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「昏い夜を抜けて…全483話完」
第九章 暁闇①

昏い夜を抜けて439

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 「く、苦しいッ!道明寺!!ち、力を緩め…てっ!」
 あまりの苦しさに、握り締めた拳でドンドンと司の背を叩き注意を促す。
 だがますます込められた凶悪な力。
 絞め殺されそうな強さに、つくしの背を恐怖が這い上ってくる。
 司がその気なら、つくしなどいとも容易く害することも、組み伏せることもできるのだ。
 だが…、大きく息を一つ吐き出し、司が腕の力を緩めた。
 とたん、ドッと空気が胸に入ってきて、まるで酸欠の金魚のようにつくしは大きく深呼吸を繰り返し喘ぐ。
 「ゴホゴホっ、ハーハー、ハー」
 「……わりぃ、大丈夫か」
 すっかり腰砕けに地べたに座り込んでしまったつくしの傍らに司も片膝をついて腰を下ろし、つくしの背中を撫でる。
 「あ、あいかわらずのバカ力」
 「…ああ」
 「す、少しは力の加減してよね」
 一瞬感じた恐怖を押しのけ、つくしは何事もなかったかのように、平然とした口調で苦情を言い立てた。
 そうでなければ…そうでなければ、わずかな均衡で保っている司の狂気が噴き出してしまいそうだったから。
 ひとしきり咳き込み、息を整えると、ドッと疲労が押し寄せつくしは嘆息した。
 「もう大丈夫」
 「本当にすまなかった」
 「…いいよ」
 手を貸されて立ち上がる。
 「部屋に戻るか?」
 「…そうね。さすがに寒さが堪えるかな」
 貸してもらっていたジャケットのボタンを外し、司へと返そうとするも、またも押しとどめられる。
 「いい、部屋まで着て戻れ」
 「…わかった、ありがと」
 いらないと突っ返したところで、どうせ司は受け取りはしない。
 彼のそんな性格を思い出したつくしも、無駄な小競り合いは避けた。
 「俺はもう少し、ここにいる。一人で部屋に戻れるか?」
 「あ、うん。たぶん」
 広大な邸内のことだ、迷子になる可能性もなきにあらず。
 …ていうか。
 「あたしの携帯、どこにあるわけ?」
 「………」
 「桜子に聞いても、あんたが預かってるの一点張りだし、なら桜子や滋さんの携帯を貸してって頼めば、プライベートなものだから嫌だとか言って貸してくれないんだもん」
 「…ここにいる限り、別に携帯なんてなくっても構わないだろ?」
 「は?何言っちゃってんのよ。そんなわけないでしょ」
 携帯を持つ習慣がなかった高校生の時とはわけが違う。
 いまや単なる伝達ツールとしてだけでなく、さまざまなシーンでの情報収集や端末としての機能もあり、司や類のような激務に励む経営者ではなくても、つくしにとっても今やなくてはならないものと化していた。
 「…急にここに連れてこられちゃって、あたしにだって心配してくれる人がいるんだから、連絡したいし」
 その心配してくれる人=家族という意味合いもあったが、互いに暗黙の了解で誰のことを言っているのかわかっている。
 「俺の執務室に固定電話があるから、そこから電話しろよ」
 「…固定電話って、そういえばこのお邸ホテルなみの施設をもってるわりに、電話だけは見かけないわよね」
 「まあ、使用人たちにも内線がわりに携帯持たせてるからな」
 「……なんで、あたしの携帯返してくれないわけ?」
 あまり司を刺激したいものではなかった。
 だが、なんとしても類とは連絡を取りたい。
 よもや司に監禁されるとは思わないが、類も心配しているに違いない。
 …あ、でも、桜子とバカンス?に行っちゃったとか思ってるかな。
 そのために有給休暇の許可も取ったあとのことだった。
 とはいえ、音信不通で何日も経てば類だとて不審に思うだろう。
 「返さないとは言ってないさ」
 「なによ、それ」
 司らしくない歯切れの悪さに、つくしがわずかにイラつきだす。
 「返したくても返せない」
 「はあ?」
 わけのわからない禅問答は、イラつきを助長する。
 「どういうことよ!あたしのプライバシーよ!!あんたがとんでもない俺様なことは、あたしも重々承知してるけど、あたしから携帯を取り上げる権利なんてない」
 大きな眼を険しくさせて、臆することなく司にさえ歯向かってくるつくしはまるで山猫のようで、だが司にとって、誰よりも生気と生きるパワーに満ち溢れた美しい女だ。
 …お前だけだ。この俺に何かを言うことができるのも、歯向かうことができるのも。
 「お前、それも覚えてないんだな。酔っ払ったお前が手に持っていたスマホを滑り落として、海にボッチャン」
 「う、うそっ!」
 もちろんつくしの記憶にはまったくない出来事。
 だが、司にゲロを吐きかけたことさえ覚えてないくらいなのだ。
 どんな醜態をさらしたとしても、ありえる気がする。
 「幸いすぐに拾い上げたが、お前携帯くらい防水仕様のやつにしておけよな」
 「うっ!」
 たしかに予算的に厳しくて、一番安いタイプにしていた。
 …で、電話を海に落すことなんて、一生に一度あるかないかのことなんだもん!
 とはいえ、昔洗濯機で回したこともあるのだから、懲りなかった結果だったとも言える。
 「とりあえず修理に出しておいた」
 「そ、そうなの」
 「それとも新しいのを用意してやった方が良かったか?その方が、手間もなくって今すぐにでも渡してやれるぞ?」
 ブンブンッ。
 「い、いい、いい、大丈夫!ありがとう。修理できるなら修理したい!」
 物は大切に…という経済観念や懐具合もあるが、やはり何かと中に入っているデータの移設やら設定等の手間を思えば、むやみやたらに新しく買い換えるのも良し悪しだ。
 「……じゃあ、固定電話貸してもらえる?」
 そういう事情では仕方がない。
 渋々納得して、司に頼む。
 「ああ」
 「明日、あたしは帰るけど、携帯は後日、郵送してもらってもいいかな、修理代の請求書と一緒に」
 内心ドキドキしながらではあったものの、何食わぬ顔で言い切ることには成功しているはずだった。
 「それはできねぇな」
 「………っ」
 「お前を…類のもとへは帰さねぇ」





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