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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第九章 暁闇①

昏い夜を抜けて440

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 「…冗談」
 その言葉がいつかも言ったセリフだとは我知らず、気がついた。
 けれど震える唇が、それ以上言い継げない。
 あの遊園地で冗談紛れに司が言い出した時よりも、司の目が真剣で…そして昏かったからだ。
 「俺は冗談は言わねぇ」
 …そうだった。
 知っていても、そう思いたかった。 
 彼の真摯さを誰よりもわかっていて、それでも振り切る辛さと悲哀と…だが、それだけでなく、司にはそんなつくしの意思を捻じ曲げてしまうほどの力があるのだから。
 ゆっくりと唇を舐め、つくしはゴクリと唾を飲み下す。
 そんな彼女を冷めた目で観察している司は、まるで知らない人間のようだ。
 「あ、会うこと以外…あたしに無理強いするつもりはないって、あんたたしか、あたしに言ったわよね?」
 「ああ。実際、他にお前に何か俺は無理を強いてるか?」
 いけしゃあしゃあと肩を竦める司が、彼女の怯えを鼻で笑う。
 「ふざけないでっ。ここに来たのはあたしの意思じゃないっ!!」
 「そうか?お前桜子と約束したんだろ?」
 「……っ、あんたっ」
 溜息一つ、司は振りかぶり、司は手に持っていたタバコの吸殻を海に向け放り捨てる。
 「ふん。お前が約束を守ったなら、俺もこんな手段をとったりはしなかったさ」
 「約束っ!?」
 カッカッカッと、足早につくしへと歩み寄りってくるのに、怖じけて、つくしが後退る。
 背中に触れたのは冷たい壁の感触。
 ドンッ。
 「二ヶ月…」
 「…っ!?」
 息を呑むつくしの頭を司は両腕で囲い込んで、彼女を逃げられないようにしてしまう。。
 「お前と俺が約束した二ヶ月はまだ終わっちゃいねぇ」
 それはあまりに遠い過去。
 高校生の時に二人が交わした約束。
 目を見開くつくしの顔を睨み降ろし、
 「お前が何を言おうと、これだけは守ってもらう。それさえもお前が蔑ろにしようというなら、俺はもう遠慮しねぇ」
 顔を背け視線を反らそうとした、つくしの顎を掴み司がつくしの顔の鼻の先、唇が触れるか触れない位置までその秀麗な美貌を寄せ宣言する。
 「…お前が逃げるなら、力づくでもお前を俺のものにする」
 「道明寺っ!」
 堪らずつくしが、体を強張らせ、ぎゅうっと目を瞑る。
 奇妙なほどに穏やかで優しい接触。
 記憶の中の彼の唇はもっと熱く柔らかかった気がしたのに。
 大きな体が離れてゆく気配に、縮こませていた体を弛緩させ、つくしがそっと目を開け仰ぎ見る。
 しかし、司は彼女を解放すると、すでにその場を立ち去ろうとしていた。
 屋上階段のドアを開け、彼女の横を通り過ぎようとする司の表情は、つくしからは見えない。
 「俺をケダモノにしたくなかったら、逃げ出すなよ」
 「…………」
 バタンと小さな音を立てて閉められたドア。
 ズルズルとつくしは背中の壁に縋って崩れ落ち、両手で顔を覆った。




*****




 「…道明寺さん?」
 向かい側を歩いてくる司へと、桜子が歩み寄った。
 無言で見下ろす司の様子に内心眉根を寄せつつ、けれど何食わぬ顔で問いかける。
 「先輩を知りませんか?夕食の後、部屋を覗いても姿が見えないんですが」
 「…屋上だ」
 「屋上」
 なぜそんなところにつくしがいるのか、どうしてそれを司が知っているのか、彼が語らずとも桜子が察する。
 そのまま横をすり抜けてゆこうとする司の背へと、桜子が問いかける。
 「先輩をどうされるおつもりなんですか?」 
 無視されることも想定内だった。
 けれど、司は立ち止まり、…だが、振り返られないまま小さく失笑した。
 「どうする?いまさら、俺にそんなことを聞くわけか」
 「人の心は、無理強いされたところでどうにもすることはできません」
 「ふっ、お前が言うのか?」
 「ええ、私が言うんです」
 司と桜子の間では、交わされたいくつかの契約事項がある。
 それはしっかりとした書面にされてはいなかったが、十分に信頼に足るものだと桜子は思っていた。
 なぜなら、それが『牧野つくし』に関することだから。
 司は桜子を裏切るまい。
 そして、桜子も…司が、つくしの意思を無視して彼女の人生をねじ曲げようとしない限り。
 …私ごときでは、とても道明寺さんの行く手を遮ることなどできないでしょうけれど。
 それでも司の下につくことで、つくしに対する彼の暴走を食い止められる一助になれればと。
 そして、その目算はある程度目論見どおりとなっているのではないのか。
 声をかけてもらったことを良いことに、滋を巻き込んだのもそんな理由だった。
 …ただ、滋さんが思わぬほどいい人だったのが、ね。
 いつの間にか、司は立ち去っていた。
 ふわりとそこに残された懐かしい残り香りにタバコの匂いが無性に切なく、彼女の感傷を掻き立てる。
 小さくため息をつき、そんな自分のセンチメンタルを小さく笑って振り払い、桜子もまたつくしを探してその場を立ち去った。




*****




ちょうど桜子が、屋上へと通じる屋上階段の一番上の段を上りきるのとほとんど同時にドアが外から開く。
 「あれ、桜子。どうしたの?」
 「どうしたの、じゃありませんよ、先輩。急に姿を消さないでください」
 同じ家屋内にいて姿を消すも消さないも大げさな言い草ではあるが、そう言いたくなるのもこの邸の規模では当然だった。
 下手すれば、建物内で遭難してもおかしくはないだろう。
 実際のところ、
 「ランチの後だって一人で部屋に戻れるとか言って、帰れなくて右往左往してたじゃないですか」
 「うっ」
 どうやらそんなつくしを心配しての桜子の優しさだとわかったが、いかにも呆れたような顔をされてはシャクに触る。
 「…だから携帯返してって言ったのに」
 そうすれば少なくても誰かしらには連絡をして、なんとでもすることができたのに。
 「道明寺さん、返してくださらなかったんですか?」
 答えはわかっていて、司がなんと答えたのかを確認する。
 「酔っ払ったあたしが、自分で海に落ちしちゃって、壊れたんだって」
 ムッと口をへの字に曲げて、それでも曖昧な表情なのはどこまで司を信じていいのか迷っている。
 「そうですか。まあ、吐瀉物を道明寺さんに吐きかけても、記憶をなして平然としていられる先輩のことですからね」
 「桜子!」
 「で、しょうがないから諦めたんですか?花沢さんに連絡を取りたかったんでしょ?」






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