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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第九章 暁闇①

昏い夜を抜けて442

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 『………』
 「あ、あの類?」
 危惧していた司はどうやら別の場所にいるらしく、執務室は無人だった。
 許可をもらったとはいえ、今度は逆に誰もいない部屋に入り込むのは躊躇されて、どうしようかと悩んでいたところに、通りかかったメイドが気がついて、あっさりと中へと通してくれた。
 どうやら司から話は通っていたようで、よもや気をきかせたということはないだろうが、本人は別の書斎で仕事中だとのことだった。
 …あいつ、ちゃんと夕食とったのかな。
 ふとそんなことが気にかかった。
 それはともかく、許可を受け、類へと電話。
 普段メモリに登録していて、たいがいの番号は記憶になかったが、類のだけはスムーズに記憶から呼び出せた。
 横でニヤニヤ見ていた桜子の目が言っていた。
 『愛ですね』
 …道明寺が最初からいないってわかってたら、ついてきてもらわなかったのに。
 そんな恩知らずなことを考えながら、電話の向うの様子を伺う。
 周囲のざわめきや秘書の三田村の声は聞こえなかったが、もしかしたら会議中か何かだったのだろうか。
 「えっと、ごめん。もしかして、もうお昼休み終わっちゃって、仕事中だったりする?」
 
 『……ううん、違うよ。大丈夫。牧野…なんだね?』
 「あ、うん、そう」
 …心配かけて、と言っても良いのかどうか。
 類がどれだけ、自分の状況を察しているのかわからない。
 さすがに、いくら有給の申請はしているとはいえ、つくしが音信不通のまま女友達と旅行に行ったと思ったとも考えられないけれど。
 『はぁ~~~』
 「…………」
 大きなため息が聞こえ、今度はつくしの方が言葉を呑む。
 けれど、いくらまっても類から続く言葉が聞けない。
 「類?あの、どうしたの?」
 そう聞いてもいいものかどうかと、迷う。
 『どうしたじゃないでしょ。…3日も音信不通で。しかも、三条と飲みに出たまま、いきなり行方不明だなんて、俺が心配しないとでも思ってた?』
 なじるようではなかったけれど、それでも類の声音に小さな怒りは隠せない。
 そして、その怒りが、彼女への心配だったことはさすがに鈍いつくしにだとて伝わらないわけがなかった。
 「ごめんなさい、類」
 『いいよ、って言ってあげたいけど、今度ばかりはさすがの俺も参った』
 「…類」
 『お前、俺を殺す気なの?おかげで昨日と一昨日、俺、ほとんど眠れなかったんだよ!』
 子供のような言い方に、そんな場合じゃないと思うのに、口元が緩んで仕方がなかった。
 『笑い頃じゃないよ』
 「本当にごめんなさい」
 それしかつくしに、言える言葉は他になかった。
 『……しょうがないね、ハァッ。で?お前いったい、今どこにいるの?どうするつもりなの?』
 今、自分がいったいどこにいるのか。
 どうするつもりなのか。
 問われた言葉にさえも、答えられる言葉がないことに、つくしは今更ながらに気がついた。
 …あたしは。
 桜子を振り返る。
 その視線の意味をわかっているのか、桜子が困ったように小首を傾げてゆっくりと首を横に振る。
 「あのね、…今、あたし桜子と一緒にいるの」
 『………そう』
 「それで…その、この間もお願いしたんだけど、もう少しだけ…帰れそうもなくって、その」
 そんな言葉を類は果たして信じて納得してくれるのだろうか。
 『…海外にいるんだっけ?』
 「あ…そう、かな」
 つくしにだとてわからないものを、答えることなどできなくて、曖昧に誤魔化す。
 『いつ帰ってくるの?』
 いつ…。 
 それさえも定かではなかった。
 果たして自分は司の言い分を聞き入れるつもりでいるのか、それさえも今は自分でもわからない。
 『お前から辞表は受け取ってないよ?』
 「…うん、迷惑かけちゃうと思う。でも、本当にごめんなさい」
 そんな説明しかできないことを謝罪し、そして同時に一社会人としての責任に悩む。
 電話の向こうで再びため息。
 『仕方がないね。今の時期…むしろお前はこっちにいない方がいい気もしてたし』
 「え?」
 『いや、こっちのこと。俺もたいがいだと思うけど、とりあえず今月一杯まで有給消化扱いで、お前の退職も保留して置くから、俺がここを退くまでに帰ってきて?』
 「あ!…うん」
 …そうだ。
 類もまた、花沢物産を退職する。
 盆休みを明ければ正式に発表されることになり、すでに準備も進んですみやかに移行作業も行われるよう詰めてきた。
 「そ、それでその、言い出しにくいんだけど」
 『うん?』
 「ベベのことなんだけど」
 類が容易に察してくれる。
 『大丈夫、今までもお前が仕事に出ている間は、顧問弁護士が手配したキーパーが世話してたんだろ?…俺も時間見つけて、様子見に行くようにするし』
 「うん、ありがと」 
 あとは何を言うべきか、言えるだろうかと言葉を探す。
 『…電話』
 「なに、類?」
 ポツンと言われた言葉を聞き逃して、聞き返した。
 『また、お前から電話してくれる?』
 「あ…」
 『どうせ、お前のことだから、携帯の充電忘れたり、俺からの着信に気がつかなかったりするんでしょ?』
 「…………」 
 『牧野?』
 胸が詰まった。
 何も知らない?…本当に類は気が付いていないはずがあるのだろうか。
 そう思いながらも、込み上げる何かを堪えてつくしは頷いた。
 「…うん、また電話するね」
 『うん』
 「えっと、その…じ、時間大丈夫?」 
 『ん?ああ…時間、時間ね、まあね。仕事中じゃないから大丈夫。それより、お前、もう少しそのまま喋っててくれる?」 
 「???」
 類の要望に目を瞬かせ、つくしが受話器を眺めて首を傾げる。
 『…なんでもいいよ。お前の声を聞いていたい』
 あふぅと類のあくびの声が聞こえて、平日の真昼間に眠気を催して大丈夫なのかと、心配しつつ、有能な秘書の三田村がいれば類をたたき起こすことも容易だろう。
 「しょうがないわね。仮眠するなら、10分くらいがちょうどいいんだよ。あまり長く寝すぎても、かえって夜眠られなくなって睡眠の質が落ちちゃうんだって」
 『…平気、俺、どれだけでも眠れるから』
 「いやいやいやいや」
 『牧野の声…って、すっごく安心す、る』
 「ちょっと、類っ!?」
 トロンとしていた声音が明らかに呂律が怪しくなって…。
 『おや…すみ、愛し…て…るよ……Z』
 「て!もう寝ちゃったのっ!?ちょっと??類っ、類っ!?」
 『ZZzzzzzzzzzz』





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