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「百万回の微笑みを愛の言葉にかえて」
第一章 忘却は罪?

百万回の微笑みを愛の言葉にかえて008

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つくしSIDE)
 結局、1週間の入院生活を送り、晴れて退院となった今日この日。
 入院中は、F4やら優紀、滋さんに、桜子、和也くんが間を空けずに代わる代わるお見舞いにきてくれたおかげで退屈することはなかった。
 類なんて、ほぼ日参状態。
 でも、記憶喪失はともかく、あたし自身はたん瘤一つで他にどこも体調が悪いところなんてなかったから、検査が目白押しだった2日間をすぎると、根っから貧乏性のあたしは、この豪華な病室にいるのが落ち着かなかった。
 病院なんて、元気な人間が入ってるところじゃないよねぇ?
 と、いうことで、病院側からは引き留められたけれど(何やら、道明寺から多額の寄付&強固な指示があったとかないとか)、半ば強引に退院へとこぎ着けた。
 実際、病院としてもあたしの記憶喪失に対して、有効な治療法もなかったんだろうと思う。
 で、退院当日。
 本当は家族総出で迎えに来てくれる予定だったみたいだけど、おり悪くパパは会社の面接、ママはパートしているスーパーでインフルエンザが流行しているとかでシフトに余裕がなく、進は学期末試験中で学校を休むわけにはいかった。
 それならそれで別にいいや、と一人でタクシーに乗って帰ってくるつもりだった。
 ところが、進からそれを聞いた類が迎えに来てくれることになった。
 記憶をなくした当初は、気まずくて仕方がなかった類だったけど、1週間の入院生活中の交流で、すっかり緊張もなくなって、まるで旧来の親友のように気の置けない存在になっていた。
 って、高等部の時からずっと友達なんだっけ。
 でも、ホント、なんでこんなに安らぐんだろうって、自分でも不思議なほど類といることにしっくりときて、馴染む
 なんだかなあ。
 中学時代は男友達も多くて、確かに男の子に免疫がないってわけではないんだけど、なんだか類はそういった友達とは違う気がする。
 ホッとして、なんだか和んで、一緒にいると温かい。
 類は社交的とは言い難いし、時々理解不能な思考回路をしているというのに、それがちっとも嫌じゃない。
 それでいて、時々、あのビー玉みたいな色の薄い綺麗な目や、優しい王子様みたいな顔、何気なく大胆に触れてくる掌の感触にドキッとすることも少なくなかった。
 …あたし、本当に、この人とどういう風に付き合っていたんだろう。
 西門さんや美作さんは、類とあたしを普通にイチャイチャしているとか、べったりだとか、それがいつものことだと呆れたように話すけれど。
 「牧野、準備できた?」
 「あ、うん」
 振り向くと、類がドアから顔を覗かせているところだった。
 「荷物これだけ?」
 「まあねぇ、たった1週間だったし。元からあんまり持ち込まないようにしてたんだけど、一番処遇に困ったのが、類や皆からもらった食糧だという…」
 はあ、とため息をつく。
 連日連夜の食べ物攻撃に、もはやお見舞いでもお土産でもなく、食糧のカテゴリーになっている。
 いや、ありがたかったんですよ?
 こっちも病気だったわけでもないので、特に食事制限があったわけじゃないし、退屈な入院生活、美味しいものや珍しい食べ物の差し入れはもう、本当に涙、涙な感動もので。
 でも、問題は、量!
 いくら花より団子だっていったって、限度があるでしょうに。
 もう、退院だからいらないって言ったのに、昨日は昨日でホールのサツマイモパイと、ザ・メイプルの高級プリンを手土産に持ってきてくれた。
 …まあ、美味しかったけど。
 幸いのことに、いまのところ体重増加は確認していないけど、がっつり脂肪に転化されそうで怖い。
 「うん?食べきれなかった?」
 「だああ、いったいあたしをなんだと思ってるのよ!いくらなんでも食べきれるか~。大食い選手じゃないんだから。ここが大部屋だったら周りの人にあげたりもできたんだけど、ほかに人はいないしね。滋さんや和也君がいる時はともかく、アンタたち男どもは甘いものあんまり食べないし、桜子や優紀は太るからって恨めし気に見るだけで遠慮しちゃうしぃ」
 「へえ?じゃあ、どうしたの?」
 「うん。一口だけ切り分けさせてもらって、あとはナースの皆さんで食べてもらったり、ほかの部屋まで遠征したり?」
 「ええ~、な~んだ、牧野食べてくれなかったんだ?」
 「へへ、ごめん。でも、ちゃんと一切れなり一口なりお味はバッチリ!堪能させてもらったよ?すっごく、どれも美味しかった、ありがとう、類」
 類ははんなりと微笑んで、あたしの頭をクシャクシャッとかき混ぜる。
 「ダメ!もう、このまま病院でるんだから、髪をグシャグシャにしないでよ!」
 「…大丈夫だよ?あんま、かわんないし」
 「な~に~」
 さすがのあたしもこめかみに青筋が浮かびかける。
 「うそ、うそ。でも、牧野はクシャクシャしてても、ヤンチャなわんこみたいで可愛いよ」
 い、犬ーー!?びっ、微妙~。
 「ま、お土産は俺が持ってきたくて持ってきてるだけだから、牧野が一口でも食べてくれればそれでいいよ。美味しかったでしょ?」
 「う、うん。めったに口にできない高級お菓子が毎日、毎日、幸せでございました」
 素直に頭を下げる。
 「じゃあ、いいよ。あとは、好きに処分して?」
 はう~!王子様光線が、パンピーの目には眩しすぎて、瞬殺されそうだ~。
 「じゃあ、まあとりあえず出ようか?手続きは済ませたし、もう迎え来てるよ」
 「へ?」
 迎え?類の他に誰か来てくれる予定なんてあったっけ?
 足元にあったあたしのボストンバックを、類がヒョイッと肩にかけ、さっさと病室を後にする。
 「あっ」
 置いて行かれまいと、急いで類の横に並んで歩き出す。
 うはあ、足長~い。
 改めて、横に並ぶと類の日本人離れしたスタイルに感嘆する。
 すごいよ、8頭身どころか9頭身くらいありそう。
 いるんだねぇ、こんなスタイルの人って。
 てっきり、少女漫画の世界にしか存在しないのかと思ってたけど。
 二人並んで病室から廊下に出ると、さきほど挨拶を終えた担当医や、看護師、その後ろには、うっは、いかにも偉そうなお医者さんが並んで類に挨拶をしている。
 普通、立場は逆だろうって思うけど、子供や孫とかわらない年齢だろう類に、恭しい態度で接していた。
 まあ、あたしに対しても無礼なわけではなかったけれど、肝心な患者のはずのあたしにはいかにもおざなりな態度。
 道明寺の名前と、花沢にひれ伏しているのがありありなんだよね。
 エレベーターを降り、正面玄関ホールを抜けると、午前の外来の人並みのざわめきが聞こえ出す。
 はあ、やっと日常に降りてきた感じ?
 と、思いきや何やら、外が騒がしいっていうか、プチ人垣っていうか…。
 自動ドアをあけ、人垣を抜けると、そこに非日常…再び。
 なが~い車体のダックスフンドのような超高級車が、白昼堂々と大学病院の車路を塞ぎ、白い手袋のうやうやしい運転手がそのドアをあけ待ち構えていた。
 「牧野さま、ご退院おめでとうございます。お待ちしておりました、さあ、こちらへ」
 


類SIDE)
 牧野がひきつったような顔をして、司の車を見、俺を見上げた。
 「乗りなよ。うちまで送るようにって、司が手配した車だから」
 俺がさっさと乗り込むと、牧野が気後れしたように一瞬、躊躇したものの一気に乗り込んだ。
 ここで、グズグズしていても、逆に目立つってわかったんだろうな。
 運転手がドアを閉め、少しの振動も感じさせないスムーズな動きで車をスタートさせる。
 牧野は困ったように、車をグルっと見回すと、はあ、っとため息をついた。
 「な、なんだか、別世界な感じ」
 「そう?」
 「うん、こんな車で迎えにこられるのも、パパみたいな年齢の人に恭しく頭を下げられたりするのも、なんだかねぇ」
 記憶を失う前の牧野も大げさなのは嫌がっていたけど、ある程度慣れもあっておおむね甘受してはいた。
 司がここにいればともかく、いろいろ牧野には敷居が高いのかもね。
 「なに?」
 「うん、俺の車で迎えに来ればよかったかなっと思って」
 「俺の車?」
 「うん。18才の時に免許とったから、俺も運転できるし、車の運転も好きだしね。本当は俺の車で迎えに来ようと思っていて、牧野も運転手つきの車なんかより気兼ねしなくていいかなあ、なんて思ってたんだけど」
 「え~、その方が良かったなあ。せっかく、用意してくれた道明寺や、お迎えに来てくださった運転手さんには申し訳ないけど、運転手付きのこんな高級車なんて月とスッポンていうか、あたしの柄じゃないよね?」
 「ぷっ、なにそれ?月とスッポンって普通、自分でいう?」
 相変わらず、面白い奴。
 「ええ?マジ、マジ。そりゃあ、類にはぴったりハマってるけどねぇ。今度、こういうことがあるときは類の車がいいなあ。迷惑でなければだけど」
 「うん、いいよ、もちろん。今日だって司にダメだしされなかったら、そのつもりだったし」
 「ダメだし?」
 「うん。俺の運転だとなんだか、司は安心できないんだってさ」
 すっごい勢いで、『そんなんダメに決まってるだろっ!!』ってダメだししてたっけ。
 ふ~ん、と牧野は不思議そうに小首を傾げた。
 ホント、失礼するよね。
 牧野も確かに記憶をなくす前は、俺の車に乗ることを極力避けてはいた。
 まあ、それでも俺が望むことはいつも結局拒否できなくって、死んでも乗らないと絶対拒否するあきらや総二郎には不憫がられてたっけ。
 「あ、そろそろ、つくよ」
 街並みがごく一般的な住宅街にかわってきた。
 3年半前に牧野が住んでいた社宅とはまったく違う街並みに、何か思うところがあるのか牧野は車の窓の外を静かに見つめている。
 これ以上は、この車体の長い車では入れないという狭い路地に差し掛かり、牧野と俺は車から降りて歩くことにした。
 しばらく、キョロキョロと周囲を見回し、牧野はなかなか歩き出そうとしない。
 ああ、そうかと俺は牧野に手を差し出した。
 「なに?類?」
 「家の場所、わからないでしょ?」
 うん、と牧野は小さく頷き、ちょっと躊躇しながらも差し出した俺の手に小さな手をさし出す。
 久しぶりに握った牧野の小さな手は、ちょっと緊張に汗ばみ湿っていた。
 「大丈夫だよ」
 牧野は俺の顔をちょっと見つめ、もう一度小さく、うん、と肯き、ギュッと握る手に力を入れた。
 こうやって、俺は何度、牧野と手を繋いで歩いただろう。
 もちろん、恋人同士のようにいつでも、ただそうしたいからと手を繋ぐのではなく、牧野が辛い時、俺がキツイ時、牧野が哀しい時、俺が寂しい時、俺たちはこうして手を繋いできた。
 いつまで、俺たちはこうして手を繋いで歩くことができるんだろうね、牧野。

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