさげで、俺の庇護欲を唆る。
 なんだよ、今日のお前、素直さの大盤振る舞いじゃねぇか。
 ちょっと怖ぇくらいだ。
 やっぱ、熱出してどっか、ネジ飛んでるな。
 それなら、俺もと、言いたかったことを言うことにする。
 まあ、…俺の場合はいつも言いたいこと言ってるんだけどな。
 ただ、普段は俺が嫉妬丸出しにすると喧嘩になって、まともな会話にならないってだけで。
 「……俺も、お前が類とばっかいるのを見ると、めっちゃムカつく」
 「はは、いつも言ってるよね、それ」
 「他の男を見るだけでも、そいつを殺したくなってくるな」
 「…それくらいで殺さないでよ」
 ハァとため息をつき、それでもいつものようには噛み付いてはこない。
 「…あたしが類といるのはさ」
 「………」
 「マイナスイオン効果っていうかね」
 「マイ茄子硫黄効果?」
 …お前の茄子には硫黄臭でもあんのか?
 つーか、マイ箸だの、マイなんたらつーのは確かによく聞くけど、茄子まで自分専用?
 意外な牧野の一面にプチ驚く。
 「……いや、ツッコミようがないくらい見事なボケだけど、面倒臭いからそれは置いておいて」
 「おいこら、面倒臭いとはなんだ、面倒臭いつーのは」
 「そこじゃないでしょ。とにかく、花沢類はあたしにとって癒される存在ではあるけど、森とか自然とかそういうのと同じで、彼に男を感じたりはしないわけ」
 「…男を感じない?お前の初恋の男だろうよ」
 「うっ…また、古い話を。あんたいつもそれ言うけど、それはもう過去の話!いいかげん、その話から離れてよ」
 離れられるかよ。
 ムカつくことに、一生忘れられないこと間違いなしだ。
 「他の男の人たちにしても、そりゃあ普通に話したりはするけど、ただそれだけで、まったく異性を意識したりしないの」
 「………」
 「ホントだって。じゃあ、なに?あんたは周り中の女の子たちを意識して魅力感じたりしてるわけ?」
 「ふざけんな。いてもいなくてもかわらねぇに決まってんだろ」
 牧野以外の女なんて目にも入ってねぇし、たとえ口をきいても犬猫とそう変わりはない。
 煩く口きいたり、媚び売ってこねぇだけ犬猫の方が、もしかしたらマシかもしんねぇ。
 「あたしも同じ。あたしにとって男を感じるのはあんただけなの」
 「………」
 「嬉しい?」
 「うっせぇ」
 覗き込まれた顔が真っ赤なのは自分だってわかってる。
 一々指摘するんじゃねぇよっ。
 「やっぱ、お前、まだ熱あるな」
 「…まあ、多少はね。でも、そのセリフってどこにかかるわけ?」
 「妙に素直すぎて、怖ぇえ」 
 「ははは…」 
 乾いた笑いを漏らして、少し咳をする。
 さすがに少し疲れたのか、心なしぐったりとしてきた気がする。
 「…疲れたか?」
 「うん、ちょっとね」
 抱えていた小さな体を楽なように抱えなおしてやる。
 「こうしててやるから、少し眠れよ。邸について、飯の支度ができたら起こしてやる」
 「……うん、ありがと。あのね」
 「うん?」
 寝るのかと思ったら、胸元から上目遣いで見上げられて胸が動悸打って仕方が無かった。
 病人だからと堪えてるけど、密着した柔らかな体の感触やうっすらと香る牧野自身の甘い匂い。
 たぶん、汗をかいてるせいもあるんだろうな。
 いつもはほとんど無臭なのに、甘い匂いが俺の頭をクラクラとさせる。
 その上、ただでさえガツンとくる上目遣いは熱で潤んで威力を増してやがるし…これで手を出せないとかどんだけ拷問なんだよ。
 しかも、俺に触れられるのは嫌じゃないとか宣言されてるのにだぜ?
 「どんなに好きあっていても、互いの気持ちなんて見えないものだから、言葉にすることが大事なんだって」
 「………」
 「口に出して言わないと伝わらないことがあるし、素肌と素肌が触れ合うことで感じあえる気持ちもあるって、ある人に教えてもらったの」
 「……そうだな」
 本当にその通りだと思う。
 俺自身もできるだけ牧野に、自分の気持ちをブツけてきたつもりだったけど、それでもプライドが邪魔したり、あるいは嫌われたくない気持ちがセーブしていた気持ちだってあっただろう。
 …あんまり情けねぇとこ見せられねぇしな。
 眠らせる間もなく車が邸に到着して、一旦話を区切る。
 案の定、牧野が恥ずかしがって抵抗されたが、それを制して強引に抱き上げる。
 「恥ずかしいなら、寝たふりしてろ。そうしたら誰もお前に話しかけねぇし」
 「……うん」
 素直に眠ったふりの牧野の頬にキスを落とすと、ピクリと顔を顰めた。
 ふっ。
 文句を言いたくても言えねぇよな?
 もちろん、確信犯に決まってる。
 出迎えに出てきた使用人たちも無視して、さっさか部屋に入る。
 奥のベッドにそっと下ろしてやると、寝たふりをしていただけのはずなのに、牧野は小さな寝息をたてて眠っていた。
 …そりゃそうか。
 多少熱が下がったにしろ、まだまだ触れる素肌は平熱には程遠く、いつもより格段に熱い。
 ベッドに寝かせた牧野の髪や頬をできるだけ優しく撫でてやって、額と唇に軽くキスを落として…少しだけパジャマの襟元を肌蹴させ、そこにキツく吸い付いて俺の印を刻み込む。
 …これくらいいいだろ?
 ちょっと襟ぐりが開いた服を着たら見えるか見えないかの位置。
 起きたら、激怒されそうだが、それも楽しいかとほくそ笑んだ。
 「今は眠れ。元気になったら、続き…するからな」
 名残惜しくベッドから立ち上がって、時計を確認する。
 使用人たちに飯ができたら牧野を起こすように言いつけて…。
 「ああ、仕事行きたくねぇな」
 それでも帰ってくれば、今日は牧野がいる。
 一刻も早く仕事を片付けて、こいつの所に戻ってこよう。
 「あ、そうだ」
 牧野に言うのを忘れていたことを思い出した。
 総二郎とあきらに吹き込まれたジンクス。
 牧野が静に言われたとかいう言葉―――いい靴は素敵な場所へ連れて行ってくれる、とかいうのを想定して、あいつに新しい靴を買ってやったんだが。
 「恋人に靴をプレゼントするとその靴を履いて逃げられる…とか冗談じゃねぇっつーの」
 俺が買ってやった靴を早々に捨てさせねばと思いつつ、俺は牧野の眠る部屋を後にした。




~FIN~





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