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「中・短編」
甘い毒(1話完結)

ポイズン~Sweet~

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 「…あの女」
 「確か…高校時代の後輩だとか。ご家族ぐるみで交流のあるご友人だそうですよ」
 不機嫌に睨みすえる司とその彼の美貌をうっとりと見上げる女の視線の先、類の横で所在無げに身を寄せていたつくしが、ドレスの裾を踏んで類に抱きとめられ、恥ずかしそうに照れ笑いしている。
 淡いピンクのシフォンドレスが、清楚な雰囲気の彼女によく似合っていた。
 彼らの周囲には望む望まざるに関わらず、たくさんの人間達が集まる。
 それは司のいる場とは離れた一角で、つくしを伴っている類にしても同じことだ。
 人も羨む美貌と家柄、財産、地位、何一つとっても誰に過不足を取ることなく、どんな女も思いがまま。
 そんな類が何くれとなく世話を焼き、普段はクールな彼には珍しい和やかさを引き出しているつくしに会場中の注目が集まっていた。
 …なんで牧野がNYにいやがんだ。類の野郎勝手に連れ出して、恋人の俺に一言もないっつーのはどういうこった!?
 どうしてもと頼まれ、取引先の令嬢を伴ったこのパーティ会場で、よもや日本にいるはずの恋人に出くわすとはさしもの司も予想の範疇外だ。
 司にとって、NYでの過密なスケジュールも、道明寺財閥の次期総帥としての立場さえ、すべてはつくしのためだけに。
 そんな彼にしてみれば、遠距離恋愛中のつくしが、今何故、親友とはいえ自分以外の男と連れ立ってこの場に現れたのか理解不能で、ムカつくかぎりだった。
 おそらくお節介な友人たちが、遠距離恋愛に甘んじてクリスマスさえも会えずにいる自分たちを憐れんで、適当な理由でつくしを丸め込んでここまで連れてきたに違いない。
 自分たちを凝視する司の視線にも気がつかずに、つくしが類の腕をつついて、屈みこんだ彼の耳元で何事かを囁いている。
 …もう我慢できねぇっ!!
 司にエスコートされ得意そうにおしゃべりしていた女が、突然憤然と歩き出した司の行動に驚いて目を見開き慌てて後を追う。
 この稀有な男の不興を買うようなマネをしてしまったのか、女の顔はわずかに青ざめ引き吊っていた。
 遠目で見る類とつくしは、司の目にも仲睦まじい似合いの一対の恋人たちのようではないか。
 花沢物産の若き後継者のもとへと挨拶に詰寄せていた人々が、半ば蹴散らすように突進してくる司の姿に気がつき、慌てて自ら道を開ける。
 禿頭の中年男の祝辞を受けていた類よりも先に、つくしが彼に気がついた。
 瞬間…二人の間に生まれた磁力。
 まるで二人以外、他に誰もいないかのような錯覚。
 司の目にはつくしだけが、つくしの目には司だけが。
 「道明寺…」
 驚いたように大きな目を瞬かせて、パアァッと顔を輝かせた愛しい女が彼の名を呟く。
 …チッ。ずるくせぇ、女。
 何、類とイチャコラこいてんだと怒鳴りつけようと思っていたのに、その嬉しそうな笑顔一つで、毒気を抜かれ、怒りも霧散してしまった。





 苦しげに小さな声で喘いでいたつくしの体が一瞬強張り、甘く呻いて脱力する。
 何度抱いても、飽きない。
 抱けば抱くほどつくしが足りない。
 彼女が欲しくなる。
 繋がったところから互いが溶け出して一つになれればいい。
 触れ合った部分から自分の想いが、彼女の中へと染み入るようにと丹念に触れる。
 そうした愛情とは別のところで、彼の欲望を大きく沸き立たせる魔物のような女。
 つくしの何度こうして肌を合わせても、恥ずかしそうに恥じらうウブな仕草が、快楽に潤んだ大きな目の蠱惑が彼の心を、まるで遅効性の毒のように蝕み侵す。
 …なんてタチのわりぃ女なんだよ。お前って女は。
 会うたびに美しくなる彼女に、焦って嫉妬して…。
 誰にも盗まれないように、誰にも見せないようにと腕の中に囲い込んで閉じ込めたい誘惑に何度囚われたことか。
 …お前がイイ男になれと言うから、俺は頑張ってるんだぜ?
 道明寺財閥も、数万の社員たちも、イイ男なることさえすべて投げ捨てても彼女の傍にいたい欲求を抑えて、それさえも彼女ゆえだと思うと、どれだけ彼女にイカれているのかと、自分で自分を笑いたくなる。
 勝気で男勝りな彼女が、ベッドでは素直で可愛い女に変わった。
 彼の指先が触れるだけで、全身を朱色に変え、あえかな色香を匂わせ司を狂わる。
 抱けば抱くほどに、逢えば逢うほどに、彼女への妄執じみた恋情が深まって、離れがたく彼を身悶えさせた。
 けれど……。
 「……もう戻らなきゃ」
 彼の裸の胸に抱かれ、荒い息を整えていたつくしが、小さくため息を一つ落として恥ずかしそうに体を起こした。
 いまさらなのにシーツを引き寄せ、自分の胸元を隠して、そっと司の頬を優しく撫でる。
 そんな彼女の小さな白い手を取り、司が口元へと運び、チュッと小さくキスを落とす。
 引き寄せて、再び抱き寄せようとする彼に抗って、つくしはほのかに赤く頬を染め、ゆっくりと頭を横に振った。
 「ダメだよ」
 「……帰るなよ」
 「だって…まだ。約束の4年までもう少しじゃない」
 そのとおりだ。
 彼女がNYに訪れたのは、ホンの一時の夢。
 未来永劫ともに歩むために必要な別離。
 彼にしてみても、やり抜くまでは耐えるつもりだった。
 つくしにワガママを強いて引き止めるつもりなどなかったというのに…実際に彼女に逢ってしまうまでは。
 彼に手を離させ、ベッドの下に落ちた衣類を身に付けるその背中は、頼りなく寂しげだった。
 …守ってやりたい。
 二律背反。
 「予定より…遅くなっちゃった。シャワーはやめとくね。飛行機に間に合わなくなっちゃう。今日はそのまま類と待ち合わせてる空港に向かうから、ここでさよならね。タクシー拾うし、車で送ってくれなくても大丈夫」
 語尾が小さく震えて、後ろを向いていても涙が大きな目に溢れているのがよくわかる。
 彼の引き止める言葉も、またな、の言葉も聞きたくはないのだろう。
 先程までの温もりが急激に冷めてゆく。
 …どうして。
 …なぜ、これほどに愛しい女と離れていなければならない?
 えいやっと振り向いたつくしの顔には、もう涙はなかった。
 けれど、赤い目が、頬に残る涙の痕が彼女の気持ちを司へと雄弁に伝える。
 彼もまた同じ想いだったから。
 …離れたくない。
 けれど、つくしはいつもの明るい笑みを浮かべ、小さく手を振るだけで、苦しい気持ちを隠してすべてを飲みこんでしまった。
 「…じゃあね、道明寺」
それだけ。
 バタンと閉まったドアの音が、まるでしごく重い鉄の扉の音のように、司の耳に響き胸を塞いだ。



 一歩足を踏み出すたびに、胸が振り絞られるような辛さが胸を苛む。
 つくしは涙を片手のひらで拭って、必死に嗚咽を堪えた。
 永遠の別れでもあるまいに、あたしったらなんて弱虫なの。
 だから逢いたくなかった。
 逢いたくて逢いたくて逢いたくて。
 でも、逢ってしまったらまた離れ離れにならなければならないのが辛すぎるから。
 けれど逢いたい気持ちに負けて、友人たちの好意を受け入れてしまった。
 逢いたい気持ちを抑えられなかった。
 変わってなかった。
 激務にやつれた顔が、つくしを見て輝いて、優しく緩んで愛しげに見つめられて。
 …好き。
 …愛してる。
 どうしてあとちょっとのことだというのに、逢いたい気持ちをコントロールすることができないのか。
 一人でも頑張るんだと思い定めて、司を信じて待つつもりだったのに。
 …やっぱり変わってたかも。
 以前は彼女以外の女をけっして寄せ付けなかった彼がエスコートしていた綺麗な女性。
 仕事関係の人だとちゃんと信じているのに、嫉妬と不安でどうにかなってしまいそうだった。
 「類…」
 彼女の魂の一部の人。
 つくしの司不足を見破ってNYまで連れてきてくれた。
 司と逢えたから…また、信じて待つことがきっとできる。
 「ありがとう、類」
 溢れ落ちる涙は拭っても拭っても頬を濡らして乾きそうにもなかったけれど、これはけっして哀しい涙なんかじゃないから大丈夫。





 つくしが部屋を出たとたん、さっきまで明るかった部屋が急に火が消えたように暗くなった。
 彼女がいない空間。
 この4年近く、ずっとひとりで過ごして4年後だけを見て突っ走ってきたのに、彼女一人がいなくなっただけで、気持ちがダダをこねる。
 もう逢いたくて、逢いたい気持ちを抑えるのが難しい。
 …牧野と一緒にいる未来のために、俺が選んだんだ。
 …あいつは俺を信じて待っててくれるんだ。
 そう思う端から、耐え切れずに我慢できずに項垂れ呻いて、瞼の裏に先ほど別れたばかりの愛しい女を思い浮かべる。
 「くそっ!」
 手に触れたバスローブを身に纏い、今彼女が出て行ったばかりのドアを飛び出したのは衝動だった。
 わかってる。
 けれど、今はただもう一度彼女の顔が見たい。
 彼女の声が聞きたい。
 彼女を抱きしめたい。
 そうだ、まだ自分は言っていなかった。
 …必ず、必ず4年で迎えに行く。
 「牧野ぉッ!!」





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