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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第九章 暁闇②

昏い夜を抜けて456

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 「離してっ!!」
 強い力で半ば引きずられ、踏ん張る余裕もなく広間から連れ出された。
 どのみち、出てゆくつもりだった。
 今日、明日、明後日と引き伸ばしても、結局つくしの中で司に応えられるものがない以上、わかりきった結論。
 ただそれを言い出せないでいただけ。
 …違うか。
 ずっと言い続けていた。
 あの痛みに満ちた眼差しを向けられる苦痛を、なに食わぬ顔で無視しながら。
 晴れた日には外でガーデンパーティも行われる道明寺邸の広大な庭は、深い闇夜に沈んでいた。
 芝生の庭に埋められた、仄かな明るさの外灯が、むしろ無人の寂しさを際立たせる。
 もっとも、つくしの中で雨の日に良い思い出はなかったから、単なる彼女の心象風景の反映にすぎなかったのかもしれない。
 「もう、いいかげんしてっ!」
 人目を避けて外廊下を闊歩する司の大きな手を力いっぱい振り払う。
 司も、いいかげん人通りが切れ、一応は折り合いをつけたのか、あえてそれ以上の無理強いは控えた。
 それでも熾火のように怒りに燃える目が、けっして彼女の言い分を認めたわけではないことは、つくしにも理解できた。
 「…帰るだと?お前はいったいどこへ行くつもりだ」
 「少なくても、ここはあたしのいる場所じゃない。…あたしの意志の薄弱さが、ズルズルとここまで引き伸ばしてしまったことは謝る」
 「謝罪が欲しいわけじゃない。何度、そう俺に言わせるつもりだ」
 「それでも、あたしにはこの言葉しかない。あんたに対する気持ちはもう過去のものなの」
 真っ直ぐな眼差し。
 初めて出会った頃から、彼女は常に彼に屈することなく、自分の意思を曲げずに対峙してきた。
 どんな屈強な男たちさえも恐れる司の眼光を撥ね退け、絶対に負けないんだと強い眼差しと矜持を持ち続ける彼女の輝きに、司は感嘆し一目で惹かれたのだ。
 「あたしは類のところへ行かなければならないの。もう彼を一人っきりにすることはできない」
 それは完全なる司への拒絶。
 かつてなにものにも変えがたく、傍に居て欲しいと願った女が、他の男を選んで、そのそばにいると宣言して、再び彼を捨てようとしている。
 とっさに伸ばした手が、再びつくしの手を掴んで、強い力で引きずり寄せようと力を込めた。
 「やっ!道明寺ッ」
 抱きこもうとする力と逃れようとする力が拮抗し、相争う勢いに負け、先に力で劣るつくしの方がバランスを崩す。
 「きゃっ!」
 上がった小さな悲鳴。
 「あぶねぇっ」
 背中向きに倒れ掛かるつくしの体を受け止めて、庇った彼女ごと司が地面へと転がり込む。
 ガッ。
 「…ぐっ」
 鈍い音がして、堪らず呻いた司の声に、目を瞑ってしまっていたつくしがハッと顔を上げる。
 目を瞬かせて見上げれば、司が痛みに顔を顰めていた。
 「だ、大丈夫?」
 「……つぅ」
 …大怪我をしたのかもしれない。
 先ほどまでの攻防を脳裏から追いやり、心配したつくしが司の様子を見ようと、慌てて伸び上がる。
 しかし、その急な動きが、彼の腕から逃れようとしているのだと司を勘違いさせてしまった。
 「…行かせねぇッ!!」 
 「ちょっ、…なに??」
 突然の状況の変化に、驚愕し、呆然と司の顔を見上げる。
 まるで磔のように、両手を顔の横で押さえつけられて身動きができない。
 司が彼女を、見下ろしていた。
 表情のない冷たく昏い顔。
 けれど、つくしにはわかっていた。
 そんな顔をする時、司は傷ついている。
 そして、いつも傷つけているのは彼女なのだ。
 誰も彼を傷つけることなどできないというのに、唯一つくしだけがいとも容易く司を苦しめ傷つけ続けてきた。
 …哀しませたいわけじゃないのに。
 それでも…。
 「あんたとあたしは終わったの。あの時、あたしたちの道は別れた」
 「牧野ッ!」
 「あんたはあの時…あの雨の中、あたしを引き止めなかった。追いかけてくれなかったじゃないッ」
 司のせいじゃない。
 一方的に終わらせたのはつくしの方で、責める言葉も資格もありはしないのだとわかっている。
 それでも、つくしはわかって欲しかった。
 「…あたしもあんたではなくって、違う人間を選んだ。友達を選んだんだ。だから、あの時に全ては終わった。あたしたちはどちらも二人でいる道ではなく、別れる道を選んだんだよ」
 そう、司もまたつくしとの別れを受け入れてしまったのだ。
 たとえ、そうだと自覚していなかったのだとしても。
 かつて総二郎は人と人との出会いは一期一会だと嘯いていた。
 そうであったなら、確かにあの時こそが二人の一期一会、未来をともに生きるための今だったのに違いない。
 眼差しと眼差し。
 互いの目の中に映っているのは、確かに互いの顔だけなのに、なんて遠く隔たった場所へと来てしまったことか。
 「…道明寺」
 「…………」
 「道明寺ッ」
 「…それなら、奪えばいいのか?」 
 「え?」
 怪訝につくしが眉根を寄せる。
 苦しげに歪んだ泣き笑いじみた顔に浮かんだ狂気。
 「お前を強引に奪ってしまえば、そうすればお前は俺のものになるのか?どこにもいかないのかよ?」
 つくしが息を呑む。




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