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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第九章 暁闇①

昏い夜を抜けて441

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 「あんたが携帯を貸してくれるなんてことは…」
 「嫌ですよ。私の場合、仕事関係の顧客情報やらプレイベートのあれこれやら、プライバシーの塊なんですから」
 …電話かけるくらいで、あとは覗き見たりしないわよ!
 品性を疑われたようでかなり気分は悪いが、まあ仕方がないとは諦めている。
 桜子もまた一経営者であり、セレブと言われる生まれの人間である以上、おいそれと他人に知られるわけには行かないシークレtトな情報も抱えていることだろう。
 そこは親友だとか、そうじゃないとかとは別のことだ。
 だからしつこくは食い下がることはなく、ため息一つで堪えていたのだ。
 「まあ、いいけどね。…道明寺が執務室の固定電話貸してくれるって言ってたから」
 「道明寺さんが許可してくださったんですか?」
 意外そうな桜子の顔に、つくしも一瞬視線を落す。
 けれどすぐに気を取り直すと、
 「悪いけど、あんた一緒に付き合ってくれる?」
 「道案内ですか?」
 「……まあ、できれば電話してる時にもいてくれると助かるかな」
 金魚のフンをしなければ、用の一つも足せないタチのつくしではない。
 当然言外に含んだつくしの気持ちなど、桜子にはお見通しだ。
 …道明寺さんから何かアクションがありましたね。
 司の執務室で、彼と二人っきりになる可能性を忌避しているのだろう。
 …まあ、道明寺さんの目の前で花沢さんと電話っていうのも、凄い強心臓ではありますよね。
 「えっとダメかな?」
 「いえ、構いませんよ。先輩のラブトークをじっくり拝聴させていただきます」
 悪戯っぽく微笑みかけてくる桜子に、つくしもホッと息をつき、拗ねた風を装って返す。
 「そんなん人前でするかっ」
 「あれ?人前でなければラブトークする気、満々なのは否定しないんですね」
 わずかに赤く染まった頬は怒りではあるまい。
 いつまでも純なウブさを失わないつくしが、おかしくも愛しく可愛い。
 …まったく、いい年をして。
 そう思うのに、彼女のそういうところを羨ましいとも思う。
 だから、珍しく正直な気持ちを呟いた。
 「先輩って可愛い人ですね」
 「はあ?」
 思わぬ人物からの思わぬ批評に、目を丸くしてつくしが驚きの声をあげた。
 「あんた熱でもあるんじゃないの?」
 「まあ、ごく稀にそう思うってだけで、普段は飾り気がなさすぎて女じゃないなとか、どうしてこんなにバカ正直で騙されやすいお間抜けな女のままでいられたんだろう、って呆れてしまうことの方が断然多いんですけどね」
 「あんたね…」
 さすがにあまりの言いように、つくしの顔が引き攣り絶句する。
 「…でも、だからこそ花沢さんや道明寺さんのように、人を信じて生きることを知らなかった人たちが、先輩のことだけは信じて…愛することができたんですよね」
 「桜子」
 いつも自信に満ちて、どんな時にでも真っ直ぐに相手の目を見る桜子が、顔を伏せ、つくしから目を反らした。
 「…どうして、責めないんですか?」
 「………」
 「なぜ、何も聞かないんです?」
 再び顔を上げた桜子の顔色はわずかに青く陰っていたけれど、挑戦的に顎を上げ、どんな非難にも受けて立つと強い決意が浮かんでいた。
 あらためてつくしも、自分の中にある感情を探る。
 もしかして、桜子に騙されたのでは?
 裏切られたのではないかと疑ったことがないとはいえない。

 けれど…。
 「あんたはいつだって、あたしの味方だった」
 「先輩」
 「あんたはあたしの恩人で、いつでも頼りになる最高の親友」
 「…先輩」
 わずかに桜子の声に湿り気が宿る。
 指摘されたらきっと怒って皮肉の嵐を見舞ってくれるだろうけれど、潤んだ目が彼女の不安と弱さを覗かせ、つくしはそっと優しく微笑み返した。
 「あんたを信じてる。これまであんたがあたしに尽くしてくれたたくさんのことに感謝してるし、あんたが私に注いでくれた友情を忘れたりしない。…あたしのために苦しめてごめんね。そしてありがとう」
 ポロリと桜子の目から一筋の涙が零れ落ちる。
 それはけっして哀しみの涙なんかじゃない。
 たとえ恋ではなくても誰かを思って、喜びと嬉しさに流す涙はなんて幸せなんだろうと桜子は思った。
 「な…に、言ってんるんだか。当たり前のことじゃないですか」
 桜子がつくしを好きなこと。
 桜子がつくしをけっして裏切らないことなんて、つくしが桜子の裏切りを赦して救ってくれたあの高校生の日から、自明の理であり、たとえつくしが信じてくれなくてもそれだけが彼女の真実だった。
 けれど、つくしはいつも桜子の想像の上をゆく。
 …だからお人好しで、すぐ騙されてばかりで損ばかりしてるんですよ。
 そう憎まれ口を叩いてやりたいのに、なぜか喉が詰まって言葉が出ない。
 たとえつくしの前であっても泣き顔を見られるなんて、プライドが許さないというのに。
 つくしもまた、そんな勝気な友の涙を見てしまうことを慮って、見ないふりで彼女の横を通り過ぎゆっくりと階段を下りてゆく。
 「よし!じゃ、電話かけてくるぞ」
 そんなわけのわからない気合を入れるつくしに、桜子がわずかに口角をあげる。
 「先輩…道明寺さんの執務室は出て、右ですからね」
 「えっ!左じゃないのっ!?」
 キョトンと振り返ったつくしへと微笑んで、足早に彼女を追い越し、前へと並んで手を握る。
 「こっちです!しょうがないから、私が案内してあげますから、しっかり道順憶えてくださいよ!」
 「え~、このお邸、無駄に広いんだもん。あたし全然、自信ないよぉ」




*****




 ブー、ブー、ブー。
 「…ん」
 携帯電話のバイブの音に目を覚ましてみれば、いつの間にかベッドで眠ってしまっていたらしい。
 …くさっ。
 我ながら酒臭いと顔を顰めながら、壁の時計を確認してみれば、まだ21時を回ったばかり。
 以前の自分であれば、せめてそれくらいの時間にはベッドで眠っていたいものだと切望していたのに、いざそうできる立場になったとたん、眠れぬ夜を酒の力でなんとか眠るハメに陥っている。
 ブー、ブー、ブー。
 再び鳴り出した呼び出し音に、いやいや手だけをサイドテーブルに伸ばして、着信を確認する。
 まったく見覚えのない番号に眉根を寄せた。
 いつもだったら無視をするのに、虫の知らせだったのだろうか。
 …ぶぶ、『無視をするのに、虫の知らせ』だって!
 誰も聞いていないというのに自分で自分で突っ込み、受信ボタンをタップする。
 「はい、俺」
 『えっと、あの…その、類?あたし…牧野』





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