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「中・短編」
Middle story(2~5話完結)

イナビリティ・ワールド 後編

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 あたしが道明寺と別れたのは4年前。
 道明寺がヨーロッパ支部へと転勤になる直前だった。
 4年の約束通りNYから日本に帰ってきたあいつとの付き合いは、わりと順調だったと思う。
 たぶん―――最初の頃はだけど。
 あれほど問題だったあいつのお母さんのことは、認められてるってわけじゃなかったけど邪魔をされていたわけでもなかった。
 静観…そんな感じだったのかな。
 それとも見てみないフリ?
 じゃあ、どうして別れたの?って聞かれたら、あたしにだってこうだとハッキリ答えられる答えがあるわけじゃない。
 曖昧?
 そうだよね。
 たぶん…あいつが忙しすぎたってことなんだろう。
 それでもあたしが学生だった頃は、まだ我慢が出来た。
 あたしがあいつに都合を合わせれば良かったから。
 ちょうどあたしが社会人になった頃だったかな。
 道明寺グループがどうのってわけじゃなかったけど、状況がかなり激変した。
 あいつが変わったのか、それとも、あたしがいつまでも成長できなかっただけなのか。
 忙しい中でも一週間に一度から二度くらいは逢えていたのに、あいつに逢えるのは半月に一度。
 まともなデートなんて夢のまた夢。
 1ヶ月電話さえもない時もあって、あたしから電話してもいつも多忙で会話なんてできなかった。
 言いたいこともロクに言えないままに電話を切ることも普通で、遠恋時代だったら距離が理由付けになったけど、コミュニケーション不足が深刻だったのだ。
 そうこうしているうちに、あたしの方でも電話をかけることさえ気後れしてかけられないようになっていた。
 一介のOLとは立場が違う。
 分刻みのスケジュールをこなしている人間の時間を、くだらないことなんかで煩わせたりなんかできるはずもない。
 そうこうしているうちに、たまに会える時も忙しなく肌を合わせるだけ。
 顔を見て、言葉を交わす間もなく抱き合って眠って、目覚めた時にはあいつのコロンとタバコの香りだけしかないなんて、それってどういう関係なの?
 …あたしってあんたのなんなの?
 どうにも苦しくて、なのにそれを言えるほどあたしは可愛い女じゃなかった。
 意地っ張りだった。
 注ぎすぎた盃から水が溢れるようにっていうのかな、不満が蓄積してしまっていた。
 いつの間にかあいつが結婚を言い出さなくなっていたのも、要因の一つだったのかもしれない。
 たぶん、些細な喧嘩がキッカケだったんじゃないかな。
 あの頃にはもう互いに見て見ぬフリをしていただけで、いつ別れてもおかしくなかった。
 だから、本当にいつもの小さな喧嘩が引き金になってしまったんだよね。
 怒鳴りあって、詰りあって…プッツンきてしまったのは衝動だったけど、たぶんずっと考えていたことだった。
 『…別れたい』
 驚いていたあいつの顔。
 それでも予想してたんじゃないの?
 激高しない冷静なあいつの様子で気がついた。
 ちょうどその時期、あいつにはヨーロッパ支部への転勤の話が出ていたらしい。
 4年かけてヨーロッパを回るから、ついてきて欲しい…て。
 バカにしてる。
 そう思った。
 さんざんあたしを放置してきて、なんの相談もなくいきなりヨーロッパ?
 しかも喧嘩の売り言葉に買い言葉の末にだよ?
 仕事を辞めろ?
 あたしなりに頑張っていたつもりだった。
 恋も仕事も、全力投球だったんだよ。
 だからあたしの出した結論は―――さようなら。
 たぶん先が見えない恋に、疲れ果てていた。
 だって、この状態が永遠に続くことが身に染みてわかったから。
 …そりゃあ、しばらくは辛かった。
 ましてやヨーロッパ転勤と同時に、あいつには政略結婚の話もあったっていうことだしね。
 でも過ぎ去ってみれば、もう遠い過去の話だ。
 どう考えたって、もう二度とすれ違うことさえも難しい相手。
 時々…本当に時々、こうして雑誌の中のあいつの近況を窺い知って、懐かしく思うだけ。






*****






 4年ぶりに見かけたあいつの姿は、まるで蛹が蝶に変わったかように一瞬で俺の目を奪った。
 …すげぇ綺麗になってる。
 高校生だったあいつと離れて、4年間の遠恋を終えた時にも思った感慨。
 会うたびに、あいつに惹かれる。
 俺にとって、まるで磁石のような魅惑を持った女。
 忘れるつもりだった。
 忘れなければと…何度も眠れぬ夜に涙した。
 この俺が女に連綿と未練があるとか。
 自分でも女々しくて、本当に笑っちまう。
 でも、しょせん無理な話だったな。
 俺があいつを忘れることなんて、到底できるはずがない。
 一目見ただけで時が戻った。
 まるで高校生のガキのように、ときめくこの胸の鼓動と熱。
 世界が変わる。
 色彩が戻った。
 熱い血潮が激って、もう一度あいつが欲しいと叫びだす。
 リムジンの窓越しに見るあいつの笑顔が眩しい。
 付き合っている頃にはいつの間にか、あの笑顔が消えているのに焦ってばかりだった。
 いつあいつが愛想を尽かすかと怯えながらも、仕事に追われる日々。
 結婚したくても、半人前の俺にあいつを守りきれる力がなかった。
 高校生の時には容易く口にできた結婚が、社会に出て現実を知れば知るほど難しくなった。
 バカみてぇだな。
 俺らしくもない。
 それでも触れ合う素肌から俺の愛情が伝わればいいと、言葉と時間を惜しんであいつを抱いた。
 それだけで俺の中の疲労もストレスも癒されて、まるであいつに守られているような気さえしていた。
 けど…あいつはそうじゃなかったんだな。
 独りよがりな思い上がりが生んだ結果の空虚な4年間。
 小さく手を振って出迎えたあいつのもとへと歩み寄る男の姿に、ギリリと奥歯を噛み締める。
 4年前まで、その位置にいたのは確かに俺だった。
 あいつに微笑みかけられて、出迎えられ、あいつを幸せにする権利を持つただ一人の男は俺だったはずなのに。
 …取り戻す。
 どんなことがあっても。
 たとえもうお前が俺を愛してはいなくても、他の男を愛しているのだとしても。
 …言っただろ。地獄まで追いかけると。
 「支社長」
 見入っていた光景から、呼びかけてきた西田へと視線を戻した。
 「…こちらが夜の打ち合わせの資料になります」
 「企画は検討し直させてるのか?」
 「はい。担当チームの責任者を交えて改めて打ち合わせることになっています」
 「……ふん」
 渡された担当者の資料。
 牧野と微笑みあっていた男の顔写真を睨む。
 …上等だ。
 俺にとって唯一絶対のピースである女。
 お前がいなければ、俺にとってすべてが無意味、何一つ完全なものにはならない。
 …待ってろよ。




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切ない、、でもこのお話大好きです^😍

中途半端

どれも中途半端でとまった話ばっかりでがっかり。最後まで終わらせて次を書くことできないのか
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