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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第九章 暁闇②

昏い夜を抜けて468

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 トゥルルルルルルル…、トゥルルルルルルル…、トゥルルルルルルル…。
 「………」
 携帯電話の通話を切り、志保子は小さく溜息をついた。
 元々彼女からの電話を厭っていた息子だ。
 いまさら着信拒否をされたところで、驚きはしなかったが、それでもこの時期―――志保子がつくしを拘束している現在、連絡どころか、まったくの消息を絶っている理由を考えざるえない。
 単純に、つくしの身柄を志保子が抑えていることを類が知らないのだろうか。
 それとも、自分の進退に追われ、女どころではないとやっと自覚を持って何らかの方策を練ってでもいるのか。
 どちらにせよ、連絡が取れないのでは、せっかく抑えた『つくし』という駒も半分以上、活かすことができない。
 …牧野さんのことは、どうでもいいの?
 そんなはずないだろうと思うのに。
 つくしの安否と引き換えに、類への圧力を加えようにも、このままでは志保子にしても、どうにも動きようがなかった。
 カツン、カツン、カツン、カツン。
 指先でテーブルの天板を弾く。
 いつもは彼女の苛立ちを宥めてくれる規則的な物音がかえって耳障りに聞こえて、堪えていた癖の、爪を噛む仕草が出てしまう。
 あっという間に剥けた爪の隙間から、赤い血が滲んで痺れるような痛みが沸いた。
 この痛みが、軋む心の虚ろさから目を背けさせてくれたらいいのに。




*****




 コンコン。
 「はい」
 「昼食の支度がもうすぐ整いますので、ご都合がよろしければ食堂の方へいらしてください」
 「…わかりました」
 つくしは返事をして、小さく溜息をついた。
 北軽井沢に在所する花沢家の別荘に監禁されて、およそ5日。
 豪奢な内装に違わず、室内の施設も贅沢なもので、おそらく全室にトイレやシャワー、ミニバーが併設され、テレビやちょっとした娯楽用品も完備されているのだろう。
 つくしに与えられた客室にも当然それらのものは完備され、特に部屋から出られずとも不便はなかった。
 けれど、自分の意思で閉じこもっているのならばともかく、見張りが付いた状態での監禁はかなり堪えた。
 やはり司の邸での軟禁状態にそれほど苦痛がなかったのは、自由度が高かったからだろう。
 話し相手にも、桜子や滋が呼ばれ、かなりつくしに配慮した状態だった。
 それが、部屋の外にはSP。
 清掃や食事の支度に訪れる使用人たちも言い含められているのか、まったく雑談に応じてくれず、たとえ室内での自由はあるにしてもかなり苦痛が多かった。
 何より辛いのが、孤独。
 ついで何もすることがないという状態が、キツい。
 ただでさえ、つくしは活動的な方で、その上、人好きのするタチでありそれだけに人との関わりを好むタイプだったから。
 窓から見ることができる外の世界を覗く自由だけでは、とてもではないが早晩心を病みそうな危機さえ抱く。
 けれど…、どんな気まぐれなのだろう。
 初日以外まったくつくしと接触を持とうとしていなかった志保子に、つい2日前から昼食を誘われるようになった。
 一日のうち、この時間だけ。
 密かに助けを求めることを期待していたまり子は、どうやらつくしをここに連れてきた次の日には帰って行ってしまったようだ。
 今思えば、もっと危機感を持ってまり子に、助けを求めるべきだったように思う。
 しかし、つくしは選んだ。
 自分の意志で。
 逃げない。
 今度は逃げださない。
 それに唯一、救いと言って良いかはわからなかったけれど、志保子は他人を巻き込んでつくしを脅そうとしなかった。
 かつてつくしが楓に折れたのは、つくし自身への脅迫ゆえにではなく、まったく関係のないはずの友人たちを盾に取られたからだ。
 今回、志保子がそうしなかったことだけが、せめてもの救いと言えるのかもしれない。
 だが…。
 …だからって、どうすればいいかなんて、まったくわからないんだよね。
 結果、唯々諾々とただ拘束されるままに、ここで無意味な日々を過ごしている。
 いったいいつまで。
 志保子が納得して、諦めるまでだろうか。
 それは何を指す?
 あと気になるのは、類の現状だったが、それはつくしが心配しても解決できることでもないだろう。
 …それとも、あの人が望むようにする?
 バカバカしい。
 たしかに類を愛している、という意味では彼を庇うことこそ本分なのかもしれない。
 けれど、つくしにはそんなつもりはまったくなかった。
 罪は罪。
 彼自身を赦すことと、その罪自体を赦すことはまったく別のことだ。
 それに、おそらく、そういう庇い方をすることを類が望むとも思えない。
 第一、つくしは疑っていた。
 もしかしたら、あの記事を出させたのは…。
 コンコン。
 再び叩かれたノックの音に、つくしはハッと我にかえる。
 「申し訳ありません、牧野様?奥様がお待ちなのですが…」
 どうやらいつの間にか、すっかり物思いに耽ってしまっていたらしい。
 とりあえず今は、一日のうちで唯一、人と会話を交わせる機会に望むべきだろう。
 それがたとえ、今この状態を作り出している張本人との気まずい会食であろうとも。
 「ごめんなさい、今行きます」
 詰めていた息を吐き出し、つくしはゆっくりと居間のソファから立ち上がり、部屋の出口へと向かった。





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