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「中・短編-」
ブレイクアウト…18話完

ブレイクアウト04

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 「…なになにつくし、時間なんて気にしちゃって、デート?」
 横からつくしの腕時計を確認した久子がニヤニヤ笑いで、探りを入れて来る。
 「何言っちゃってんのよ、あたしが時間に追われているのはいつものことでしょ?この後、家庭教師のバイトが入ってるのよ」
 「……つまんない」
 呟かれ黙々と帰り支度をしていたつくしが、やっと久子を振り返った。
 「なによ、それ」
 「大学3年生になっても彼氏なし歴更新中の超!ド真面目なつくしにやっと彼氏ができたと思ったのに」
 「……超!ド真面目って」
 確かに勉強が嫌いなわけではなかったけれど、特別真面目というわけではない。
 ただ勤労学生であるだけあって、この一時限分の為に苦労しているんだと思えば、とてもじゃないが無駄に時間を費やす気持ちになれず、つい取れるだけの授業をとって我武者羅に頑張ってしまうだけのことなのだ。
 たんに不器用なだけなのかもしれない。
 貧乏性がもはや慣い性?
 つくしにもある程度自覚がある。
 「西門さんのこと、あんたはただの高校時代の先輩とか言うけど、普通、それだけで毎日送り迎えとかないでしょう?」
 「…ああ、それはね。ちょっと事情があるの」
 久子の目がキラーンと煌く。
 「なに?その事情って?」
 「…秘密」
 「ケチッ!!!」
 バンバンッと講堂の机を叩いてブーイングする友の奇態を横目に、もう一度腕時計を確認して席を立つ。
 実のところ、つくしにだとてわからないのだ。
 それなりに因縁はあるとはいえ、高校時代はあくまでも司や類を通じて顔見知りだった程度の総二郎と、なぜ同居するハメに陥ったのか。
 また、いったいどういうつもりで総二郎が、こうした得にも益にもならないであろう、庶民生活を垣間見るようなモノ好きなマネを続けているのかが理解できない。
 …気まぐれ、っていうのが一番的を得てるんだろうけど。
 庶民生活を体験してみたかっただけにしては、飽きもせず、同居生活5日を過ぎてもいまだつくしの送迎を律儀に続けているのはなんなのだろう。
 …嫌だな、と思う。
 当初の2,3日はたしかに、総二郎自身への警戒心もあった。
 気が付けば丸め込まれていたにしろ、女の一人暮らしの部屋(ごく短期間にしても)に知人とはいえ、若い男を居候させるなど正気の沙汰ではないくらい、うっかり者の自覚のある彼女にだってわかっていた。
 けれど、そんなことではないのだ。
 「…なに、溜息なんかついてんだよ」
 顔を上げれば、ここのところ見慣れた五月人形の若武者のような美貌の男の横顔。
 考え事をしているうちに校内を抜け、いつものように門柱に寄りかかって待っていた総二郎を無視して通り過ぎてかけていたらしい。
 「お前くらいなもんだぜ?この俺に気がつかないで、通り過ぎるとかいう女」
 なにげに総二郎のボヤキはスルーして、
 「溜息の一つもつきたくなるでしょ」
 「そっかぁ?まあな、こんなイイ男がナイト役で昼夜問わず傍にいてくれちゃったら、お前みたいに免疫ない女にしてみりゃ、テンパっちまうのもわからないでもないさ」
 「それ系のナルシスト的発言、もう聞き飽きたから」
 「またまたぁ。照れんなよ、お前、よく俺の顔に見惚れてるだろ?」
 ないわけではないが、つくしも高校時代である程度免疫ができている。
 また、こうして不本意ながら超身近で接するようになって、F4に夢を見るには彼らがいかにその見かけとは裏腹に困った奴らだったかということが次々に思い出され、うっとりできたのも免疫が切れていた1日、2日のことだけ。
 「ハァ……呆れてつい見入っちゃってるの間違いだから、それ」
 頭痛がしてきた。
 「おい、せっかく待っててやった俺を置いて行くな。荷物…」
 「はいはい、よろしく!」
 ひったくられる前に、さっさと手荷物を押し付ける。
 これもここ数日の間で馴染んだ習慣だ。
 …まあ、衣食住タダで居候させてるわけだし、荷物持ちくらいしてもらってもたしかにバチもあたらないよね。
 とはいえ、衣食住のうち食と住はたしかにつくしが提供していたけれど、食の方は外出しては手土産を持参してくるし、つくしの懐具合ではとてもではないが手が出ない高級食材を、いったいどこから仕入れてくるのか、ひょこっと持ち寄ってくる時もある。
 また衣類も、転がり込んできた当初、彼女の弟の服をいささかツンツルテンではあったけれど着せていたのに、次の日にはさっさと自前の服を入手していた。
 …ホント、どういうつもりなんだか。
 強盗にあったにしても(美人局だっけ?)、金がないわけでもないのに、モノ好きも極めている。
 「…バイク持ってくるか」
 「はあ?」
 「いい加減歩くのも飽きた。風を切る感触ってすげぇ気持ちいいんだぜ?」
 「いや、バイク取りに戻れるくらいなら、もう帰ってもいいんじゃない?」
 「バーカ、隠れてんのに、わざわざバイクとりに帰るわきゃねぇだろ」
 …隠れてるのか。
 まあ、顔の傷がどうのと言ってたのもまるっきりの与太でもないのかもしれない。
 「じゃあ」
 「買うに決まってんだろ?ちょうど、カワサキのニューモデルが発表されたから乗りたいと思ってたし」
 「ええ?買い換えるわけ?」
 さすがは金持ちのボンボン。
 歩くのが面倒くさい→じゃあ、バイクを買うか。
 うーん、あいかわらずついていけない連中。
 と思ったら、
 「誰が買い換えるかよ。俺のハーレーのソフィちゃんは永遠の恋人なの」
 大真面目な顔で返され、内心ポカーン。
 いや、そんな顔もかっこいいけど、バイクにソフィちゃんはいただけないでしょう。
 とはいえ、物を大事にしているのには好感を持てた。
 この女ったらしという理解不能の宇宙人に対して、抱いた初めての感情ではないだろうか。
 「あれ?でも、カワサキのどうのっていうのは?言ってみただけ?」
 「それはそれ」
 「…は?もしかして、何台も持ってたりするんだ?」
 車道楽な人たちは、コレクションもしている人がいるというから、バイクも同様かも知れない。
 「当然。恋人がいても、ちょっと綺麗な子がいれば目移りするのは男としては、当たり前の欲求だろ?それと同じで、今日の気分はソフィちゃんでも、次の日は違う子に乗りたい気分もあるし、まったく新しい子にチャレンジしたくもなったり、やっぱりソフィちゃんが最高だと思い直してしばらく一筋の時期もある」
 「…………」
 何をいわんや。
 「…それって、バイクの話じゃなかったの?」
 「バイクの話でもあるかな。ま、バイクと違って人間の女の子に戻ることって、俺の場合まずないけど。ほれ、昔、言わなかったっけ?俺って一期一会を大事にしてる男だから、3回ルールで別れた子でも、どれだけ久しぶりに会ってもちゃんと覚えていて、次回はコナかけたりしないんだよな」
 ……サイテー。




*****




 
 「今日は夕飯どうする?お前、家庭教師に行った先でゴチになってきたりしねぇんだろ?」
 「うん、それはね。勤労学生のあたしにしてみれば、正直ありがたいけど、家族の団欒にお邪魔するのも気が引けるし、そういうことを期待しているみたいに思われて疎まれるのも嫌だからさ」
 「…考えすぎだと思うけど。ま、それなら夜は俺がご馳走するから、たまにはどっかの上手いフレンチにでも行くか」
 「はぁ?!フレンチぃ~?何バカなこと言ってんのよ。そんなもの食べに行く懐の余裕も、着てゆく服もないっつーの」
 話にならん、とつくしが頭の上で手を振る。
 「だから、俺が奢るって言ってんじゃん。居候させてもらってる家賃とか食費代がわりに、着ていく服もプレゼントするし?」
 いかにもタラシの常套手段で、よもや自分に邪な気持ちなどないだろうとはわかっているが、身内でも彼氏でもない男に服を買ってもらうほど尻軽女ではないつもりだった。
 「あんたに服なんて買ってもらう筋合いないし。家賃とかいうなら、そっちでお金でも入れないさいよ」
 「入れろっていうなら、もちろん入れるけどさ。それこそ大した金額にもならねぇんじゃね?」
 「…どうせ、粗末なものばかり食べさせてますよっ」
 からかうような総二郎の口ぶりに、ムカッ腹がたってつくしがねめつける。
 「だいたい、あんたらは舌を甘やかしすぎ!美味しいものを食べるのはいいけど、フレンチだ、イタリアンだの、贅沢なものばかり食べてたら、いずれ成人…」
 「あ、なんか携帯鳴ってんな。お前のじゃね?」
 滔々と続きそうだったつくしのお小言を遮って、総二郎が肩からかけていたつくしのトートバッグを差し出す。
 「あ、ホントだ」
 慌ててバッグの中から携帯を取り出し、受信を押す。
 着信者を確認する余裕もなかったが、出てすぐ戸惑うこともなく、聞き慣れた家庭教師先の教え子の母親の声だった。
 「え?あ…そうなんですか。それは大変ですね。ええ…はい。いえいえ、仕方ないですよ、お気になさらず。今は大事な時期ですから、こじらせないようにゆっくりと休んだほうがいいと思います」
 どうやらこのあとの予定に入っていた家庭教師先の子供の体調不良か何かで、急遽休みになったようだ。
 携帯の受信を切り、またも溜息ひとつ。
 「だから、それ、やめろって言ってんだろ?
 コツンと総二郎に小さく額を小突かれた。
 「…しょうがないでしょ。いきなり予定がポカーンと空いて、途方にくれてるんだから」
 もう少し早くわかっていたら大学の図書館に残れたのに、と思う。
 「いいじゃん、それならそれで、たまには遊ぼうぜ」
 「はい?」
 「俺とデート。花も恥じらう女子大生がバイトと勉強だけって、どんだけ青春を無駄にしてんだよ。この天下のカサノバ西門総二郎さまが、お前の無味乾燥な毎日のうちの一日を、夢みたいな一時に演出してやるよ」





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