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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第九章 暁闇①

昏い夜を抜けて445

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 「つくし!こっちこっち!!」
 明るい笑顔の滋が、まるで落ち着きのない子供のようにあちらこちらへとつくしの手を引き連れ回す。
 「ちょ、ちょっと待って、滋さんっ」
 足場の悪い岩場の石につまづきかけるのを、とっさについた手で回避する。
 が…。
 「っつぅ」
 ギクッと横倒しになってしまった踝が、岩場に擦れて擦り傷を作ってしまった。
 「あたたたたた」
 「わっ、つくし、大丈夫?」
 慌てた滋が座り込んでしまったつくしの脇にしゃがんで、怪我の具合を確かめる。
 大した怪我ではなさそうだが、サンダルから出ていた皮膚の部分に血が滲んでかなり痛そうだ。
 「…うへ、これ、塩水につけたら相当染みるよ」
 「ですよね…」
 今は岩の上に足を置いて難を逃れたが、ここに来るまで水没しているところを掻き分けてやってきたのだ。
 憂鬱になるつくしに、滋が申し訳なさそうに両手を合わせて謝罪する。
 「ごめんね、あたしがめちゃくちゃ引っ張ったから」
 「いやぁ…」
 実際そのとおりなのだが、屈託のない少女のような彼女の明るさが、塞ぎ込み兼ねないつくしの状況を軽くしてくれて、考え込んで悩まずにすんでいる。
 「せんぱ~い?!滋さぁあああん」
 洞窟の外。
 岩場の影から桜子の呼び声。
 「あ、こっちこっち、桜子」
 滋の返答に答えて、桜子がやってきた。
 岩場の険しさに眉根を寄せつつ、しゃがみこんでいるつくしの様子に心配げに歩み寄ってくる。
 「まったく、こんなところへ探検なんて、いったいいくつなんですか」
 「ええっ!?洞窟とか穴とか見つけたら、とりあえず覗いてみたくなるのが人情ってものじゃない。ねえ?」
 同意を求められても、普通にバカンスに訪れているという状況ならばともかく、半分軟禁状態の現状では、つくしも同意しかねた。
 「うーん」
 「先輩、まさか骨折とかですか?」
 「いや、単なる擦り傷と打ち身」
 桜子と滋に支えられ立ち上がってみると、ズキリと足首に痛みが走った。
 「…まあ、ちょっと捻挫くらいしてるかも」
 「仕方ないですね。…誰か呼んできますから、ちょっと待っててください」
 戻ろうとする桜子の腕を掴んで、つくしが慌てて引き止める。
 「いや!大丈夫だよ。痛いって言ったって、ちょっと上り下りが辛いくらいだから、一人でなんとか戻れるって」
 「そうですか?」
 胡乱な目の桜子と困った顔のつくしをよそに、ポンと両手を打ち付け滋が背中を向けた。
 「よし!滋ちゃんがオンブしてあげるから、つくし、おぶさって?」
 「…………」
 桜子がこめかみを抑えてため息をつく。
 「はは、ありがと。滋さん」
 「…まあ、冗談はともかく、じゃあ、滋さんと私で支えますからとりあえず外に出ましょうか」
 「あ、うん、よろしく」
 「ええ~、冗談じゃないのに」
 大真面目だった滋がブーイングしつつも、桜子とともに肩を貸してくれた。
 それでもなんとか、女二人の手を借り、三人で洞窟を脱出する。
 案の定、
 「うわっ、す、凄いしみるぅ」
 打ち寄せる波に気をつけていても、足を撫でられ、その度につくしが悲鳴をあげた。
 「…凄い、これぞまさに傷口に塩」
 「滋さん、けっこう根性悪だったんですね」
 「ええっ!?」
 「無邪気な顔して、先輩に嫌がらせ成功?」
 「えええええっ!?」
 嫌味ったらしく笑う桜子に、滋が素っ頓狂に驚いて見せる。
 「はは、わざとじゃないって、桜子」
 それを冗談だとわかっていて、つくしが窘めた。
 ここ数日の間で、すっかり出来上がった3人のジャレ合い。
 時には恋バナで盛り上がったり、仕事の愚痴を言い合ったり、美味しいものを食べて、海水浴を楽しんで…ごく普通の友達同士のバカンスの過ごし方。
 …あたし、こんなところでこんなふうにのんびり遊んでいていいんだろうか。
 そうでなくても状況を忘れてしまいそうだ。
 幸い、桜子の祖母の体調が良いのだけが救いだったが。
 以前に桜子が言っていたように、司が祖母の主治医を呼び寄せ、邸内に常駐させていた。
 桜子の祖母の調子が良い時には、時々一緒にお茶会を開くこともある。
 「おい、お前ら何やってんだ」
 頭上から聞き慣れた男の声。
 団子の様に固まって歩いているつくしたちを、司が邸のバルコニーから不審げに見下ろしている。
 「やっぽ~!司!お天気もいいのに、執務室になんかこもってないで、下に降りてきたら?秘書さんも」
 司の横のダークスーツ姿の男性が会釈を返す。
 しかし、当の司は滋を無視して返事も返さない。
 それどころか、ひょいっとバルコニーを乗り越えると、階下へと軽々飛び降りてきた。
 「ぎゃああああっ!そこ二階!二階!!」
 「きゃっ、耳元で叫ばないでくださいよ、先輩!」
 「…司、カッコイイ!」
 三人三様。
 耳を押さえて顔を顰めた桜子がつくしに抗議し、颯爽と砂地を歩み寄ってくる司に滋が歓声をあげる。
 「なんだ、怪我したのか?」
 「…あんたね、ってぎゃああああっ!」
 再び悲鳴。
 「どれ、見せてみろ」 
 屈んだ司が、いきなりつくしの引き摺っている足を掴みあげようと手を伸ばす。
 「ちょっと、ちょっと!」
 …うひぃぃぃ~。
 一応膝丈まであるワンピースだが、足元にしゃがみこまれたらパンツまで見えそうだ。
 慌てて後退るつくしに首を傾げ、司があっさりと立ち上がった。
 「岩場で足を踏み外して、擦り傷作っちゃっただけだから、平気」
 「骨まで折れてるわけではなさそうですけど、捻挫もしてるかもしれません。かなり痛そうですよ」
 桜子の追記説明に司が頷き、いきなりつくしを抱き上げる。
 「うぎゃああっ!」
 「……お前、一々うっせぇ」
 「あ、あんたのせいでしょっ!?って、いうか、大丈夫だから、下ろして!」
 騒ぐつくしを無視し、つくしを抱えたまま司が屋敷へと消えてゆく。
 「……凄いつくしには甘々だね」
 「極甘ですね」




*****




 ぎゃあぎゃあ言うつくしの怪我の手当てを医者に任せ、司が執務室に戻ると、西田が頭を下げる。
 「…牧野様のお怪我の具合はいかがでしたか?」
 「大したことねぇみたいだな。まあ、一応、医者に見せたから大丈夫だろ」
 「………」
 その大したことのない怪我を診る世界的権威もいい面の皮だが、もちろん道明寺家がバックについたことは、その医師自身にとっても大きなメリットだろう。
 「で、持ってきたんだろ?見せろよ」
 アタッシュケースから取り出した数冊の雑誌を司へと差し出す。
 今朝日本で発売されたばかりの……写真週刊誌。
 表紙を飾っているのは、見慣れた親友の横顔だった。





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