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ブレイクアウト…18話完

ブレイクアウト10

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 通り過ぎる車のヘッドライトの光が、何度も何度もしゃがみこんで抱き合う二人の姿を照らしては去ってゆく。
 小さな手が、総二郎の胸をトンと小さくついて、胸を押しのける。
 「ご、ごめん。もう、大丈夫」
 「いや、俺のほうこそ、悪かった。フツー、怖ぇよな、そりゃ」
 「やられ慣れてる雑草女だから、平気だと思った?」
 つくしの顔は悪戯っぽくはあっても、特に責めているようではない。
 けれど、思い当りすぎる過去の所業に、今まで思いもしなかったというのに総二郎の頭が自然に下がる。
 「……すまなかった、あの頃も」
 「なによ、突然」
 むしろ、つくしの方が驚いてしまう。
 もちろん、言いたいことはわかる。
 高校生の時につくしがターゲットになった『赤札』のことを言っているのだろう。
 「ガキくせぇ遊びだとわかってて、司と一緒になって面白がってたからな、俺も」
 「そうだね。サイテーで卑劣な連中だったよね、あんたたちって」
 「………」
 胸をえぐる言葉だが、その通りなので反論のしようもなく言葉が出ない。
 「でもま、一番の元凶だった道明寺に謝られたこともないのに、あんたに謝られるとはね」
 「……高みの見物してたことには変わりねぇからな」
 強く思う。
 「そりゃそうでしょ。あんたらのことをきゃあきゃあ言う女の子たちを見るたびに、こんな肥溜めみたいに汚い奴らのどこがいいのかっていつも思ってたものねぇ」
 あらためて言われた当時のつくしのあまりな認識に、苦笑い。
 …類はいいのかよ。
 言いたくなったが、そこはグッと堪える。
 基本、類も同じようなものだったが、つくしに対してだけは違ったのだ。
 あの淡白…というより何事にも無関心な男がつくしのことだけは庇っていた。
 それが驚きで、てっきり彼もまた静に対するのとは別の気持ちではあっても、つくしのことが好きなのだと思っていたのだが。
 …あの勝負のあと、司がNYに行っちまっても、結局こいつら付き合わなかったしな。
 「でも、偉いよ。ちゃんとそんな自分がわかるようになって、謝れたんだから」
 「あ、ああ…」
 ついあさっての方向へとすでに思考は飛んでいたが、この場面でそんなことを言い出せばせっかく感心してくれたつくしに再び軽蔑されそうで、あやふやに誤魔化す。
 「あんなに最悪サイテー野郎だと思って大っ嫌いだった道明寺でさえもさ、近くで見てみれば、等身大のちゃんと優しいところもある男だったしね」
 「………」
 それこそ、あの司をそんな風に称せる人間こそ希少だろう。
 幼い頃からの親友だ。
 総二郎だとて、司の本質には繊細で優しい部分があることもわかっていた。
 けれど、司は長じるにつれ、そうした柔らかい部分を摩耗させ、グレて、歪んでいった。
 この目の前の女と出会うまで。
 だが、恋に破れた。
 それでも、ただグレて荒れていた日々を抜けて、あの頃のような生き生きとしたところはさすがになくなっていたものの、それでも格段につくしに出会う前より良い方向へと成長を遂げていた。
 …あの司が、俺らより真面目に仕事してんだからな。
 それなりに付き合っている女もいるようだ。
 ただ本気の女、というわけでもないところが気になるが、総二郎の方こそが人のことを言えたものでもない。
 無茶な生活をいているわけでもなく、いわゆる道明寺の御曹司に相応しい日常を消化できるようになったというところだろう。
 「あのさ、お前、マジで司や類のこと…」
 「大丈夫ですか?」
 頭上からかかった聞き覚えのある男の声に、総二郎は言葉を飲み込み、顔を向けた。
 「あ…」
 「…げっ」
 顔を見合わせた途端、互いに驚きに硬直し、こんなところで出くわした意外性にお互い言葉を失った。




*****




 「はい、どうぞ」
 「あ、ありがとうございます」
 渡されたティーカップを両手で包み込み、ズズッと小さく啜り込んで、思わぬほど冷えていた体に温もり取り込む。
 「美味しい」
 「それは良かった」
 にっこり笑った女性は20才前半、つくしよりは少し年上だろうか。
 つくしの隣の総二郎へ、そして対面側の総二郎によく似た面差しの男性へも紅茶を配膳して、自分もその隣に腰を下ろす。
 「…まさか、兄貴とこんなところで出くわすとは」
 「それはこっちのセリフだな。うずくまってるから、具合でも悪いのかと声をかけてみれば…ってやつだ」
 路上で声をかけてきたのは、なんと、家を出て医者をしているという、総二郎の兄だったのだ。
 そうと紹介されずとも、よく似た白皙の美貌が、容易に二人の血縁関係をあきらかにする。
 「あの小さかった総二郎が彼女とデートねぇ」
 「…あの小さかったって、いったい何年前の話してるんだよ」
 妙にしみじみと言われて鼻白んだ総二郎が、うんざりとため息を落とす。
 けれど、横から見るつくしの目に映る頬の赤みは目の錯覚だろうか。
 「兄貴の方こそ、いつ東京に戻ってきたんだよ?ずっとこのホテルに滞在してるのか?」
 「いや、まだホンの数日。こっちでの学会に通訳を兼ねて、教授のお供」
 「ああ、ならすぐにドイツに戻るのか?」
 「まあ、そうなるかな」
 曖昧な答えに、総二郎が眉根を寄せる。
 その間も、隣の女性と見つめ合っては微笑みを交わし、手を握っては、何かを言いあぐねているのを赤の他人のつくしでさえわかるのだから、カンのいい総二郎はなおさらのことだろう。
 「…もしかして、結婚の報告にでも帰ってきたんじゃねぇの?」





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