「昏い夜を抜けて…全483話完」
第九章 暁闇②

昏い夜を抜けて449

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 「ん~、美味しい」
 片手にフォーク、もう片方にはケーキがのった皿を掲げ持って、えも言われぬ幸せ顔で舌鼓。
 「……ふ、相変わらずガキだな」
 「う、うるさい!美味しいものは美味しいのっ!それは大人も子供も変わらないのっ!悪い?!」
 とはいえ、
 …うーん、まずいな。これってもしかして餌付けされてる状態?
 自分もで自覚がないわけではない。
 「別に悪いなんて一言も言ってねぇだろ。第一、俺はそうやって美味そうに飯とか菓子食ってるお前が好きだし、可愛いって前にも言ったじゃねぇか」
 「……うっ」
 美麗な男がコーヒーのカップを片手に、熱く眼差しを潤ませて、うっとりするような顔で微笑みかけてくる。
 「ぷっ、なに赤くなってんだよ」
 「空調効きすぎてるみたいで、なんだか少し暑いのよ」
 パタパタ手で顔を仰ぐのはちょっとやりすぎか。
 ニヤニヤ笑いが、その返答を信じてはいないのは明らかだ。
 だが、それ以上なにを言い募るでもなく、司の方も組んだ膝の上に置いて捲っていた仕事の書類らしきものに目を戻す。
 どうやら司は司で、ただ暇してつくし鑑賞に興じているだけでなく、それなりに仕事もこなしながらのことのようで、つくしにしてみれば、こんなところで片手間にそんなことをせず、自分の執務室なり書斎なり、あるいは会社なりで仕事をすればいいと思うのに。
 …こいつ、けっこう昼間にも在宅してるよね。
 しかも別荘というやつだ。
 暇なのか、と問いかければ、当然暇ではないと答えられ、その通りなのは十分察せられた。
 これでも花沢物産という大企業で曲りなりにとも秘書をやっているのだ。
 そうした企業の大幹部が、ただ椅子を偉そうに温めているだけで、会社を滞りなく経営してゆけるはずもないことは、つくしだとてよくわかっている。
 「……なんだ?」
 「え?」
 顔を上げないまま問い返され、今度はつくしが返答に困る。
 「俺に自分の顔をジッと見ているなとか言って、今度はお前が俺鑑賞か?」
 「あ、…それは、その」
 「ま、俺はかまわねぇけど?いくでも俺の顔に見惚れて、見つめてろよ」
 いつもながらの自信過剰なオレ様発言だ。
 そして悔しいのが、自惚ればかりでないこと。
 「勝手に言ってなさいよ。別に見惚れてたわけじゃないから!何もこんな、仕事する上で不便なところに仕事持ち帰ってくるくらいなら、ちゃんと出社してそのぶんまとめてオフでも取りなさいよって思っただけ!あんた本当は要領悪いんじゃないの?!」
 つくしの憎まれ口にも怒らず、司が小さく首を傾げる。
 「…お前もついてくるか?」
 「はぁ?!」
 「花沢で秘書をしてたんだろ?それなら、これからは俺の秘書になって、うちの仕事手伝えよ」
 「……意味わかんないんですけど?て、いうか、秘書をしていた、じゃなくって、今もまだ秘書のままだし」
 辞めるつもりはいたが、まだ上司に辞表を出せていないのだから、司のせいで。
 そんなつくしの内心を知ってか知らずか、フンと鼻を鳴らし、
 「そんなんどうとでもなるだろ?お前が承諾するなら、すぐにでもポスト用意するし、誰にも文句なんてつけさせねぇ」
 それはおそらく類のことも含めてのことなのだろう。
 「……悪いけど」
 「まあ、今はいいさ」
 断りかけるつくしの言葉を先に制して、司は話を戻す。
 「俺んとこは類のとことは、まったく規模も事情も違う。どんだけやっても、仕事にキリがねぇのはいつものことなんだよ。オフ?そんなもんとったのは、いつ以来だっつー感じだぜ」
 高校生の頃の司から想像だにできないが、今の彼の生活がどういうものなのか垣間見えた。
 …もう昔の道明寺じゃないんだね。
 わかっていた。
 彼の載る経済誌や新聞の紙面、噂話などから、今の司がどれだけすごい人物であるかわかっていたつもりだったが、いざこうして対面してみても、ただならぬ人間であることが容易に実感できた。
 いまこうしてつくしと世間話などしていることに、不思議な感慨が沸き起こる。
 ほんの少しだけの寂しさもないとは言えないが、でもそれはあまりに遠い感覚で。
 …本当はこんなところでのんびりしてる暇なんてないんだろうなぁ。
 「それでもお前がもうすでに俺のものになってんなら、お前とガッツリ過ごす為のオフをとるのに、会社に缶詰も悪くない。…けど、そうじゃねぇみたいだしな?」
 「………」
 それこそなにを言うこともできない。
 真っ直ぐなその視線を受け止めきれず、つくしが司から目を反らした。
 「だったら、仕事しながらでも少しでもお前と一緒の時間を過ごせる方がいい。…それに、もうちょっと待ってろ。この資料読んじまったら少し休憩するから、二人で海遊びでも楽しもうぜ」
 「は!?誰があんたと二人で遊びたいとか、そんなこと言ってんのよ」
 「俺」 
 あっさり言い切られてしまえば、基本お人好しのつくしだったから、冷たく拒絶することは難しい。
 それでもこうして曖昧な態度でいれば強引な司のことだ。
 いつの間にか彼の思惑どおりに行動させられてしまうのは経験上目に見えている。
 「…あのさ」
 「それとも買い物でもするか?
 「は?買い物ぉ?」
 本当に個人宅か!と思えるほど娯楽施設には事欠かない屋敷だが、四方見渡す限りの海というやつで、島内の唯一の建物がこの道明寺家の別荘のみという状況。
 「いったいどこで買い物しようって言うのよ」
 「どこででも?近隣から店員ごと呼び寄せてもいいし、お前がそろそろここら辺を見て回るのに飽きたっていうんなら、セスナで移動して買い物に連れて行ってやってもいい」
 「えっ?」
 てっきり軟禁されているものと思っていた。
 直接的に拘束されているわけではなかったが、『帰して』の言葉にはこの男らしからぬ、のらりくらりとした態度で応じてくれなかったからだ。
 もっとも、『帰りたいなら、俺との約束を果たせ』の一点張り。
 嘘も方便なのかもしれなかったが、もうつくしは司を裏切るようなマネはできなかったし、かといっていくら2ヶ月限定だとはいえ恋人のいる身で司と付き合うことなどできようはずもなかった。
 結果…平行線。
 「…さすがに今のあの状況じゃあ、たとえあたりをつけているにしても、俺に預けざるえないでいるんだろうからな」
 「は?」
 ボソリと呟かれた司の言葉の意味を理解することができず、首を傾げるつくしに、「いや」と言って肩を竦めるだけで、それ以上答えるつもりはないらしい。
 「…なによ。ブツブツと、あんたちょっと女々しくなったんじゃないの?」
 「言っとけよ、このチンクシャ」
 「ちょっと!それ、関係ないでしょッ!?」
 とんでもない暴言に目を吊り上げ、つくしがソファから立ち上がって怒鳴りつける。
 「よし、決めた。お前、明後日俺に付き合え」
 「はああああ?」
 この後の予定を打診されていたはずなのに、いきなりの明後日の都合。
 「チンケブスの状態をもう少しマシにしてやる。今日のところはとりあえずショップの連中を呼び寄せて買い物だな」
 「…ち、チンケブスって、あんた」
 やはり喧嘩を売られてるのだろうか?
 ヒクヒクと引き攣りながら、それでも大きな声で反論できないのは、これだけの美貌の男に対してものを言うには自分の平凡な容姿をつくしも自覚していたから。
 それにしても、確かこの男、つくしに気があるんじゃなかっただろか?
 ここまでズケズケ言われて、何かが違う気さえしてくる。
 …もしかして、こいつがあたしを好きだとか言うのって、今は喧嘩友達としてとか?
 あるいはないとは思うが、大真面目に秘書として雇いたいとそう打診されているだけなのだろうか。
 「…のわけねぇだろ」
 「へ?」
 苦笑されていた。
 「お前の大ボケはともかくとして、明日からしばらく…ここを留守にしなきゃなんねぇ。俺一人で行くかと思ってたが、お前も連れてゆく。明後日参加するパーティで、お前も俺のパートナーとして参加しろ」





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