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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第九章 暁闇②

昏い夜を抜けて469

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 もちろん予想していた…というより、ここ2日の経験から熟知していたことだったが、気まずい…。
 さすがに道明寺邸の食堂ほどには遠大な長さのあるテーブルというわけではなかったが、むしろつくしにしてみればそれくらいの距離があった方が良かった。
 けれど、志保子の方にはそんなつくしが感じている気まずさなどまったく感じてもいないのか、黙々と優雅に食事をしている。
 上品な仕草にはよどみがなく、もちろん、…会話もない。
 …なんだって、あたしを呼ぶんだろう。
 まさに、そうとしか言いようがない。
 が、一緒に食事をするようになって3日目にもなって、多少なりとも余裕が出てきたからだろうか。
 つくしが眼前に並べられた食事に、四苦八苦しながら取り組んでいると、必ずと言っていいほどに視線を感じる。
 顔を上げれば、何食わぬ顔で視線を外されてしまった。
 しかし、そんなことを何度か繰り返しているうちに、つくしも気がついた。
 …見られている。
 おそらく、志保子にしても自分がつくしを観察していることを知られたくないのだろう。
 最初、その視線がつくしのテーブルマナーや礼儀作法など、アラを探しているのかと緊張させられた。
 だが、どうやらそうではないようだ。
 いや、もちろん、そうした意味合いもそこにはあったのかもしれない。
 けれど、不思議につくしはそれだけではないような気がしていた。
 つくしへの興味。
 息子が選んだ、あるいは誑かされた女への興味だったのではないだろうか。
 慎重に引いたつもりだったはずのナイフが皿に触れて、キイイイイッと耳障りに甲高い音を立てた。 
 …ひっ。
 内心、青ざめる。
 普通だったら周囲に聞こえない程度のものだったが、シーンとした静寂の中、特に緊張に晒されているつくしにとっては思いのほか大きな音に思えて、気分は漫画やアニメの世界でいう顔に縦線が入っている状態だ。
 焦る気持ちのままに慌てた手が滑って、切っていた肉が宙を舞う。
 ひゅ~~~ん。
 ポテ…。
 ガチャガチャッ、ガッツン。
 そんな感じ?
 動揺のあまりナイフまで落としてしまっていた。
 「うひぃ………」
 とっさに飛び出してしまった奇声。
 もう全身、汗が噴き出して止まらない。
 目の前の志保子の反応が怖かった。
 さぞや軽蔑もあわらな冷たい目で見据えられているだろう。
 けれど、いつまでもそのままの姿勢で固まっているわけにもいかず、おそるおそる上目遣いで志保子を伺う。
 が…。
 予想に反し、つくしを見つめていた志保子の顔は、まさにポカンとしたもので…。
 いままで彼女の前で、そんな粗相をしたものなどいなかったのかもしれない。
 驚き…というよりも、唖然としていた。
 しかし、徐々に状況が理解できてきたのか、眉根を寄せ、顔を歪めてつくしから顔を背ける。
 身の置き所がない。
 それでもなんとか声を振り絞って、つくしは謝罪した。
 「す、すみません」
 「…………ぷっ」
 ぷ?
 たしかに志保子の方から聞こえた。
 もちろん、志保子は笑ってなどいない。
 ただ上品な仕草で手に持ったフォークをテーブルに置き、空いた手で口元をそっと隠しただけ。
 …もしかして、今、笑った?
 それこそ信じられない。
 つくしにしてみれば、志保子など動くフランス人形くらいなイメージで、感情を表に出すことがあるなどまさに青天の霹靂だ。
 マジマジと見つめるつくしの前の志保子の様子はほとんど変わらないのに、それでも、それまで漂っていた緊迫していた空気がわずかに緩む。
 「あのぉ」
 「……ごほん。誰か、牧野さんに代わりのナイフを持ってきて差し上げて」
 声音にはまったく動揺もなければ、笑いの余韻もない。
 だが、嘲るものでもなく、つくしの肩の力が抜ける。
 控えていた使用人に新しいナイフを渡され、礼を言い、飛んでしまった肉片も片付けてもらって恐縮した。
 再び、静寂が戻る。
 つくしはつい食事へと戻った志保子をジッと見つめてしまっていた。
 「…何かしら?食事中に、人の顔を凝視するのは無作法なのではなくって?」
 「あ…すみません」
 けれど、ここで押し黙ってしまっては、ここ2日と同じ時間を過ごし、終わるだけ。
 叱咤されたり嘲笑されなかったことに勇気を奮い立たせ、思い切って話しかけてみる。
 「あの……ここへは、類さんもよくいらしてたんですか?」
 チラッと視線をくれた目が、何を言い出すつもりだと言っていた。
 怯んではいられない。
 志保子の視線の意味に気がつかないフリで言葉を続ける。
 話題はなんでも良かった。
 ただ、志保子と共通の話題と言えば、類のことしかなかっただけのこと。
 「そ、その学生の時とか」
 「さあ、どうかしら。私自体があまり日本にいなかったから、あの子がどう過ごしていたのか、私はあまり知らないの」
 …答えてくれた。
 実は無視されるのではないかと危惧していたのだ。
 「私より、むしろあなたの方がご存知なのではなくって?」
 「え?」
 思わぬ言葉に、驚いてつくしが首を傾げた。
 「あなた、あの子が高校生の時からのお付き合いなんでしょう?」
 「あ……」
 お付き合い…そう言えるほどの交流はほとんどなかったので、どう答えたものか。
 「英徳の1年後輩だと聞いているわ。総二郎君や、あきら君、……司君とも?」
 「…はあ、まあ。知り合い、という意味では類さんにも覚えていてもらっていたとは思います」
 当時、英徳に在籍している生徒の中で、彼らF4の存在を知らないものなどいただろうか。
 教師たちですら、彼らには口出しできない権力を持っていた。
 支配者―――まさに、それが彼らだったのだ。
 その中で、つくしはたしかにある意味、特異な立場だったと言えるかもしれない。
 間違いなく、つくしにとっても類は特別な存在だった。
 憧れ、恩義、好意…そして、幼く拙いながらの初恋。
 けれど、当時、類の中で、つくしの存在はどれほど心に留めてもらえるほどの存在感があっただろう。
 つくしにもわからない。
 しかし…。
 「あの子の…」 
 「はい?」
 志保子にしては珍しく躊躇しているようで、口にしかけて言葉を呑む。
 だが、結局、尋ねることを選んだようだ。
 「高校生の頃の類は、どんな風に学生時代を過ごしていましたか?あなたの目から見たあの子は、どんな高校生だったのでしょう?」





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