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「陽だまりの詩シリーズ(短編集)」
恋愛期

花沢物産秘書課~後編~

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 トントン、ガチャッ。
 ノックから間を置かずすぐに開いたドアから、憮然とした表情の類の第一秘書の遠藤さん。
 類の学生時代と大学卒業後しばらくつけられていた第一秘書の『遠藤さん』とは同姓だけど、いかつい体育会系だった遠藤さんとは異なり、やわかな栗色の髪と白皙の美貌が眩しい美少年風の人だ。
 …って、いうか、この会社、専務の花沢類を筆頭にやたらと男性社員のレベルが高いよね。
 橘さんといい、F4に匹敵する美青年なんてここに来るまでそうそう見たことがなかったよ。
 どうかすると童顔だと言われるあたしより年下に見える美貌がキリリとキツく歪んで、執務机に両肘ついて甘くあたしを見つめていた類―――ではなく、あたしをギッと睨みつけた。
 「…いくら専務の高校時代からの友人だからといって、プライベートと仕事を切り離せないようなら、出社しないでいただけませんか?」
 「いえ…あの」
 これもあたしがこの秘書課に配属されて疲れる原因の一つ。
 「遠藤、牧野はプライベートと仕事を混同なんてまったくしてないだろ?そもそも、いつも言ってるじゃない。部屋に入るなら俺の許可を待ってからにしてくれない?」
 あたしを見つめていた柔らかな眼差しが嘘のような、氷の視線。
 うぐ、凍りつきそうだよぉ。
 こんなんで本当に、上手くいってるわけ?
 ヨーロッパ統括の社長付き秘書に栄転になった遠藤さん―――ややこしいなあ―――体育会系遠藤さんに代わり、フランス支社長を勤めていた類に付けられた俊英の秘書さんらしいけど、類が日本本社に転勤になった頃にはもうこんな感じで、たぶん遠藤さんはかなり類の熱烈なシンパだと思うんだけど、類はそういうのを暑苦しがって嫌がるので上手く噛み合っていない感じ。
 ましてや、この人…。
 「………申し訳ございません」
 謝りつつ、ギリギリ睨みつけてくるのは、あたしってどういうこと!?
 遠藤さんを注意したのは類の方なのに、まるで怒られたのはお前のせいだとばかりに睨む美貌にゾクリと背中が震える。
 …女の人の嫉妬も怖いけど、男の人のもまた怖い。
 ハーフだという白い肌が、今日はまた一段と青白く透けている気がして、鬼気迫るっていうの?
 昔からさんざんこの手の扱いを受けてきたけど、男の人からこの手の…っというのはなかった。
 さすがはF4!
 おそるべし、花沢類!?
 ちょっと違うか。
 「とりあえず、今回種々の事情から、一旦は本社所属となられた専務ですが、就任されることになる観光部門の子会社化に伴って…」
 「えっ!?外部に切り離されるんですか?!」
 それって初耳だよっ。
 「うん、まあ、実は昨日決まったばかりのオフレコ。まだ、内緒ね、牧野」
 「……はい」
 花沢みたいな大企業のオフレコ事情を耳に入れられる立場っていうのに、身が引き締まるというよりもちょっと空恐ろしい。
 あたし場違いじゃない?
 エリートばかりの花沢で、ある意味コネで途中入社してきたあたしへの風当たりが厳しいのもゆえないことじゃない。
 …やっぱり、いくら花沢類に頼まれたからって、無謀だったかな。
 類らしくなく懇願するみたいに、
 『…今度、新しい部門を任されることになってるんだ。ここ何年も採算をとれてなかった観光部門の立て直しで、俺のこれからの手腕が試されることになる。世界中に散らばる花沢のホテルや旅行会社に関わることになるんだよ。旅行といえば食はもっとも大事な要素だよね?フードコーディート部門に携わってきた牧野にもぜひ協力して欲しいんだ』
 なんて。
 今思うと、あれもどこまで本気だったのかわからない。
 一応は、転職そうそう、花沢のフード部門をいくつか転々として、つい先ごろまでは橘さんの所属する部署に配属されていたけど。
 「牧野さん!」
 「は、は、はいっ!?」
 パソコンに向き合ってはいたものの、ついぼんやりこの会社に転職するハメになった馴れ初め?なんかを思い起こしていたら、いつの間にか物思いにふけってしまっていたらしい。
 キリキリと睨みつける遠藤さんの顔が般若のようだ。
 こわっ。
 でも、あれ?
 「すみません」
 「謝罪はけっこうです。それより、先程の話。観光部門の子会社化に伴い私や牧野さんもそちらへ出向というカタチになるわけですが…」
 ああ、子会社の社員になるんじゃないんだ。
 殊勝に頷きつつ、さっきからなんとなく気になってしょうがない遠藤さんの顔を凝視する。
 元々色白の人だからとは思っていたけど…。
 「と、いうことで社屋は当面、この花沢物産本社の専務室のままで、各所への指示を出すことになりますが、どちらにせよ牧野さんを含めて配置替えになる数名を除き、本社からの人間は現行のままです」
 「…はい」
 「専務と私は…いえ、社長は主に海外を回ることが多いでしょうから、牧野さんにはこちらに居残ってもらって社長と社員たちとのパイプ役になっていただきます」
 社長って、類のことだよね?
 「ええ?ダメだよ。牧野は俺と行動をともにさせる」
 「第一秘書の私が社長についてサポートさせていただくのです。第二秘書の牧野さんがつく必要性はほとんどありません」
 「じゃあ、お前がここに残ればいいんじゃない?」
 皮肉に笑んでるけど類の目は笑ってない。
 え、遠藤さんってもしかしてマゾ?
 普通、ここまで冷たくされて、それでも類がいいって…いやいや、そうじゃなくって。
 「…あ、あのぅ」
 「第二秘書どころか!秘書の経験さえほとんどない牧野さんに、専務のサポートなどできるはずがありません!!秘書検定を持っているからといって、知識と実践は別物ですっ!!」
 「だから、お前が教育すればいいだろ?明日からのハワイ視察なら、短期の滞在だ。いい経験だから、牧野も同行させる」
 「専務っ!うっ」
 「え、遠藤さんっ!?」
 遠藤さんとあたしの叫びが被った。
 悲鳴のように語尾を掠れさせた遠藤さんが、いきなり前のめりに倒れたんだ。
 さすがに、類も驚いて、床にうずくまる遠藤さんに歩み寄る。
 あたしも慌てて席から立ち上がって、脂汗を流している遠藤さんに駆け寄った。
 見下ろすワイシャツの襟首から覗く首筋に、わずかに見える赤い……発疹っ!?
 「……遠藤、お前もしかして、食物アレルギーかなんかある?」
 「せ、専務」
 はあはあ息をつく遠藤さんの息遣いが荒い。
 顔を顰めた類が携帯電話を胸ポケットから取り出す。
 「チ、チラミンアレルギーはありますが…」
 チラミンアレルギーってなに??
 こんな時だというのに、あたしの???の視線を理解した類がゆっくり頷き、電話をかけつつ教えてくれる。
 「…カカオに含まれている血管浮腫物質の一つだね。別名チョコレートアレルギーともいうかな。今日、出された料理にもデザートはあったんだけどね。中華だったし、そもそも、料理自体にも隠し味として使われることもあるから、そっちに入ってたのかもね」
 …そ、そんなアレルギーがあるんだ?!
 「あ、ちょっと待って……はい、救急です」
 どうやら消防署が応答したらしく、類が救急車の手配をしている。
 その間、あたしも遠藤さんが楽な姿勢で寝転がれるように介助したり、額の脂汗を拭ったり。
 「牧野、秘書課の課長に救急隊員がここにスムーズに入ってこれるように誘導するよう、指示だしてきて?」
 「はいっ!」







 ウイィィィィィィン~。
 飛び立つ飛行機を見上げ、ため息一つ。

 空港の大きな窓から覗く空は真っ青で、本当に旅行日和。
 いや、…ホント、これが仕事でなくって、プライベートだったらねぇ。
 「…手荷物あずけてきた?」
 「はい。二泊三日の予定ですから、あんまりないですし」
 基本パソコンや書類は座席に持ち込むし、遊びに行くわけではないから荷物はかなり絞っている。
 待っていた類と合流してVIP待合室へ。
 …先に行ってて、って言っておいたのに。
 「また難しい顔してる。あっちで遠藤の代打もつけてくれるんだから、牧野はそんなにシャチホコばらなくても大丈夫だよ」
 「……大丈夫だよって、いきなり秘書として右も左もわからないあたしだけ同行ってありえないでしょ、普通」
 結局遠藤さんは、類の予測通り食物アレルギー発症で入院!
 秘書課はてんやわんやで、類がフランスから連れてきた秘書である遠藤さんの他にも当然、優秀な人材はいるのだから、代理を秘書課から立てる話もあったのに…、
 『いろいろ所属のことで形式的なこともあるから、牧野だけでいいよ』
の類の一声であたしの同行が決まった。
 …そりゃ、子会社化するんだから、親会社の人間とはいえおいそれと別会社の社員を代理にするわけにはいかないだろうけどさ。
 「じゃあ、二泊三日の小旅行。楽しんでこよう」
 にっこり笑顔で差し伸べられた手に、うっかり素直に手を差し出して、握られてしまった手に「うぎゃっ!」と悲鳴をあげた!
 「手、手なんか握るなあああっ!」
 「え?なんで?」
 「なんでじゃないでしょっ!?」
 「新婚さんはやっぱり手つなぎが基本じゃないの?」
 キョトンと見返される。
 う、今日も綺麗…じゃなくって。
 あんた、根本が間違ってるでしょ?
 「いや、新婚さんどころか、付き合ってさもえいないからっ」
 「ええ~、いいじゃん、細かいこと気にしなくっても」
 「全然、細かくないでしょっ、それ?!」
 てか、そもそも仕事だっつーーのおおおおおおおお!




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類最高過ぎます!

大笑いさせていただきました♪

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