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「中・短編」
Short story(1話完結)

Together

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 「だから、いつになったら準備ができたって確信できるんだよ?」
 不機嫌な道明寺の顔に、ため息が零れる。
 この問題はいくどとなく、あたしと道明寺の間で言い争われてきた問題で、遠く遡ってみれば、高校生の時からその兆しはすでにあったんだと思う。
 「……だから、まだあたしも社会人一年目で、勉強することがいっぱいだし」
 「社会人一年目って、それだって、俺は元々反対だったんだ。なんで働く必要があんだよ?お前言ったよな?4年たって俺がいい男になったら、お前が俺を幸せにしてくれるって」
 「………」
 二言目にはそれ。
 「なんだよ?都合が悪くなったら今度はだんまりかよ」
 「だんまりなんてしてないでしょっ!とにかく、今すぐ婚約とか結婚とか無理っ。あんたのお母さんだって、結婚するつもりならそれ相応の準備を整えてからだって言われちゃってるし」
 そう。
 実は就職したことだけがあたしの忙しい理由じゃない。
 さすがに大学生時代のように、花嫁修行も並列でやらされてるってことはないけど、週末は毎週道明寺邸でお茶だお花だ、礼儀作法だ。
 一応は大学時代にも詰め込まれた外国語やその他さまざまな英才教育にも時間をとらされていて、それが多忙な道明寺とのすれ違いにも一躍買っている。
 …あたしだって、勉強三昧が楽しいわけじゃない。それなのに。
 「お前が一緒になるのは俺なのかよ、それともババアなのか?」
 「…それは」
 「もういい、勝手にしろ。忙しいのに、時間とらせて悪かったな」
 バンッとテーブルを叩きつけて、道明寺が席を立つ。
 一斉に周囲に座っていた人たちの視線が突き刺さったけど、さすがのあたしもそちらを気にする余裕なんてなかった。
 「道明寺っ!」
 「…俺も仕事に戻る」
 「え?」
 そんな…今日は久しぶりのデートだったのに?
 チロッとあたしを横目で見た道明寺も、あたしが何かをいうのを待っていた気がしたけど、『仕事』の二文字を出されるとそれ以上、あたしには道明寺を引き止められる言葉なんかあるはずがなかった。
 肩を怒らせてカフェを出てゆく道明寺の広い背中を見送った視界がぼんやりと滲む。
 やだ、あたしったら。
 彼氏と喧嘩したくらいで涙ぐむなんて、恥ずかしすぎる。
 さささっと右手で目尻を拭って、周囲の視線を誤魔化すように手元のアイスティをずずっと啜った。
 どうして、こんなことになっちゃったんだろう。
 ここのところのあたしと道明寺は、会えばいつもこんな感じで、終いには喧嘩別れ…それが毎度のパターンになってしまっていた。
 …年末に二人で旅行にいく計画を話そうって言ってたのに。





 結婚…。
 好きな男に結婚しようって言われて嬉しくない女がいるはずがない。
 あたしだって、嬉しかった。
 約束の4年で日本に帰ってきてくれた道明寺。
 すぐにプロポーズしてくれて、その時はあたしも大学生だったから、せめて大学を卒業するまで待って…ってお願いして、その時は道明寺も渋々ながら納得してくれた。
 でも、道明寺が帰国して、求められるままに彼のパートナーとしてパーティや、それなりの場に同伴するようになって、道明寺の『立場』というものを思い知らされることになった。
 それまでだって、わかっていたつもりだった。
 だけど、やっぱりわかってなかったんだよね。
 本当なら一介の女子大生なんかが付き合えるはずもない生まれと立場の男。
 道明寺はあたしはそのままでいい。
 あたしがあたしでさえあれば、それでかまわない。
 そう言ってくれたけど、周囲はそういうものじゃなかった。
 実際、道明寺の両親(道明寺が帰国してハッキリとあたしとこの先も交際、それどころか結婚するつもりであることを宣言して、お父さんにも引き合わされた)からも頼まれたことがある。
 一つには、道明寺家の家格に相応しい立ち振る舞いや教養を身に付けるべく、教育を受けること。
 もう一つには、結婚を急がないこと。
 もしかしたら、いずれ道明寺やあたしの熱が覚めて、自分たちの立場というものを自覚して、まっとうな?判断をしてくれるのを願っていたのかもしれない。
 道明寺の両親がそういうのはもっともなことだし、あたしとしてもまだ世界の違う家に嫁いで、そこでやっていく覚悟ができていなかったのかもしれない。
 本当はよその企業に勤めたかったけれど、望まれるままに道明寺関連企業に勤めて、さまざまな部署を経験させられることになっていた。
 ただでさえ社会人1年目、不慣れなことばかりで、それなのに慣れた頃に違う部署に配置されて、一からやり直すことになっている。
 とてもじゃないけど、余裕なんてない。
 どうしても、あたし以上に激務の道明寺とすれ違うことになって、数週間、下手をすると一ヶ月とかいうスパンで会えないでいる時に、あたしの都合で道明寺の誘いを断ることに次第に道明寺の不満が募ることになっていた。
 今日の喧嘩も結局のところはそれ。
 一度は道明寺だって、すぐには結婚できないことに同意したはずなのに、二言目には『お前が結婚するのは、道明寺じゃなくって、俺とだろ?』、そうやってなじったあげくに、キレたあいつと喧嘩別れするハメに陥っている。
 …もうやだ。
 そう言えたら、どれだけ楽だろう。
 そんな風に思う時さえもあって、あたしはもういっぱいいっぱいで。
 本当に今日は楽しみにしていたのに。
 久しぶりに二人一緒になったオフ。
 せめて年末年始くらいは一緒にいようと、計画している旅行をあれやこれやと道明寺と話せるって本当に本当に楽しみにしてたのに。
 「…ぐすっ」
 ぐずついている鼻を啜って、ツーンと痛くなってきてしまった鼻の頭をそっと抑える。
 「……ガキじゃねぇんだから、鼻なんて啜るなよな」
 「え?」
 ちょうど店を出てドアを開けた途端、かけられた声にハッと顔をあげると呆れたような男の顔。
 「ど、どうして」
 「頭冷やしてた」
 カフェの外壁に寄りかかっていた体を起こして、道明寺が小さく息を吐く。
 ポンと頭に置かれた手があまりに優しくて、また涙が滲んできそうで急いで瞬きして涙がでそうなのを紛らわす。
 「わかってっよ」
 「………」
 「ごめん。お前が俺のためにオヤジやババアの要求を受け入れて、頑張ってんだって、頭じゃわかったんだよ」
 「道明寺」
 差し出された手に手を伸ばして、ぎゅっと握りこむ。
 そのままグッと反対側の腕で抱き寄せられて、胸に顔を押し付けられた。
 大きな胸の温もり。
 ずっとこうされたかった。
 「お前に会いたいのに思うように会えなくって、ダダこねちまった。俺もまだガキだな」
 その言葉に、堪えたはずの涙がまた溢れてきて、肌触りのいい道明寺のシャツに顔を伏せる。
 「…あたしもあんたにずっと会いたかった」
 「うん」
 「あたしだって、あんたと…その結婚したいって思ってるんだよ?」
 「ああ」
 髪や背を撫でてくれていた道明寺の手がピクリと一瞬止まった 
 「でも、今はまだ無理」
 「………」
 あたしを抱きしめている腕に力がこもる。
 「わかるでしょ?祝福…されては無理かもしれないけど、せっかく反対されなくなったんだもん。せめて、認められて結婚したいの」
 もしかしたら、また道明寺家の方が俺より大事なのかよ、って言われてしまうかもしれない。
 でも、道明寺家がどうのっていうより、大切な道明寺を生んでくれたご両親には、顔を顰められて仲違いさせてしまうようなマネはしたくない。
 チョンと頭のてっぺんにキスされて、肩を抱かれて歩こうと、促される。
 「…道明寺」
 顔を見上げると、困ったような…でももう怒ってない顔。
 「俺には正直、周囲に認められるなんてどうでもいいし、お前を俺が守ってやるから気にすんなって言いたいけど」
 「……」
 「お前の気持ちはわかった」
 その言葉に、いつの間にか力が入ってしまっていた肩の力が緩む。
 「とりあえず行こうぜ」
 「えっと、どこへ?」
 「バカ」
 コツンと小さく額を小突かれ、呆れたように笑われる。
 優しい顔に見惚れてしまう。
 「デートだろ。デート。そのために、今日待ち合わせたのに、危うく台無しにするところだった」
 「…すぐ怒っちゃうあんたが悪いんでしょ」
 「お前がいつも怒らせるんだろ?」
 「あんた!」
 「お前っ!」
 またも言い争いそうになって、でも今度は顔を見合わせプッと笑い合う。
 素直に肩を抱かれたまま、頭を道明寺にもたれかけさせる。
 …いまはいいや。
 二人に横たわっている問題の解決にはなんにもなっていないかもしれないけど。
 いまはまだ、道明寺があたしの気持ち…道明寺をあたしがすごい好きで、彼と結婚したいと本当はすごく思ってる、それだけをわかっていてくれれば。



~Fin~




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NoTitle

原作のその後、あるあるみたいな2人に萌えました!
こういう司が大好きなんです(*゚▽゚*)
こ茶子さんの花男二次読めない日は物足りないです(>ω<)
ファンとして更新をいつも楽しみにしてます。

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