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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第九章 暁闇②

昏い夜を抜けて455

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 不慣れなパーティで、自分のことに精一杯だったから、まったく気がついていなかったけれど、綺羅な人々は寄ると触るとさまざまな情報交換を行っていて、聞き耳を立てれば当然聞くに耐えないゴシップも囁いているのに気が付く。
 さすがにその中に平然とした顔で入り込むことなどできない。
 それでも通り縋る道すがら、耳を澄ませば…。
 つい最近出版された雑誌に、F4の花沢類がスキャンダルで掲載されたこと。
 それがどうも女性とのセックススキャンダルで、事件性も問われるようなショッキングなものであること。
 続報的に出ている記事では、類の辞職と謹慎がまことしやかに囁かれ、それが懲戒免職を逃れるための、父親である馨の画策であるとか。
 そんなふうなことが大まかな筋の流れで、ところどころに粉飾や相違はあったものの、どうやら、その渦中にある記事に掲載された中身の被害者女性とは、自分のことであることに思いあった。
 …どうして?
 …なんで?
 そんな思いばかりで、不思議に自分自身の保身のことよりも、非難を受けてもしかたがない当の類のことばかりが気になって、いてもたってもいられない。
 …案外。
 類本人はケロっとしていそうだとか、そんな馬鹿なことを予測したりもするが、いくら図太い類だとは言え、今までそうした誹謗中傷どころか、常に人々の賞賛と憧憬をしか知らなかった輝かしい人生を生きてきた男なのだ。
 「おや、たしか貴女は道明寺副社長が連れてらした…」
 「あ、いえ、すみません。ちょっと急ぎますので」

 つくしを認めて声をかけてきた見知らぬ紳士を適当にいなし、幾人かそうした人々もいたが、今のつくしはそれどころではなかった。
 …道明寺!
 いま、彼女の疑問に答えてくれて、この状態―――緩やかな軟禁を解いてくれるただ一人の姿を探す。
 もはや、つくしの脳裏には今、どうしているだろうかわからない類のことで一杯で、他人が自分を注視しているだとか、司との約束はどうするのかとか、あるいは…今無意識に選択しようとしている決断が、どれほどのことを含んでいるかなんて考える余地さえもなかった。
 司とつくし。
 今この時、7年前のあの雨の日の決着がつこうとしている。
 彼女が選ぶのは誰なのか。
 「…っ!道明寺ッ!!」
 つくしの視線の先、煌びやかな人々の中心にあって、傲然と冷笑していた司の美貌が彼女へと向けられ、ふわりと微笑んだ。
 それは彼の本当の心。
 ただ一人愛する女への想い。
 けれど―――。
 …類ッ。




*****




 「ん~、曇ってると思ったら、やっぱり雨降ってきたね」
 手に持った白い皿の小さなケーキを一口で口の中へと放り込み、もぐもぐと食べる滋の様はどう見ても、道明寺と同格の大財閥の令嬢とは思えない。
 それでも滲み出る気品と美しさは天然のもので、空気を読まい奔放ささえも彼女の魅力の一つだ。
 「…まったく、食べても太らない体質だなんて、羨ましいを通り越して、ホント憎らしい人ですね」
 「えっ!?」
 思わぬほど心情のこもったオドロオドロしい声音に、滋がギョッと仰け反る。
 もちろん桜子にとっては冗談ごとで、美しく上がった唇の端が、次にどんな臓腑を抉る皮肉を浴びてやろうかと待ち構えて皮肉にニイッと笑う。
 「ひぃっ、桜子怖すぎ」
 「……失礼な。そんなことおっしゃるのは、滋さんくらいなものです」
 「そうぉ?あんたの本性を垣間見た男たちだって、同じように思ったと思うけどな」
 「………」
 怖がってるようなセリフを吐くわりには、けっこうズケズケとモノを言う。
 まあ、だからこそ付き合いやすいとも言える。
 「…しかし、滋さんはよろしかったんですか?」
 「ん~?なにが?」
 キョトンとした顔は無邪気で、本当にこの世の苦も哀しみも味わったことがない苦労知らずのお嬢様にしか見えない。
 けれど、滋には滋だけの悲しみや苦悩があって、その明るい笑顔の中にも隠し持っているのだろう。
 「…その」
 さすがの桜子も言いあぐねて、言葉を探す。
 「もしかして、あれ?どっかのおバちゃんたちが、姦しく噂し合ってたことかな?」
 道明寺家主催のパーティで、滋が参加していながら、別の女をパートナーとしてエスコートしていた司の姿は、人々の脳裏にさまざまな憶測や好奇を生んだに違いない。
 表向き、滋と司の婚約は円満解消ではあった。
 けれど、特に事業的な理由もない中での破談。
 どれだけ想像逞しく、膨らませ合うには楽しすぎる話題であったことか。
 「まあ、どこいっても、社交雀は煩いものだからね」
 「………」
 桜子だったらとてもじゃないが、婚約破棄をされた男の主催するパーティに参加することなどできなかっただろう。
 少なくてもしばらくの間は。
 桜子とは立場も違い、たとえ話が離婚であっても、滋や司ほどの大財閥の後継者ともなれば私情を挟むことができない場面も存在することは理解できる。
 「それでもしばらくほとぼりが冷めるのを待っても良かったのでは?」
 「……別に険悪になったわけじゃないでしょ?」
 「それは…そうかもしれませんが」
 「だったら、いいんだよ。下手に隠すと痛くもない腹を探られて、いつまでもコショコショやられるのもウザイじゃない」
 確かにこうして滋自身や司が、こだわりのない様子を見せつけては、これ以上噂の盛り上がりようはないのかもしれない。
 「それより司の方が驚いたね」
 「…そうですね」
 「つくしにまるで海外にいるみたいにあえて勘違いさせておいて、この時期、東京に普通連れ帰る?」
 「…………」
 あれは勘違いというよりも、完全に騙していたと言えるだろう。
 最初、司の計画を聞いたときには、あまりの非現実的なプランにさすがの桜子も呆れたものだ。
 …まあ、いくら情報を遮断されていたとは言え、疑いもしない先輩もどうかとは思いますけどね。
 しかし、この今の類の状態を鑑みてみれば、司の念頭にあったさまざまなことが伺える。
 …まさか、道明寺さんが暴露したとか?
 だが、それでは司らしくもない気がする。
 愛する時には真っ直ぐに、どこまでも直情的にただ愛する女に愛を乞う男。
 そこに策略など入り込む余地があるだろうか?
 それが桜子が憧れた男性。
 初恋の司の真実だった。
 「まあ、道明寺さんの真意はともかく、いいかげん忙しい方なのに、別荘にこもるのも限界だったんでしょうね。…噂に聞くだけでもいろいろと難しい時期でいらっしゃるみたいですし」
 ここのところ道明寺財閥内のキナ臭い動向も表に出てきてしまっている。
 司が勝つか、楓が勝つかで、下手をすると内部が真っ二つに割れる。
 …何も無理をして楓社長を押しのけなくても。
 大半の者たちはそう思っていることだろう。
司は楓のただ一人の息子なのだ。
どちらにせよ、労せずして後数年も待てば司の手に財閥の実権は転がり落ちてくることだろう。
しかし、いま楓と対立して敗北すれば、未来は危うい。
 経営方針で揉める親子は世間に山ほどあるが、実のところ楓と司の経営手法にはそれほどの違いはなかった。
 司の方が若手を重用し、いささか左翼的であるとも言えるが。
 手腕的にもまだまだ楓は現役で、時代のリーダーであるとは言え、経済界では若僧の部類の司ではいささか不安視される一面もあった。
 「司の中ではつくしと一緒にいることが、最優先なんだろうね」
 チラッと見やった滋の顔には、特に何の悲哀も含まれているようには見えない。
 けれど、この新しい友人が破談になった元婚約者に対して、いまだ抱いている想いに気がつかない桜子でもなかった。
 「類君のあの噂、もうかなり広まってるよね」
 すでに類の噂は社交界でも蔓延して、聞くに耐えない状態へと化していた。
 さすがにまだ立件されたわけではなかったから、テレビ等での報道はなかったものの、元々注目度が高い男なのだ。
 当然のこと、今日のこのパーティでも花沢家縁の人間の姿はなく、高階家でさえもここのところ社交界への参加は控えていた。
 「…あれって本当のことなのかな」
 ポツリと呟かれた滋の問いに、桜子には返せる答えはない。
 つくしにはつくしの事情があって、類との間には余人には伺い知れない過去と絆がある。
 それは誰にも口出しなどできないものだ。
 だからたとえその真実の一端を知っていたとしても、桜子はなにを言うつもりもなかった。
 …先輩、どうされるつもりですか?
 いつかも問うた問を、心の中でつくしへと再び問いかける。
稀有な男たちに愛された女が、果たしてどちらかを選び、捨て去ることなどできるのか。
 「あ、あれ…司とつくしじゃない?」
 噂をすれば影。
 連れ立った二人が、人々の目を掻い潜るように会場である広間の外へと向かっていた。





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