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「中・短編-」
ブレイクアウト…18話完

ブレイクアウト07

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 「美味しい…」
 ほっぺたが落ちるとはこのことだろう。
 夜景の美しい高級ホテルのフレンチレストラン。
 二重写しに鏡のように映ったレストラン内で、美貌の王子様と微笑みあいながら食事をしている美しいお姫様は自分だなんて、まるで子供の頃の夢が再現されたようだ。
 「…ホント、あんたたちって見た目だけなら王子様なんだよね」
 「は?なんだよ、見た目だけって。俺はどこからどう見たって王子様だろうよ?」
 臆面もなく言い放つ傲慢さにはもう慣れたもの。
 とはいえ、本人が自惚れるのも仕方がないくらいに、たしかにいい男ではあるので、今夜はつくしも反論しはしない。
 「お前も今日はすげぇ見違えたな」
 「へえ?惚れる?」
 意外な切り返しに、総二郎が一瞬目を瞬かせ、ニヤリと笑う。
 「言うじゃん、勤労鉄パン女の牧野が」
 「……鉄パンはいいかげんやめて」
 顔を赤らめて、ぶうっと頬を膨らめるさまさえ可愛い。
 ガキでもあるまいに。
 そう思うのに、大人の女としてはどうかと思う仕草も、素直な感情の発露だと思えば、見た目ばかり取り繕って中身真っ黒な人間とばかり付き合ってきた総二郎にとって、新鮮で好ましかった。
 「まさか、鉄パン脱ぎ済とか言わねぇよな」
 「……なんでそんなことあんたに言わなきゃならないのよ」
 「へぇ、あのつくしちゃんがねぇ」
 しみじみ言われて、逆に誤解されたままというのも気恥ずかしく、つくしが訂正する。
 「……どうせ、彼氏いない歴20年を驀進中です」
 「ふっ、と思ってた」
 「なによ、カマかけたの?」
 「カマなんてかけてねぇよ、見たからに色気ねぇんだもん。そんなのわかるけど、お前の見栄張りどこまで頑張れるのか、見てみたかっただけ」
 「根性悪いわね、あいかわらず」
 あいかわらずはつくしの方だと思う。
 彼らF4にそんな率直な悪態をつける女は他にいない。
 高校時代もせいぜい司や類が彼女に関わっていたから、多少言葉を交わしたくらいでそんなに親しく付き合っていたわけではなかった。
 それなのに、なんだというのだろう、この距離感は。
 自分を繕う必要がない。
 嫌なことは嫌だ。
 楽しいことは楽しい。
 美味しいものは美味しいと、素直に自分の気持ちのままに接してくる女といると、自分まで感化され、楽しかった。
 …こいつの家に転がり込んだのは気まぐれだったのにな。
 本当に二週間も、びっちり居候するつもりなどなかった。
 なんだか妙に懐かしくなって、せめて顔の腫れがひいて、どっかの女を引っ掛けて無聊を慰められるまでの間―――それくらいの認識だったのに。
 「それって西門さんの癖?」
 「は?なにが?」
 「さっきもあたしの顔、ジッと見てたでしょ」
 「ああ。綺麗なつくしちゃんに見惚れて…とか思わないわけ?」
 言い当てられれば気恥ずかしいのに、自分から意味深に言い出せばそれはからかいのセリフになる。
 そんな小癪な策略で、総二郎は誤魔化すことを選ぶ。
 バクッと一口大に切ったロブスターを一口口に含み、「ん~、ホント、幸せ」とつくしがまたも嬉しそうに微笑んだ。
 「あたしは自分が十人並みだってことを知ってるもん。いくら化けたからって、そんな風に自惚れられるほどバカじゃないって」
 「……お前ほど鈍感な女もたしかに今時希少価値だったな」
 「なに、それ。微妙にシツレーじゃない?」
 「いや、ホントだって。まあ、確かに普段のお前は、見惚れる価値もないズボラ女であることは置いておいて、そんなズボラ女に惚れまくってた男もいるんだから、女としてはそれなりに自信持ってもいいんじゃねぇの?」
 俺にはわからない魅力だけどな…と毒を吐く総二郎の足を、つくしがテーブル越しにヒールのつま先で突っつき、蹴り飛ばすマネをする。
 「アホ、やめろ。ハズいだろ」
 「…遠慮して、周囲の人には見えないようにしてるでしょ」
 「そういう問題かよ」
 「あんたが悪いんだから、文句言うな」
 軽く言い争いをしているところへ、メインを食べ終わったのを見越したウェイターがチーズを配膳する。
 「ん~、もうお腹いっぱい。美味しかったけど、デザートまで食べられるかな」
 かなり真剣な顔に、総二郎が噴出しそうになる。
 たかが食べ物ののことでこれほど真剣に悩む女は、彼の人生でこれまで周囲にいなかった。
 …そういえば、昔司の奴が、こいつが弁当食ってる顔をヨダレたらしそうな顔でよく見てたっけな。
 単純に、好きな女を食いたいと思ってるのかとお年頃の高校生男子的に思っていたが、この人目を気にしないで感情のままにクルクル動く表情に見惚れていたのだと思い当たる。
 「…お前って、まだ類に未練あるの?」
 「ぶっ」
 ちょうどグラスの水を口に含んでいるところだったので、つくしが噴出しかける。
 げへげへっと咽せ込んでいるつくしに、ナフキンを渡し、
 「落ち着きねぇ女だな。誰もとりゃしねぇんだから、もう少しゆっくりと飲み食いしろよ」
 「…じゃないでしょ。あんたが水飲んでる時に、変なこと言うから!」
 「類?」
 「………ごほん」
 わざとらしく咳払いをしつつ、受け取ったナフキンで口を吹き、一息ついて総二郎へと顔を向ける。
 「いったい何年も前の話をしてるのよ」
 「ん~、4年くらい?」
 「だよね…。花沢類とのことは、青春の淡い思い出っていうか。その…そもそも相手にもされてなかったのに、未練なんかあるわけないでしょ?」
 総二郎も当時を思い起こして、目の前の女をジッと見る。
 落ち着きなく視線を反らしているのは、本音の話ではないからなのか、それとも言い当てられて動揺しているのか。
 「色気は…まあ、確かにねぇけどよ、お前、鈍いだけでそれなりに男にアプローチされることもあるだろ?」
 容姿は十人並だが、つくしにはそれを補う魅力がある。
 なにかとからかっている総二郎だったが、それは高校生の頃にもわかっていたことだし、ここ数日一緒に過ごして気がついていた。
 女の顔は化粧や装いでどうにでもなる。
 現にいま目の前にいる女はすぐにでもむしゃぶりつきたくなるほどイイ女だった。
 けれど、人間の価値はそれだけではない。
 それを強く感じさせてくれる初めての女。
 「現に、あの女嫌いの司も、お前に夢中になって追い掛け回してたじゃねぇか」
 「…道明寺は」
 一瞬顔に走った感情の流れは、なんだったのか。
 それこそ司への未練だとは思いたくない自分を、総二郎は自覚しないまま無言でつくしの答えを促す。
 「道明寺は…そうだね。こんなあたしでもイイって言ってくれてたっけね。でも、あいつくらいなもんだよ。あたしみたいに…それこそ西門さんの言うとおりに色気もない、シャレっけもないあたしでも好きだとか言ってくれる人なんていなかったかな」
 「…はん」
 「そりゃあさ、あたしだって、人並みにオシャレして、デートしたりとか憧れたりしないわけじゃないけど、うちの状態じゃそうそう夢見てられないし、実際生活と勉強に追われててそれどころじゃないっていうのが本当のところ。もちろん、そんなあたしでもイイって言ってくれる人が現れたら、か、彼氏とか…そういうのだって、欲しいとは思ってるよ」
 「………」
 この年頃の女が持つささやかで当たり前すぎる当たり前な望み。
 恥ずかしそうにモジモジ言うさまが、ウブで可愛いものだと思う気持ちと、いい年をして…とバカにする気持ちと、どこか面白くない気持ちと。
 「チーズ、食っちゃえよ。食えないなら食えないで、残せ。デザート食いたいんだろ?」
 「え?あ…うん」
 「デートの総仕上げに、上のスウィートに部屋とって、日照り女の初デートの思い出作りに協力しようかと思ったけど、なんか萎えちまったな。…さっさとコーヒー飲んで帰ろうぜ」





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