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「中・短編」
Middle story(2~5話完結)

Stole my heart 後編

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 道明寺から連絡があったのは、年末の約束から大幅に遅れて…1月も半ば近く、もうすぐあいつ自身の誕生日になろうという頃だった。
 あたしにしてみても、どうしたんだろうとは思っていた。
 遅くなっても年明けには戻るとは聞いていたのに、いくら世界中を飛び回っているとは言え、今の道明寺は東京支社長。
 NYにまるで行きっぱなしということはありえないし、あたしと会う暇がないにしろ、帰国していれば短期間の帰国でも連絡をくれると思っていたのにまったく音沙汰がない。
 ドタキャンや音信不通はそれこそ珍しくはなかったけれど、それにしたってドタキャンするのならするなりに、音信不通になるのならなるなりに前振りはしてくれて、こうまで完全に放置されたような状態は初めてのことだった。
 ―――副社長の話はどうなったんだろう。
 道明寺の秘書の神崎さんの連絡先は聞いていたから、しようと思えば問い合わせすることもできた。
 けど、部外者のあたしがそんな内々のことを聞くのはどうかと思ったし、実際に副社長に就任したのなら、あたしに連絡をくれないはずがない。
 気持ち的にはジリジリとしていて、それとなくF3に聞いてみようかとか、いや、それはあいつのプライドに触るんじゃないか、とか。
 本当は、どこかでわかっていたのだと思う。
 迎えの車に乗って久しぶりに訪れたお邸内の部屋に、道明寺はやはりまだ戻っていなかった。
 あたしは休日だったけど、あいつは仕事なのかな。
 でも忙しくて会えないようなら、わざわざ迎えの車を寄越すこともないよね?
出迎えに出てくれたタマさんも留守だとは言っていなかった。
 柔らかい日差しが、大きな腰窓から射していて、空調で整えられて暑くも寒くもなく快適な室内でさえも気持ちがよく感じる。
 …あいつ、こんな風に外の景色を眺めたりすることってあるのかな。
 世間は冬枯れた風景だというのに、相変わらずお屋敷の庭は青々とした木々が茂っていて、隙間隙間をぬうように赤や黄色の葉の木が色鮮やかだ。
 「…あたしも、ここからこんなふうに景色を眺めるのも久しぶりかも」
 大学生の頃は、あたしのほうが断然時間があったから、こうして道明寺を待つことも多かった。
 けれど、あたしも社会に出て仕事が忙しくなると、もっぱら会うのは夜の時間や、あたしのアパートでということが多かった。
 それでもあたしが変に片意地を張らずに、道明寺の望むままに結婚や同棲に応じていれば、もっと一緒にいられる時間が増えていたのだとは思う。
 けれど、それはしてはいけないことのようにあたしはずっと感じていた。
 …どうしてなんだろう。
 あたしだってあいつと毎日会いたかったのに。
 朝、目が覚めると、あいつはどうしてるのかな、ちゃんとご飯食べてるのかな、と気になって、仕事の合間、ふと時間があると、今道明寺はどうしているのかな、ってやっぱりまた考えて…今日は電話が鳴るかな、会えるかな、なんて期待した。
 夜、寝る前の一時、結局鳴らなかった携帯電話にため息をついて、メールでお休みって送って、明日会えるといいなとか、電話で声を聞けるといいな、なんて思いながら眠った夜も数え切れないほど。
 ガチャリ、とドアが開く音が聞こえて振り返ると、予想どおりに道明寺。
 いつもとは違って、ラフな格好をしたあいつは相変わらずの見惚れるほどのカッコ良さ。
なんだか見慣れない別人みたいでドキドキする。
 「…なんだよ、変な顔して」 
 「え、あ…いや、今日、オフだったんだ?」
 そうは言っても、手には書類を持ってるから、お屋敷で仕事をしていたのかな。
 「だから、お前を呼んだんだろう?」
 「…まあ、そうだろうけど」
 でもいつもだったら朝も夜もなく、仕事が終わったら即あたしのアパートに押しかけてきて、こうして朝のまともな時間に連絡が来て呼び出されることなんて、最近ではまったくなかったのに。
 今までとは違う行動が、あたしに小さな不安を呼び起こす。
 「座れば?」
 「…あ、うん」
 いいのかな。
 なんでか、あたしはこいつ相手に緊張していた。
 …道明寺財閥が業績不振とかそんな話なかったよね?
 たいがいこいつ関連の記事については、あえて見ないようにしていたので、恋人といえどこいつの会社や家の事情には疎かった。
 怪訝な顔の道明寺に愛想笑いをして、そそくさとソファに座り、何とはなしに奴の言動を見守ってしまう。
 一通り書類に目を通し終わったのか、ため息一つついてその書類をキャビネットに叩きつけるように放り投げると、ドサリとあたしの横へと無造作に腰を下ろして、いきなり膝の上に寝転がってきた。
 「…ちょっと」
 「少しだけ」
 フゥと吐息を吐き出し、目を瞑った顔がどこか疲れてる。
 ムズムズ、そわそわ。
 なんとなく落ち着かないのは、やっぱりここがあたしのテリトリーじゃないから?
 あたしもこいつとはかなり長い付き合いだから、膝枕の一つや二つでいまさら照れたり動揺したりすることもないけど、ここのところのこいつのらしくない行動に…正直参ってた。
 もしかして…何かとんでもないことがあって、あたしと、あたしと…別れようと思ってるんじゃないか、とか。
 結構時間がたって眠ってしまったんじゃないかと思っていた道明寺が、いつの間にか大きく目を開いて、あたしをジッと見つめた。
 思わずたじろいで、無意識に髪を撫でていた手を引っ込めようとしたけど、引っ込められずにぐっと大きな手に手を握り締められる。
 「……俺」
 「………」
 「俺、副社長、ダメだった」
 絞りだすような声があまりに弱々しくて、初めあたしの聞き間違いかと思ったくらい。
 でも真剣な目がどこか頼りなさげに揺れ動いていて、思わず詰めていた息を吐き出し、ふぅんとあたしは頷いた。
 「そうなんだ」
 「………」
 「………」
 ジッとまだあたしを見ているから、他にも何か話すことがあるのかと待っていたのに、何も続きをいう風情じゃない。
 「………?」
 あまりにじ~ぃっと見られるから居心地が悪い。
 なんなのよ。
 「……それだけかよ」
 「それだけって」
 何が、それだけなんだろう?
 「副社長になれなかったんだぜ?」
 「うん、残念だったね」
 ちゃんと頷いたのに、やたらと目を瞬かせて不審そうなのはなんなのよ?
 大きく息を吐き出して、道明寺がいきなりクルリと体の向きをかえて、俯せにあたしの膝へと顔を伏せた。
 あたしの腰に回された両腕にギュッと力がこもって、まるで迷子になった子供が親に会えたみたいに縋られてるみたいで…。
 「…誕生日、あんたまたずいぶんいろいろ贈ってくれちゃったわね」
 「気に入ったのあったか?」
 「……気に入ったって、あたしの狭いアパートのどこにあれだけの量詰め込もうっていうのよ。あんたまさかブティックの物まるごと買い取ったわけじゃないでしょうね?」
 「ふん」
 ふん、て否定しないよ、こいつ。
 「いらねぇのは、捨てればいいだろ?」
 「あんたね…」
 結局、普段使いできそうなバックやコート、靴を二つ三つづつ残しただけで、いつものようにお屋敷に引き取ってもらっていた。
 折々で椿お姉さんがお土産でくださるものやこいつからのプレゼントで、お屋敷のデカイ部屋が二つくらい埋まってたりするから、今更だけど、毎度限度を知らない姉弟なんだよね。
 「…コンサート行ったのか?」
 「あ~ううん。行かなかった」
 類がくれると言ってたチケットは断って、いつもどおりの質素で味気ない誕生日を過ごした。
 優紀たちがお祝いメールをくれたし、一人っきりの誕生日だと言えばたぶん何かしらイベントを組んでくれたのかもしれない。
 だけど、もしかしたら…って思いも捨てきれなかったから。
 「あんたって、今日一日オフなの?」
 「……今日から3日間」
 まったく。
 「どうして、あんたはあらかじめそういうことを教えてくれないのよ」
 「どうせ、言っておいたって、お前、俺に合わせて仕事休んだりしないじゃん」
 …そりゃそうだけさ。
 「あんた、あたしの欲しいものくれるって言ってなかったっけ?」
 あんたは確かにたくさんのプレゼントをくれたけど、それはあたしの本当に欲しいものじゃない。
 ゆっくりと上がった顔があたしの顔を見上げる。
 その両頬を両手でそっと包み込んで、こいつが好きだと言ってくれるあたしの精一杯の可愛い顔を作る。
 …あ、可愛い顔できてるんだ。
 ほんのり染まった道明寺の顔に、意識しなくても自然に嬉しさで顔が笑ってしまった。
 「何が欲しんだよ」
 「…時間」
 「は?」
 「あんたの時間。あんたと一緒に過ごせる時間が欲しい」
 驚いたように見開いた目が甘く緩む。
 「くれる?」
 言葉で答える代わりに、伸び上がって、道明寺の唇があたしの唇へと熱く押し付けられる。
 ひとしきり唇を押し付け合って、クスクス笑って、またキスをして、頬にもチュッとキスを落としてくれた道明寺の手があたしの髪をかきあげ耳元にも小さなキスを落としてあたしを笑わせる。
 …くすぐったいって。
 すごく幸せな気分。
 お邸を訪ねた不安な気持ちが溶け出して、優しい温もりと愛しさだけで。
 「じゃあ、俺にはお前をくれよ」
 「……ぷっ、なによ、まるごとなの?」
 さすが俺様。
 謙虚ってことを知らないわよね。
 抱きしめてくる腕にゆったりと身を任せて、うっとりと広い胸に頭をもたれかけた。
 あたしの場所。
 あんたがそこにいてくれるだけで、それだけであたしは幸せ。
あんたが副社長でもそうでなくても、ただの一人の男にすぎなくても、あたしは全然かまわない。
 他の何も欲しくない。
 あんた以外の他には何も。
大事なのはただあたしがあんたを愛していて、あんたがあたしを愛してくれているということだけ。



~Fin~




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